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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第4章 中央大陸・魔物の海編
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第92話 ランクと信用

 お風呂に入ったり、身体を鍛えたり、食事をしたり、買い物をしたり……四人で過ごしているとあっという間に時間が過ぎる。早くも戦場まで戻る日がやって来た。


「もう戻るんだねぇ……」

「なんで三日しか休みがないんだろ……」

「ぶつくさ言ってないでさっさと準備してください」


 前衛組でぼやいていたらクラリッサに急かされる。また馬車の護衛をしながらキャンプ地まで向かうことになっている。結構大変なんだよなぁ。

 前回と同じように門の外へと出て、出発時刻まで待つ。


「また先頭?」

「今日は後ろだ」

「後ろかぁ。あれ危険だよね」


 一番後ろの馬車の更に後ろを歩くのだ。視界の外からの攻撃を気にしていると消耗が早い。

 私には危機察知があるけど、他三人はキツイだろう。


「そうだが、先頭が楽というわけでもなかろう」

「そうだけど」


 先頭は先頭でキツイ。どれだけスムーズに倒せるかで馬車の進行速度が決まるのだから。

 処理が遅ければその分、他の場所を守っている冒険者たちのところにも魔物が寄っていくから負担を増やしてしまう。責任が重い。


「どこも変わらないよ。魔物が多いのが悪い」

「それもそうだね」


 エルシーナの言い分には身も蓋もないけど、その通りだ。

 今日からまた連日連戦。頑張りましょう。




 ……なぁんて思ってたんだけどなあ!


「想像していたよりも後ろキツくない!?」


 馬車との距離に気を付けながら目の前の魔物を葬る。そろそろ息が上がりそうだ。

 馬車が全然進まないせいで、ずっとこの場所で押し寄せてくる魔物の大群を相手にしている。


「先頭をEランクに任せるなんて無謀!」

「あの人たちができると豪語してうるさかったせいでしょう!」

「耐えろ。この大群が終わったら入れ替えを提案してくる」


 身体を休める暇もないまま、それぞれの不平不満が爆発している。

 大声を出せるほどの余裕はまだあるけれど、それもいつまで続くことか。セレニアがどうにかしてくれるそうなので、それに期待して目の前の魔物を斬り続ける。


 ちなみに後日聞いた話だけど、この馬車の護衛は一応断れるらしい。

 冒険者だけで固まって移動とか普通にしているんだって。魔物が多いから護衛は危険だってみんな理解しているので、三パーティくらいしか護衛が集まらないんだよ。

 一応ギルドからの依頼扱いなので、ランクアップのための評価にはなるから私としてはいいんだけどさ。

 受けているのは評価が欲しい冒険者か、危険さを知らないこの大陸に来たばかりの冒険者か、お人好しくらいだ。

 エルフ三人はおそらく、お人好しの部類だね。


 そんなわけで、碌な冒険者が集まらない馬車の護衛だけど。


 今回集まった冒険者は私たちと、Dランク冒険者パーティと、Eランク冒険者パーティだ。

 このEランク冒険者たち、なんと船で一緒になった六人の男女混合パーティだ。

 私は船内であまり顔を晒していなかったから、向こうは私に気が付かなかったようだけど、私はすぐに気が付いた。あの腹立つ女性がいたからね。


 最初はDランクのパーティが先頭、Eランクが真ん中、私たちが最後尾ということになっていたのだが、Eランク冒険者どもが「自分たちが先頭でも行ける!」と豪語し始めた。

 どうやら戦場で最初の一週間を生き抜いて自信がついたらしく、そんなことを言い出したようだ。


 Dランクパーティが三人組な上に、この大陸に来たばかりだということが気がかりであったのは確かだ。

 その人たちが初めて『魔物の海』の活性化に参戦するということで、ちょっと不安そうにしていたのも事実。


 その倍の人数がいるEランクパーティに任せる方が……? みたいな考えが私たちと馬車の御者たちに芽生えたことは否定できない。

 しばらくの話し合いの結果、そこまで言うならと任せた結果がこれだよ。



「つ、つかれたぁ」

「はあ……はあ……」

「リア、エルシーナ、ここで見張ってろ。クラリッサ、先頭まで一緒に来い」

「わかりました」


 ようやく大群を退け、死体の山を作り出したところで襲撃が落ち着いてきた。

 私とエルシーナはもう地面に座り込んでしまっている。それほどきつかった。休みたい。

 すぐにセレニアとクラリッサが先頭の様子を見に行った。心配だけど、一番危険な場所にいるのは私たちの方だ。次の襲撃が来る前に早くどうにかしてくれ。




 死体の山を魔法で燃やしていたら、セレニアとクラリッサが戻ってきた。割と早く場所交代の提案が受け入れられたようだ。

 でも……。


「最後尾から先頭まで移動したってだけで、きつさに変わりがない」

「私たちが頑張れば頑張るほど、早く目的地に着きますから」


 クラリッサの慰めにならない励ましを聞いたところで再出発。これ、夜間の見張りもひと悶着あるのかな。




「我々が先に休ませてもらう。うちの前衛がさすがに潰れそうだ」


 セレニアの言葉を聞きながら睡魔と戦っている。ねむい。

 本日の道程を半分超えた辺りで夜になってしまい、これ以上は危険ということで一度休むことに。

 しかも前衛組の私たち二人はケガを避けられなかった。連戦に次ぐ連戦だ。体力が限界になっても仕方がなかった。

 私は危機察知のおかげで、エルシーナは長年の経験のおかげか、軽いケガで済んだことは本当に幸いだった。

 クラリッサに治療をしてもらい、綺麗に治してもらったところで睡魔が襲ってきている。ねむい。


 魔物除けの魔道具を使うと、その間はある程度魔物が寄ってくるのを避けられる。でも絶対というわけでもないので、やはり見張りは必要だ。

 その見張りの順番で、昼間一番働いたであろう私たちが最初に休むということになった。

 なった、というよりセレニアが押し切った。正直この状態で見張りは無理だ。我らが頭脳派リーダーは頼りになる。

 魔物の大群を速やかに排除しながら進むのは本当にキツイ。遅れた行程を取り戻す勢いで進んだのもある。おかげでだいぶん進みはしたが、その代わりに今にも瞼が閉じそうだ。

 エルシーナはほぼ寝ている。


「最初に休むことになった。もう寝てしまえ」


 ひと悶着なかったようで安心だ。

 寝ていい許可が下りたので、横になった途端に眠りについた。さすがに限界だった。



 夜明け前に起こされ、見張りをする。なかなか便利な魔物除け魔道具はしっかり働いてくれたらしく、特に問題は起きないままに朝を迎えた。

 その後の護衛も私たちが先頭として速やかに進んでいくことを御者に希望されたので、その通りになった。


「ランクって信用の証なんだね」

「そうだな。ランクが上がるほど、信用されるんだ」


 私もこの活性化が終わったらランクが上がるだろうか。

 私だけ低いままじゃなんとなく嫌なんだよね。高評価を得られるように頑張ろう。


着々と評価が増えていて嬉しい限りです。

見てくださって本当にありがとうございます。

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