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トラック転生保険〜異世界転生召喚での魂流出防止と小さな善行〜

作者: 如月霞
掲載日:2020/12/15

 そいつは突然現れた。


 昼下がりの牛丼屋。牛丼並盛り半熟卵乗せに豚汁。トラック運転手である俺の昼休みは、前か後ろにズレる。というか、ズラす。出勤のピークをずらそうと言う運動はちらほらあるのに、企業の昼休みは12時から13時に集中する。わざわざ一番混む時間に入るよりは、ズラして悠々と飯を食う。そして車内で飲み物を飲む。タイマーを掛けて30分程昼寝をすれば、午後の運転にも優しい優雅な昼休みだ。


「初めまして、スズゥキ様。わたくし、TTHG、トラック(T)転生(T)保険(H)互助会(G)の営業ラグエールルと申します。昨今のトラック運転手様におかれては、多くの苦労があると感じております。以前より過酷な状況、オーバーワーク、短納期、本来は業務外の積み込み作業、手数料の低下、運転手不足等々と、色々なご苦労、わかりますわかります。そんな運転手様方に、トラック転生という新たなる問題が起こっております。それを防ぐのが、我々TTHGでございます」


 俺が座っていた筈の牛丼屋の椅子はふかふかクッションの豪華な一人用ソファに、目の前の牛丼豚汁セットは高そうなカップと皿のセットに入ったコーヒーに、ざわつく牛丼屋は白い空間に変わっている。


「スズゥキ様は、お仕事仲間からTTHGの名前を聞いた事がございますか?」

「いや」


 目の前のそいつは、何だか無駄に光る白っぽい髪に緑の目。スラリとした体に紺色のスーツを着ている。女子高生とかがイケメンとか言って、キャーキャーしそうなお兄ちゃんだ。28歳のトラック運転手の俺とは別の生き物だな。

 異常事態に巻き込まれているのはわかるんだが、俺の気持ちは必要以上に落ち着いている。一周回って異常さを感じてないのか、こいつの出す雰囲気なのか。


「左様ですか、まだまだ我々TTHGの営業努力は足りていない様ですね」

「どうでもいいんだけどよ、ここどこだよ?」


 お兄ちゃんはびっくりした様な顔になった。何だよ、気になって当然だろ。


「俺の牛丼セットは?」

「はあ。そうですか、そうですか。スズゥキ様はお食事の最中でしたか。これはこれは失礼致しました。では手短に説明させて戴きます」

「要らねえ」

「そう仰らずに。とても重要な事でございます。決してスズゥキ様の損にはなりません」

「今、俺の昼休み時間が減ってんだけど?」

「いえいえ、ちゃんと元の時間にお戻しします」


 もしかして俺、既に牛丼食ってて、やたらと鮮明な夢をトラックの中で見てるのかも知れねえ。まあ、なる様になるか。


「スズゥキ様はトラック転生という単語をご存知ですか?」

「何だそれ?」

「そうですよね、運転手様方は皆様、トラック転生をご存知無い方が多いのです。転生はお分かりですか?」

「テンセー?」

「生まれ変わる事です。死んだ人間が新たな生命として生まれ変わる。通常であれば、同じ世界に人間として生まれ変わりますが、余りにも生前の行いが悪いと虫等に生まれ変わる事もございます。所が、昨今の転生で異世界の神からの横槍が頻繁に入っており、異世界に転生してしまい、生まれた時から前世の記憶を持っている、若しくは成長してからショックを受けた時に前世の記憶を思い出して、世界を救うキーパーソンになったり、悪人を懲らしめて異世界の不公平を正したり等といった事がなされます。因みにもっと積極的な誘拐行為、異世界召喚もございます」


 お兄ちゃんはそのお綺麗な顔の眉を顰めて「困りますよねえ?」と呟いて、コクコクと頷いている。困るか?


