ビックリ真っ白の聞き込み
古等家を出てから、歩いて十分ばかりのところ、「ビックリ真っ白クリーニング横浜青葉三号店」にやってきた。
ガラス製の扉が自動で開き、中へ進むと、穂波と同じ年齢くらいの女性が満面の笑みで、「いらっしゃいませ!」と迎えてくれる。
ヤマネ刑事が警察手帳を掲げて話す。
「神奈川県警察です。少しばかり、お時間よろしいでしょうか」
「はあ、どんなことです?」
女性の表情が、急に硬くなってしまった。
横から穂波が問う。
「ご氏名を、お教え願えますか」
「え、私の??」
「そうです」
「私、悪いことしてませんけど?」
「ご心配には及びませんよ。なにも、あなたや、このお店を疑っている訳ではないのですから」
「それならいいけど」
女性が財布から名刺を出して、穂波に渡す。
「砂塔美津さん。店長をなさっているのですね」
「そうよ」
穂波は、怪人コラーゲンの封筒を見せる。
「これに見覚えは、ありませんか」
「なにそれ? そんなの見たことないわ」
突如、ヤマネ刑事が、天井の防犯カメラを指差す。
「あれの映像を、調べさせて頂きます。四月五日の記録は残っていますね」
「はあ、残ってはいますけど……」
「お借りしてもよろしいでしょうか」
「ちょっとお待ち下さい」
美津さんが奥の部屋に行って、十秒ばかりで戻ってきた。
「これです」
「拝借します」
黒い四角の小片が、ヤマネ刑事の手に渡る。いわゆる「microSD」という種類のメモリーカードである。
「調べが終わり次第、お返し致します」
「分かりました。でも念のために、連絡先を教えてくれますか?」
「もちろんです」
ヤマネ刑事に代わって、穂波が名刺を差し出す。それから二人で駐車スペースの隅に移動し、スマホを使って映像を確認する。
祐次さんの背広および数点の衣類を受け取りにきた蕗子さんの姿は、すぐ見つけることができた。美津さんが応対している。撮影された時刻が午後五時二十分で、クリーニング済みの品々が店内に運び込まれたのは午後四時五分だったから、その間に限定して調べる。
「特に怪しいところとか、見つかりませんね?」
「怪しいところがないというのも、なかなかに怪しいですよ」
「そうですね。でも、これからどうしますか?」
「まずは、メモリーカードを返しましょう」
「了解です!」
二人が、クリーニング店の入り口に向かう。