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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第4章 中央大陸・魔物の海編
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第98話 悪魔との戦い

「グオオオオオオオ!!」


 前触れ無く悪魔が咆哮を上げた。

 その強烈な産声に身体が強張りかけるが、これは戦闘の合図だ。ここで動けない冒険者はこの場には必要ない。気合で耐える。

 咆哮を上げた悪魔は、重量のある足を一歩一歩こちらへと進めてくる。


「総員構えろ! 陸に上がる前に魔法使い組は攻撃を開始しろ!」


 その号令で全員が武器を構えて気合を入れなおす。

 悪魔は身体が大きく、人間のように二足歩行をしているため一歩が大きい。このままだとすぐに陸まで上がってくるだろう。

 すぐに魔法使い組が移動し、攻撃を開始する。

 炎の玉、土の槍、風の刃……あらゆる攻撃が悪魔を狙う。

 さすが腕に覚えのある冒険者たちばかりなだけあって、どの攻撃も強力だ。しかし……。


「くそ……効いてないな……」


 誰かの呟きが聞こえる。

 悪魔が腕を振るだけで、魔法がことごとく払い除けられたのだ。どうやら、あの筋肉のついた身体は飾りではないらしい。

 でも数撃てば鬱陶しくは感じるらしく、嫌そうに身をよじる様も見られた。全く効かないというわけでもなさそうだ。


 私は障壁魔法を使う可能性を考えて魔法攻撃には加わらなかった。この様子では加わったところで効果も薄かっただろう。

 悪魔は歩みを止めることなく進んでいき、ついにその巨体を支える足を岸に乗せた。


「かかれ!」


 雄叫びを上げながら剣や槍を持った前衛組が悪魔に攻撃を仕掛ける。

 槍を突き刺し、剣で切り裂き、鈍器で殴りかかる。


「ぐあ!」


 しかし悪魔が腕を振るうだけで、そのことごとくが阻まれる。かなり速い。

 私はギリギリ視認できるけど、他の人は大丈夫だろうか。

 案の定、腕が当たり吹き飛ばされる者が出てくる。


「魔法使い組で動きを封じろ! 合わせて狙え!」


 魔法使いたちが攻撃を仕掛け、動きを止めているうちに前衛がそれを躱しながら攻撃をチマチマと加える。

 敵も強いけど、それ以上に……。


「連携が上手くいってない……」


 二十一人の即席パーティなんだ。いきなり合わせろなんて無理がある。

 私なんて、どうやって攻撃に加わったらいいのかわからなくて攻めあぐねている。

 もっとパーティごとに分けて戦わせてほしい。


「ちょっと……!?」


 指示している高ランク冒険者に改善を要求しようとしたが、悪魔の行動がそれを阻む。

 悪魔の手の平に、紫と黒が混ざった暗い色の球体が生まれ、どんどん大きくなり始めたのだ。


「闇魔法だ!」


 あれが闇魔法! 

 初めて見た。悪魔みたいな見た目だけあって、使う魔法がそれっぽい。なんて思っている間もどんどん大きくなっていく。

 悪魔は右手でそれを作りながら、左手で虫を払うように冒険者たちの攻撃を払い除けている。あの闇魔法を止めることすらできない。

 そして人よりも大きなサイズにまで育ったそれを――私たちには見えない、しかし巨体である悪魔にはもしかしたら見えているのかもしれない――キャンプ地に向けた。


「! させない!」


 私は悪魔とキャンプ地を結ぶ直線上に立ち、障壁魔法を構える。障壁で受けきれるはず!


「退避!」


 攻撃を加えていた冒険者たちが闇魔法が当たらない位置まで退避していたところで、悪魔の手のひらから闇魔法が打ち出される。

 まるで黒い炎の塊のようなそれは、想像以上の速さで迫ってくる。


「ぐ……! これくらい……!」


 気合を入れながら障壁を展開、黒い炎を受け止める。


 バキバキバキバキバキ!!


 障壁が音を立ててひび割れていく。その分だけ魔力を込めて障壁を修復し続ける。

 大丈夫、ちゃんと止められる!


「リア!」

「大丈夫!」


 見ることはできないが、おそらくエルシーナの声だろう。

 でもこれなら大丈夫だ。魔力消費は激しいが、無くなるほどじゃない。

 黒い炎は徐々に小さくなっていき、やがて掻き消えた。



「ふう……」

「よくやった!」


 魔法を受けていた間も攻撃は続けていたようだ。見ると、全体の動きが先ほどよりも良くなっている。

 どうやらパーティごとの攻撃に切り替え、相手に息をつかせないうちに立ち位置を順番に入れ替えて戦っているようだ。

 この『魔物の海』の活性化の魔物討伐の際は、多数の魔物を相手にしながら他パーティと徐々に立ち位置を入れ替えて戦ってきた。その経験が活きたようだ。

 事実、先ほどより悪魔にダメージを負わせられている。


「リア!」

「リアさん、ケガはありませんか」

「うん、ケガは大丈夫」


 エルシーナ、クラリッサ、セレニアが近くに来た。

 クラリッサはいつもの鈍器ではなく、回復の杖を握っている。

 この二十一人の中で唯一、回復魔法が使える彼女は後方支援に徹している。そのため、エルシーナとセレニアもひとまず待機中のようだ。


「リアさん、もう一度あの攻撃がきたら守ってほしいと指示が出ていますが」

「うーん……」


 正直あれ一発でかなりの魔力を消費した。

 防げないほどではないけど、基本的に障壁魔法は燃費が悪い。そう何発も受けられないだろう。


 この障壁魔法は受け流しができない。

 受けた魔法を上空に逃がせればもっと消費も少ないかもしれないが、障壁魔法は受けた魔法をかき消すのが基本だ。

 元々障壁魔法自体がそういうものなのか、この杖が特別そうなのかはわからないけど。

 さっきはどうにか『受けた魔法を消失させながら新しい障壁を張り続ける』ことで持ち堪えただけだ。

 何度も何度もやってられない。物理攻撃なら受け流せるんだけど。


「あと数発なら防げる、と思う」

「わかりました。無理はしないでくださいね」


 そういいながら、クラリッサは先ほどから指示を出している冒険者の方へ向かって行った。


良ければ評価やブクマをお願いします!


次の投稿までまた間が空くと思います。

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