「別に良いんじゃね?たかが一般人が他所の世界に行ったってよ。それに人助けになるんだろ?本人が良けりゃあ良いじゃねえか」

「いえいえ、とんでもない事ございます。スズゥキ様が御運びになるべきお荷物が、数個とはいえ欠けては困りますよね。この銀河系を守る神は、文明を作り上げ発展させ自分達の力で成し遂げる姿を尊び、生物に生き様を任せて放任しておりますが、死後の世界や転生を管理しておりますし、銀河の生物を愛しております。魂を異世界に気軽に誘拐されては、ルールとして罷り通りません」

「んじゃあ、銀河の神様が注意すれば良いじゃねえか」

「無論、そうしているのですが、異世界転生というジャンルがじわじわと浸透している中、転生された魂の持ち主は『潜在意識で異世界転生もあり』というお気持ちを有しておられまして、そこを狙って引っ張り込まれてしまうのです」

「じゃあ、納得ずくだろ?」

「ええ、そうですね。ですので、同数の魂が転生や召喚で交換されるのは構いませんが、ほぼ取られっぱなしです」

「地球、人気ねぇんだな」

「いえいえ。そうではございません。我が銀河の神はあるがままの世界、あるがままの生き物を愛しているのです。対して、転生を受けれる異世界の神達は、自分達の愛する世界を正す為なら他の世界の生き物を引き込んで良い、寧ろ他所者だった魂の持ち主が味わえない体験をさせてあげて、代わりに脅威を押し付ける事は正しいと考えておられるのです」


 価値観の違いってやつだな。


「んでもよ、何でそんなに俺達の世界の魂が狙われるんだ?」

「大きな理由として魔力と呼ばれる力が余っているからですね。異世界では魔法が日常的に使われている事が多いのですが、世界に溢れる魔力を空気だと思って考えてみて下さい。大きな魔法を使う者は世界にある空気をたくさん使います。世界の魔力は少しずつ回復しますが、魔法を使う者が多ければ多い程、多量の空気を必要とします」

「あー、みんなで分け合うからか?」

「左様でございます。地球の生き物は魔法が使えませんが、その超自然の力は存在します。魔力という空気が溜まりに溜まっております。異世界転生、異世界召喚された者は、魂が銀河世界に記憶という形で繋がっておりますので地球の魔力も使い放題です」

「誰も使わないもんを使われても痛くも痒くも無いじゃねえか。だったら、異世界人を同じ人数こっちに転生させりゃ良いだろ?」


 お兄ちゃんの顔が歪んだ。あれ?俺、拙い事言ったか?


「人気が無いのです」

「は?」

「我々も努力しました。異世界転生者や召喚者に呼びかけて、地球の生活を物語にして広めようとしたのですが、コツコツ努力して夢を掴んだり、コツコツ努力して会社員になって住宅ローンを組み平凡に過ごしたり、インターネットやSNSで人のやらない事をやって人気になったり、アイドルになって人気者になったりと、地球の生活をアピールしたのですが、夢が無い、と」

「お、おう」

「異世界では貴族と平民といった、嘗ての地球の格差社会と同じ様な世界が多いので、多くの国で義務教育があり平等に学ぶ機会がある事も、例えば日本なら子供のうちは親、若しくはそれに変わる者の庇護を受けて労働などをせずに、学び、成績やスポーツなどで好成績をとれば、多くの道が開けると伝えたのですが、やはり、転生聖女や召喚勇者になれるのならいざ知らず、大概は一般人という一括りで努力して成功を自分で掴むという道筋はつまらないと」


 あ、うん。お兄ちゃんはこの世界をちゃんと好きなんだな。だから、人気が無くて悲しんでくれてんだな。良いやつじゃないか。


「そこでですね、あ、わたくし、皆様の言葉で分かりやすく表現しますと、天使という存在でございます。わたくし達が銀河の神を話し合い、地球人にとって良いこと尽くめのシステムを作りました。それがこのTTHG、トラック転生保険互助会でございます。異世界転生の切っ掛けはほぼ100%転生者の死で始まります。そしてその中でもトップの死因がトラックに跳ねられるとなります。二位の病死転生を遥かに引き離し、不動の一位です」

「マジか?何でトラックなんだ?」

「理由は不明ですが、ライトノベルやアニメやコミックではトラック転生は略してトラ転で通じる程のお約束になっております。スズゥキ様もご存知の通り、死亡事故を起こしてしまった場合、幾ら被害者に過失があっても起こした側の責任は大きなものとなります。交通刑務所、損害賠償、免許停止、職場からの解雇、遺族からの恨み、周囲からの冷たい対応、お子さんのいらっしゃる方は妻や子供を守る為に離婚したのに、どこからか話が漏れ悲しい事態が起きる等と言った事も起こりかねません」

