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寿間穂波が突き進む日常  作者: 水色十色
十姉妹失踪事件
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捜査に使う主な道具

 しばらくの間、穂波はヤマネ刑事の顔面フェイス見惚みとれていた。

 一方、そのメガネ男子は、女性からの視線で動じることもなく、聡明そうな表情を保ったまま、静かな口調で話し掛けてくる。


「さて、スマホ刑事」

「はい」

「今後の仕事では、円滑な情報の共有が必要となります」

「そうですね」

「あなたは、捜査で主にどのような情報機器を利用しているのでしょうか」

「自分は、特にどれでも、使う必要があれば、なんでも使っています」

「スマホなどは、どうでしょうか」

「へっ、あ、失礼しました! スマホですか?」

「スマホです。使えますか」

「はい、もちろん使えます。最新機種を持っておりますし」


 ここへの異動を機に、思い切って機種変更したばかりだった。


「それでしたらスマホを、あなたの捜査に使うインヴェスティゲイション主な道具(‐メインアイテム)とするのは、いかがでしょうか」

「は、はい。できればそうしたいと、自分も思います」

「一点、よろしいでしょうか」

「どうぞ」

「ここは、今あなたの言ったような、《できれば》という消極的な態度で応じるのではなく、《必ずや》と、強い意思を示すのがよいですよ。どうですか」


 ヤマネ刑事の視線が、穂波の目を射抜いた。

 それで突如、思い出す。

 警察官たる者、消極的であってはいけない。常に心を強く持ち続け、それを態度にも表わしていなければならない。毅然たる態度ということ。

 そうでなければ、迫りくる悪意に隙を見せてしまい、思わず足元をすくわれる失態へとつながることになる。

 尤も、冷静沈着であることは重要だけれど、でもそのことと、消極的であることは明らかに異なる。

 警察官になり、交番勤務に赴いた初日、そう教えてくれたのは、最初の上司、倍くらいの年齢のベテラン巡査部長だった。

 穂波は、今度はなにも迷わず、力強く答える。


「了解しました。スマホを()()()、自分の捜査に使うインヴェスティゲイション主な道具(‐メインアイテム)にしてみせます!」


 ほとんど誘導尋問的に促された上での言葉ではあったけれど、とても強い意思表示を示すことができた。

 兎も角、まずはメールアドレスの交換をした。これで名実ともに、厄介事捜査室のスマホ刑事になれたのだと、穂波は感じるのだった。

 突如、なぜかヤマネ刑事が笑い出す。


「ほほほ、よろしい(ブラーヴォウ)! 実によい表情ですよ、スマホ刑事。あなたは、マゴリ警部捕がお認めになった通り、この先、厄介事捜査室を背負って立つ、若き優秀馬サーロウブレド、明日を駆け抜ける先行馬フラントラナ! ほほほ、ほほほほ! ほーっ、ほっほっほっ!!」

「あのヤマネ主任、皆さんが驚いた顔で、こっちを見ておられます」

「おおぉ、なんとこれは、失礼を致しました。あろうことか、この私が」


 よく分からないけれど、一つだけ明らかになった。このヤマネ刑事という人が、とてもユニークな一面を合わせ持っているということ。

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