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そうして下界を見下ろして数日、風が安定した。大地が冬の厳しさから解放されて穏やかになっている。
「ちゃんとやり遂げたな」
ナツヤがうなずいた。
「まあ、いつものことだからね。いくらお調子者だからって、与えられた役目はちゃんと果たすでしょうよ」
しゃがんで膝についた腕にあごを載せて、アキハが笑う。
「まあ、その辺の風を口説いてくるかも知れないけれど、そのうち戻るでしょ。ご飯でも食べて待ってようか」
アキハに言われて私たちは続いた。街に入る前、一度振り返って大地を見下ろした。本当にあたたかで色味まで違う。……うらやましい。
けれど、ハルサはそれから数日、帰ってこなかった。仲間のふたりはハルサのことだから、と特に心配する様子はなかった。
しばらくして戻ったハルサは右腕を欠損して、欠けた腕を左手に持っていた。
「ただいま」
いつも通りの軽薄な感じでハルサが笑った。