「わかる。俺には子供どころか嫁さんもいないけど、職場のみんなも安全運転を心がけてるぜ」

「素晴らしい職場ですね。ですが、事故は起こってしまうもの。そこでTTHGです。異世界転生の力は時空を歪ませ転生者を誘い込むのです。確実という訳ではありませんが、高確率で転生者を引き込む、つまり事故が起きてしまうのです。我々、TTHGは契約した担当者が、お客様の周囲に漂う事故の気配を察知して、直ぐにお客様の元に駆けつけます。そして、事故を防ぐべく小休憩のお勧めや、迂回路の案内、助手席で早めのブレーキアドバイス等をさせていただきます。最悪、天使の力で最大数分時間巻き戻しサービスも可能です。更に付帯サービスとして、時空の歪みの無い事故の気配の時でも事故回避の為、担当者は必ず駆けつけます」

「それはすげえけど、お兄ちゃん達にどんな得があるんだ?そのトラック転生とやらが防げるだけだろ?安全運転は運転手の義務なんだからよ、手間が掛かりすぎないか?」

「いえいえ、我々は先にも話した通り、銀河を守る神の使いでございます。死亡事故を防ぐ事により、異世界への魂流出の防止、事故加害者を出さないといった大きなメリットの他に、互助会としてのお支払いをお願いしておりますので」


 ほらきた。悪魔の取引っぽいの。所詮世の中、美味いだけの話なんか無い。


「俺が死んだら魂寄越せって言うんだろ?」

「なっ⁈違います!違います!我々天使で構成された互助会でございます!護るべき愛子の魂なんてとんでもない!」


 お兄ちゃんは驚愕の表情でバタバタと手を振った。


「お支払いは小さな善行の積み重ねでございます」

「ゼンコー?」

「はい。小さな善行です。例えば、困っている人がいたらちょっと声を掛ける。出来るなら手助けをする。落とし物は交番へ。公共の乗り物で席を譲る。危ない事をしている子供に声を掛ける。お財布の小銭をぶちまけてしまっている人がいたらちょっと拾ってあげる。そういった小さな親切です。照れ臭いとか、断られたらカッコ悪いとか、困ってないと逆ギレしてくる相手もいる、といった事もありますが、契約者様が無理の無い程度で結構です。小さな善行も溜まれば大きな力です。善人が増え、転生を防ぎ、命が助かり、良い事尽くめです」


 成る程。


「例えば、コンビニで買い物して、端数の一円玉を募金箱に入れる程度でも?」

「善行です。やらない善よりやる偽善。この程度?でも集まれば大きな物になるのはスズゥキ様もお分かりですよね」

「おう、わかった。それなら契約するよ。勿論、安全運転は続けるし、事故を回避する努力はするけど、何があるかわかんねえしな」

「ありがとうございます!ではこちらの契約書にサインを。ここにわたくしもサイン致します。スズゥキ様の担当は引き続きわたくしラグエールルとなります。どうぞ、よろしくお願い致します」


 その後、トラック運転手スズゥキは三回ラグエールルの指導でトラ転を防ぐ事が出来た。小さな善行は定年後も続け、妻や子供や孫に囲まれて大往生という最後の時に、ラグエールルに案内されて、転生を待つ者の為の天国に導かれた。

 スズゥキと妻の出会いは、妻の飼っていた猫が動物病院から脱走してしまい、探していますのポスターを見たスズゥキが仕事の合間や休日の空き時間に探して見つけた事だった。以前の自分なら、迷子の猫のポスターなんか目にも止めなかったのにな。と言うスズゥキに、ラグエールルは「スズゥキ様の担当になれて本当に光栄です。来世もぜひ」と返した。


「スズゥキ様の様な多くの善意の方によって、病死転生部門も始動しました」

「そりゃ良かったな。俺の孫達は長生きして欲しいな」

「そうですね。記憶は無くても、またどこかで会えますよ。同じ世界で転生するのですから」


 スズゥキは、最後にラグエールルと握手して光る天国の門を潜った。


ーーーーーー


「サァトゥー様、大変申し訳ありませんが、支払いが滞っております」

「あ?知らねえ。入ったら交通事故を起こさないって聞いたから入ったんだし、お前らだって、事故が起こらないんだから良いだろ?」

「しかしですね、サァトゥー様は運転自体も荒すぎます。大きな事故を防ぐのも五回目です。TTHGの支払いとなる、小さな善行が為されないのであれば、サービスの代価を頂きます。我々は互助会でございます。小さな善行という善なる力で担当者の派遣や時間の巻き戻しを行なっておりますので、このままではサァトゥー様は他の会員の方の迷惑になってしまいます」

