表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
寿間穂波が突き進む日常  作者: 水色十色
毒蛇拡散予告事件
16/34

怪人コラーゲンの封筒(一)

 シベリア刑事部長が指示を出す。


「兎も角、そこに座って、しっかり読んで頂戴」

「承知しました」

「了解です!」


 部屋の真ん中に、四角の低いテーブルを挟み、ソファーが向き合っている。その片側に、ヤマネ刑事と穂波が横並びとなって腰を下ろす。

 シベリア刑事部長から託された白い封筒は、縦に細長いタイプで、切手が貼られていない。郵便番号と住所もなく、中央辺りに赤色で、「親愛なる師部理亜へ」と横方向に書いてある。これは、ボールペンを使って書いたらしいけれど、形が歪んでいて、字を書くことが苦手な穂波ですら、下手だと思えた。

 ヤマネ刑事は、三秒くらい黙って凝視した後、封筒を裏返す。下の方に、同じく横書きだけれど、青色で「怪人コラーゲンより」という差出人が記してある。筆跡が、明らかに表側と同一だと分かった。

 封筒の中身は、重ねて折られた二枚の紙だった。一枚目に、黒色で「二枚目を解読しないと、神奈川県はヤバいよ」と書かれている。その字は、ボールペン習字のお手本に使えるくらいに達筆である。

 そして肝心の二枚目は、クネクネとした蛇の形のような黒い模様が並んでいるだけで、読み方も意味も、サッパリ想像すらできない文面だった。

 穂波が、ふと思ったことを口にする。


「これは、象形文字という種類でしょうか?」

「私には判断できません。少なくとも、私が見たことのない文字です」


 ヤマネ刑事が、困惑した表情で答えた。

 ここへ、まるで天から降り注ぐかのように、清らかな声が届く。


「古代蛇竜語(へびりゅうご)よ」


 穂波がシベリア刑事部長の顔に視線を向け、率直に尋ねる。


「もしかして、これの解読を、おできになったのでしょうか?」

「ええ、そうよ」

「凄いです! さすがは、踊れる麗しき最高知能!」


 ソファーの隣りで、ヤマネ刑事が意図的に「ごほん」と咳払いをする。

 すると、穂波が「あっ」と一言を発すると同時に立ち上がり、シベリア刑事部長に向かって、頭を深々と下げる。


「たいへん失礼な発言でした! 申し訳ございません!」

「うふふふ。謝らなくていいわ。あたし、その異名って結構お気に入りなの。だから気にしないで、お座りなさい」

「はい!」


 穂波は、一礼してからソファーに腰を下ろす。胸の内で、「この刑事部長は、優しく心の広いお方でよかった」とつぶやき、そして「偉いお方の前では、発言に気をつけなければ」と肝に銘じるのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