ラーメン唐菜軒の聞き込み
中華料理ぷーさんを出たところ、この瞬間を見計らったかのように、穂波のスマホが振動を始める。オタフク係長からの着信だった。
「こちら、寿間穂波巡査であります!」
「スマホ刑事、もう一件ドンブリ掏り替わりの通報があったよ」
「えっ、またですか!?」
新たな事件について、オタフク係長が手短に説明してくれた。現場は川崎市宮前区の「ラーメン唐菜軒」で、午後二時頃に発生したという。
通話を終えた穂波は、スマホで店の場所を調べた上でヤマネ刑事に問い掛ける。
「早速、現場へ向かいますか?」
「それがよいでしょう」
「捜査の基本、足を使うのですね?」
「今は時間を無駄にしたくありませんから、電車を使います」
「はっ、了解です!」
地下鉄で横浜市青葉区まで戻り、私鉄に乗り換えて二駅で最寄り駅に着く。
ラーメン唐菜軒は、徒歩二分のところにあった。午後二時までの営業を終えており、夕方の五時まで準備中になっている。お客がいないのは、捜査を進める上で都合がよい。
一人だけ女性が残っていたので、話を聞くことにした。
彼女は、アルバイトをしている三宮姫子、二十二歳。ここでは、店長を含めて総勢十二人いる従業員のうち、二人か三人ずつくらいがシフトに入るという。
穂波が、手帳にメモを取りながら本題に入る。
「犯人を見ましたか?」
「見ました」
「どんな人でしたか?」
「たぶん外国人です」
「それは、どこの国の人です?」
「たぶん西ヨーロッパのどこかだと思います」
「え、どうしてですか?」
「肌の色が白く、背が高くて鼻も高かったからです」
「そんな特徴の人なら、北アメリカにもいると思いますよ?」
「北アメリカは知りません。行ったことのない地域だから」
「はあ、そうですか……」
話がまったく噛み合わないので、取りあえず事情聴取を終えて、防犯カメラの映像を見せて貰う。
機器に装着されている「microSD」という種類のメモリーカードを調べたところ、古いデータしか残っていなかった。防犯カメラの本体が、どうやら一週間前に故障してしまったらしい。
ヤマネ刑事が姫子さんに問う。
「このメモリーカードを預からせて貰えるでしょうか」
「差し上げます。どうせ壊れているのだから」
「いいえ、頂く訳にはいきません。それに、これ自体は壊れていませんよ。機器の方が故障しているのです」
「機器が故障で危機に瀕しましたね。うふふふ」
姫子さんが、なにかしらの冗句を言ったらしい。ヤマネ刑事は反応を示さず、穂波は苦笑いを浮かべざるを得なかった。
ここでも有力な情報が一つとして得られず、二人は落胆するけれど、すぐに気を取り直して別の店へ向かう。