「はあ?勝手に人を変な所に連れ込んで、事故を防ぐとお前らが得するって言っただろうが」

「わたくし、きちんと説明致しましたよ。小さな善行を支払いとする、と。事故を防ぐ度、支払いがなされていない事を通告しております。ご納得いただけないのなら、と、契約解除もご案内致しました」

「あ?契約解除なんかするかよ!俺が損するじゃねえか。良いだろ、人が死なねえんだから」


 サァトゥーの担当者サスイールルはもうダメかな?と思った。先日、TTHGの成功効果を喜んだ銀河の神が開催した、TTHGスタッフ慰労会では、同期のラグエールルとスズゥキ様の話を聞いて嬉しかったし、サァトゥー様も同じトラック運転手として心を入れ替えて欲しい。サスイールルは説得したが、サァトゥーは面倒だと全く聞く耳を持たない。


「では、サァトゥー様の未払い分は、回収部門に回しますが宜しいでしょうか?」

「ああ、良いぜ。勝手に持ってけよ。どうせお前ら人間を保護する存在とやらなんだろ?俺を殺したり出来ないんだからな」

「そうですか、残念です。では、サァトゥー様の同意の言葉を持って、担当者交代となります」


 次の瞬間、サァトゥーはサスイールルと出会った最初の場所、謎の白い空間にいた。フカフカのソファ。目の前の机にコーヒー。机を挟んで向こう側には、漆黒の髪と瞳。血の気の引いた肌の男性が座っている。


「初めまして、サァトゥー様。わたくし、TTHG回収部門スタッフ、ガドレールルと申します」

「あ?ガードレール?」

「事故防止担当スタッフからの報告書によりますと、五回のトラック転生防止、日常的な危険運転、小さな善行一切無しという事で、契約解除のご案内をした所、解除は拒否されたとありますが、間違いは無いでしょうか?」

「あ?そうなんじゃね?でも、解除すっと、今度こそ事故を起こしちまうかも知れねえなあ。そしたらお前、責任取れんのかよ?罪も無い人間が死ぬかもしんないんだぜ?お前ら、人間を守るんだろ?」


 ガドレールルはにこりと微笑んだ。サァトゥーは挑発にのって来ないガドレールルの態度に肩透かしを喰らった気分になったが、所詮天使、人を守るって立場なんだから、放棄はしないよなとほくそ笑む。


「はい、わたくし達はこの世界の生き物を守る立場です。ですので、安全運転を心がけている契約者様、トラック転生誘拐されそうな方々、契約者様でもそうでなくても善行を積んでいらっしゃる方々の魂を守る為に活動しております。サスイールルからの説明でありました様に、我々が契約者様の所に駆けつけたり、時間を戻すエネルギーは神の力と善行の力を使っております。互助会ですので会員皆さんの協力で成り立っておりますので、システムのタダ乗りはお断りしております」

「そのサス何とかが俺を変なとこに閉じ込めて無理やり契約をしたんだぜ?」

「左様ですか。しかし、我々は勧誘時に商談スペースにお招きはしても、説明後に契約しないと宣言された方については、強制出来ないという制約が掛けられております。また、契約前の説明でご理解頂けず、ただ『事故を防止する』という言葉に釣られて契約された方については、スタッフが駆けつけた際、必ず説明しております。実際、サスイールルが説明をしたという事実が神の力によって記録が残されております」


 貼り付けた様な笑顔を崩さないガドレールルに対して、サァトゥーは本能的な恐怖を感じて立ち上がろうとしたが、体はピクリとも動かない。


「今後はわたくしが、事故防止の為動く度、サァトゥー様からその場で実費分を回収させて戴きます。それと、今までの支払い分を頂きます。安心して下さい。生き物が持つエネルギー、魂の一部をちょっと頂くだけです。わたくし達は命を守る者、殺す様な事はございません。寿命が減りますが、止めにはなりませんので。但し、魂を削りますので激痛は致します。しかも五回分ですので少々大変ですが仕方がありません」


 ガドレールルの言葉が終わった瞬間、サァトゥーの全身を激痛が襲った。心臓が頭が腕が腹が足が、全てが痛い。声も出ない程の痛みに、脂汗を流して耐えるサァトゥーは気を失った。

 

