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寿間穂波が突き進む日常  作者: 水色十色
十姉妹失踪事件
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涙のレクチャ(一)

 今から五年前、全国、四十七都道府県で唯一無二となる「厄介事捜査室」の設置を決めたのが、神奈川県警察本部、刑事部捜査第一課である。

 特殊事件を扱う捜査係は、時代をさかのぼれば半世紀くらい昔から、日本中、どこの警察本部にも設置されるようになっていた。テクノロジーの急進歩、高度経済成長、新時代的発想、地球規模の流動、そういった大波に押し流され、以前には考えられもしなかった特殊犯罪が、この日本国内でも多発するようになったのだから、特殊事件を専門とする対策室が設置されるのは必然だった。

 しかしながら、二十一世紀も四半分が過ぎようとしている今なお、時代の激流は沈静化することなく、新たなタイプの、凄惨な事故、謎めく犯罪、怪奇現象、疑心暗鬼、云々が、この世の中には満ち溢れている。

 世界の大都会において、特に、その傾向が顕著に表われている。

 このように混沌とした状勢の中、日本においても、今までの捜査体制では迅速かつ確実な解決は難しいような事件が、日夜絶えることなく発生している。

 そこで警視庁にすら先駆け、天下の神奈川県警本部が、いち早く厄介事捜査室を設置した次第である。

 この捜査室には、いわゆる「全世界大戦アーマゲドン」を阻止する用意はないけれど、身近な日常にフツフツと沸いて起こる気泡のような、「悪人や善人の悪い企み」を枯らす使命がある。たった一羽の小鳥が行方不明になったという些細な「厄介事」でも、それが引き金となり、大きな凶悪事件へと発展するケースがないとは、決して言い切れないから。


 これは、穂波がヤマネ刑事から説明して貰った、厄介事捜査室の設置される経緯の概要である。

 尤も、この捜査室に配属されると知った穂波は、ここが、どういう場所で、どのような役割を担っているのかを、自ら調べる予習を欠かさなかった。

 だから頭では、すべてを分かったつもりでいたけれど、実地の上司による熱心な講義レクチャは、まるで「神託」のような厳粛さが感じられ、耳に入る言葉の一つ一つが、胸の奥にまで届き、心地よく沁み込む。

 なにしろ、ヤマネ刑事の甘い顔面フェイスで視覚が刺激され、聴覚も同様に甘い音声ヴォイスで痺れさせられるので、それは無理もない。


「スマホ刑事、ここまでは理解できましたか」

「はい」

「よろしい」


 ヤマネ刑事は、満足そうな表情でうなずき、話を続ける。

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