第89話 リアの今日までの話 <エルシーナ視点>
エルシーナ視点です。
宿で休息をとっているとき、ふとリアがこの一年半の間に何をしてきたのかをちゃんと聞いていないことに気がついた。
せっかく時間があるんだから聞いてみようかな。
そんなわけで尋ねてみると、リアがここに来るまでの話を楽しそうに話してくれた。
まず、わたしたちが東大陸を旅立った後、彼女は学校を卒業するために卒業課題というものに取り掛かったようだ。
魔道具か魔法を一つ自作するという課題で、彼女が作ったものは『洗濯機』という魔道具だった。
「ええ!? あの洗濯機を作ったのってリアだったの!?」
「そうだよ。使ったことあるでしょ?」
驚いた、あの洗濯機はリアが作ったものだったなんて。
そしてそれを聞いた魔道具と魔法が大好きなセレニアが、横になっていたベッドから勢いよく飛び起きた。
さっきまで疲れた顔で眠そうにしながら聞いていたのに。
「もちろんだ。あれはなかなか便利な魔道具だと思っていた。この街の魔道具店にも置かれているし、この間『洗濯屋』ができたばかりだ」
「一週間分の汚れた服を、洗濯屋で洗う冒険者で連日ごった返していますよ」
洗濯屋は数カ月ほど前にアシュミードにも作られた。安宿などには洗濯機が置かれていなかったりするので、そういった場所に泊まっている冒険者たちが数多く利用している。
この宿でも別料金だが洗濯機が置かれているので使うことができる。何度か使ったけど、あれは便利な魔道具だと思う。
一枚一枚擦って洗っていた洗濯物を一度に全部洗ってくれる上に、絞ってまでくれるのだ。干すだけでいいなんてとっても楽。
ついさっきだって洗濯物を洗濯機で洗ったばかりだ。
今まで洗濯にどれだけ時間がかかっていたことか。一度あの便利さを知ってしまえば、もう戻ることはできそうにない。
リアが作ったのなら、これからはお金を払って洗濯機を使用しなくても済むかな?
わたしたち用に一つ作って欲しい。
「ふふー。画期的な魔道具だって魔道具ギルドでも言われた。高値で買い取ってくれました」
得意げな顔をしているリアが可愛い。この子本当に可愛いよね。
一年半で少し成長したようで、背は低いけど大人っぽさが出てきた。でも楽しそうに笑っている表情が一番可愛いと思う。
そういえば別れの時にちょっと手を握ってみたりしたんだけど、時間経ってるし再会があんなだったせいで何の反応も見せてくれなかった。
これからはもう少し頑張ってみようかな。積極的に話しかけたり、触れてみたり……やり過ぎない程度に抑えられるかな。今もうすでに抱きしめたい気分なんだよね。
共通の趣味を作る、なんて考えていたけど、結局思いつくものは特になかったんだよね……。
エルフは長寿だから何かしら趣味がある人が多いんだけど、わたしにはこれといって思い浮かばない。料理とかならするけど、趣味っていうほどのめり込んではいないし。
むしろリアと一緒に考えてもいいかもしれない。リアは何が好きだろう。
それでもまずは、ここでの仕事が終わらないと難しいけど。
無事に学校を卒業した後は故郷に帰り、ご両親に旅に出ることを告げたところ、父親と試合をして勝つことが条件として出されたと。その辺りは手紙に書いてあったから知ってる。
ただその後の『魔物の沼』近くで修行をしていたという話を聞いた時は怒った。
「またそんな危ないことして!」
「修行にはいいかなぁと思って……」
しかも半年以上もそこに通い詰めたとか。
あんまり深く考えてなさそうなリアに、思わずため息が漏れる。
なんで自慢げに話したのかわからない。この子は本当に反省をしているのかな。この調子だとまた何か無茶なことをしそうで心配になる。
でもその修行のおかげか、父親に勝利して旅立つ許可をもらえたと。それはまあ、よかったけど。
その後は身体強化を使って港まで休み休みだけど走ってきて船に乗ったと。
何もそんなに急がなくてもいいのに。嬉しいけど、安全第一で来て欲しい。
他にも革で自分の防具を作ったとか、ライラちゃんに魔道服をもらったとか。それはそれは楽しそうに話してくれた。
ライラちゃんはわたしたちも一度だけ会ったことがある。リアの学校時代のお友達だ。
今は故郷に帰って魔道服を作っているんだって。布や糸を送れば服を作ってくれるって約束したらしい。仲がよくて羨ましい。
修行に追われるだけじゃなく、楽しい思い出もたくさんできたみたいで本当によかった。
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