 サァトゥーが気が付くと、元居た場所、コンビニに停めたトラックの運転席にいた。


「何だよ、結局凄く痛えだけじゃねえか」


 確かに、物凄く痛い目にあった。けれど、次に事故を起こさなければ良いんだし、今回は五回分纏めてだったから一回分ならあそこまで辛くは無い。事故なんて早々起きるもんじゃない。起きたらちょっと痛いのを我慢すれば良いんだ。ガキの頃は喧嘩とかで結構痛い目にあったし、あいつらは俺の命は絶対取れないんだからな。

 サァトゥーは全く懲りてなかった。


ーーーーーー


「残念です。実に残念です、サァトゥー様。今までに支払いを踏み倒した方は多かったのですが、担当を回収部門に代わったお客様は皆さん心を入れかけて、善行を積まれております。他のお客様でも部門移行後、善行が足らず一度目の実費払いはあっても、二度目になる前にきちんとお支払い頂いております。それなのにサァトゥー様は二回目も善行皆無。一体どの様に考えておられるのでしょう」

「うっせえな。おら、持ってくんだろ魂の一部とやらをよ!だけどな、俺を殺すのは出来ないだろ?ちゃーんと残しといてくれよな」

「はあ。左様ですか。残念と申しますか、予想通りと申しますか」


 ガドレールルは眉を寄せて遺憾の意を表していたが、すっと無表情になり、次に微笑みに変わった。

 サァトゥーが居るのは例の白い空間である。フカフカソファだが、コーヒーは無い。そして、白い空間の色が灰色に変わる。


「サァトゥー様の実績をこちらでも既に会議にかけておりまして、確かに、異世界に魂を持って行かれるのは損失ですが、サァトゥー様の様な契約者なら、異世界に魂を取られても良いと決まりました。自分本意を変えられない魂の持ち主なら、いなくても良いですよね」

「はあ?どういう事だよ」

「異世界から転生や召喚の力が働いた時、優先的にサァトゥー様の様な契約違反を繰り返す方を送り出す事になったのです。此方もスッキリ、彼方も大喜び。これ以上魂を削ったらサァトゥー様の命が保証出来ませんので。どうぞ、彼方でご活躍を」

「あああ?」

「ご安心下さい。予定では聖女に転生致します。魔族の侵攻を受け、世界が瘴気という悪い力に覆われた状態で、世界を救う救世主です」

「セイジョって何だよ⁉︎じょって女かよ⁉︎俺は40近い男だぞ!」

「転生ですので、性別が変わる事も問題ありません。折角ですので、説明しておきますね。転生後、12歳で行われる聖女選抜試験で過去最高の能力で聖女に選定されサァトゥー様の記憶を取り戻します。15歳まで神殿で半ば監禁状態で祈りを捧げ聖女の修行。毎日水ごりと粗食、マナーの授業もありますね。その後、魔王を倒す為の過酷な旅に。同行者は王子と護衛騎士と大魔道士と大神官です。聖女のサァトゥー様は国一番の美しさも手に入れますから、勝ち組とやらですね。因みに、同行者全員どエロです。王様も宰相もどエロです。一夫多妻です。どエロなので、神殿を出てから常に体を狙われます。それと、体を汚されてしまった場合、聖女の力が無くなります。そうなると魔族に捕まって世界はほぼ滅亡、じわじわと嬲られつつ地球から細々と送られてくる地球の魔力で生き長らえますが、その異世界の力目当てに生かさず殺さずが続きますので、頑張って我が身をお守り下さい」

「はあああああ⁉︎」

「ちゃんと身を守って魔族を倒し、瘴気を払えば、伝説の聖女になれますよ。やり甲斐がありますね。その時のご褒美は気に入った相手との結婚です。女性として幸せですね。選べる相手は全員どエロですけど」

「や、止めてくれ!払う!払うから!」

「いえいえ、今回、七回目の分をいただきますと、サァトゥー様の魂は消滅、死んでしまいます。わたくし天使ですので、その様な事はとてもとても。では、良い異世界転生を」


 ガドレールルの言葉が終わった次の瞬間、サァトゥーの姿が灰色の空間から消えた。


 TTHGはちょっぴりの善意で運営されています。好評の為、病死転生部門の次に、一般車両を含めた交通事故部門、鉄道部門、カウンセリングのアフターフォローもついた自殺部門も検討中。

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― 新着の感想 ―
[一言] TTHGー!早くこの銀河系にも出来てくれー! 切に、切にこう思いました。(家の前がでっかい道路なのです。貨物を載せた大型トラックやガンガン走るミキサー車、近くで見るとめっちゃ怖いです) そ…
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