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寿間穂波が突き進む日常  作者: 水色十色
毒蛇拡散予告事件
14/34

刑事部長室へ赴く流儀

 シベリア刑事部長から呼び出されたことは気になるけれど、いつまでも雑談を続けている訳にもいかない。山積している厄介事捜査二係の仕事を、一つでも多く片づける責務があるのだから。

 穂波とヤマネ刑事は、それぞれの抱える案件に取り掛かった。九十分ばかりが、まさしく「光陰矢のごとし」の通りに過ぎ去る。

 ここへ男性が一人、近寄ってきた。穂波が気づいて声を発する。


「マスタード課長!」

「やあ、おはよう」


 立ち止まった笑顔の男性は、刑事部捜査第一課の課長、増田ますだつとむ警視。部下から慕われる敏腕ノンキャリアで、五十歳だけれど、彼の容姿と言動には、十歳くらい若いように感じさせる、なにか不思議な快活さがある。


「おはようございます」


 ヤマネ刑事は、チェアに座ったまま冷静に応じた。

 一方、穂波が大あわてで立ち上がる。


「お、おはようございます! 挨拶が遅れまして、たいへん失礼しました!」

「気にしないで、座っていいよ。ふふふふ」

「おそれ入ります……」


 穂波は頭を下げて、チェアに腰を下ろす。

 ヤマネ刑事が問い掛ける。


「マスタード課長、例の一件でしょうか?」

「そうだよ」

()()()()って、もしかして?」


 穂波が気になって、ヤマネ刑事に尋ねた。

 これには、マスタード課長が答える。


「シベリア刑事部長から呼び出されたことは、知っているね」

「はい、もちろんです!」

「それに関する話だよ。二人とも、刑事部長室へ赴くのは初めてだろうから、少なからず、そのための流儀を教えにきたという訳さ」

「ええっ、()()!?」


 思わず穂波が声を上げた。

 隣りのデスクで、ヤマネ刑事が意図的に「ごほん」と咳払いをする。


「あ、大声を出して済みません」

「ふふふ。流儀というのは、少し大袈裟だったかもしれないね。正確には、注意点といったところだよ」

「はあ、そうですか……」


 戸惑いを隠せない穂波と、冷静な様子のヤマネ刑事に、マスタード課長が「刑事部長室へ赴く流儀」を説明した。

 それは決して難しいことでもなく、指定されている時刻の厳守。ただし、五秒の誤差すら許されず、本当の意味で丁度の時刻に赴く必要がある。つまり、メールに書いてあった通り、午前九時二十一分を迎えると同時に、刑事部長室の扉をノックしなければならない。

 話を終えたマスタード課長は、笑顔を保ったまま静かに立ち去る。

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