(4)
泣き止んだらお腹が空いてしまった。黒い服の腰ポケットから保存食を取り出す。固形のバーはあんまり美味しくない。楽園の管理施設には似合わないけれど、仕事のために先に用意されたものだからしょうがない。きっとナツヤとアキハは食事のこともあって街の中へ入って行ったんだろう。ひとりでうろつくのは慣れているけれど……。
そんな風に迷っているうちにナツヤとアキハが帰ってきた。ふたりでみっつ、お肉と葉っぱの挟まれたパンを持って。
「ナツヤがさ、三人で食べよう、って」
アキハがパンを差し出しながら腰を屈めて笑う。
「ハルサが仕事中なんだ。なにかあったときサポートできるよう、見ていたほうがいいだろう」
ナツヤは優しいよね、筋肉詰まってるような頭なのにさ、とアキハは私の耳に手を添えて小声を出した。
「ん……ありがとう……」
なんと答えたものか分からず、私はそれだけ言ってパンを受け取る。あたたかかった。都の工房はいまも稼働を続けているらしい。
「パン、あったかいね」
「いや、工房の子たちは大変だよね。僕らみたいな大仕事じゃない代わり、毎日暮れるまで働いてる」
「俺たちが恵まれてるのさ。普段は好きにしながら食べて飲んでいられるんだからな」
ナツヤの言う通りだった。書記官は人間がしでかしたことをずっと記録し続けているし、整備官は人間のために日夜気候変動をチェックしなくてはならない。工房も天の都だけだとはいえ、食品から調度品まで仕立て続けている。