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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第1章 幼女時代編
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第9話 王都へ行こう

 爆弾を試してから数週間後、ようやく王都へ向かう日が来ました!


「気を付けてね」

「うん、行ってきます」

「この命に代えてもリアを守ってみせるよ」

「はいはい。あなたもちゃんと帰ってきてくださいね」


 朝早く起床し、身支度を済ませたら母に別れを告げ、父と共に家を後にする。

 この世界では長期休暇を取ることはほぼできない……というか、しない。

 余程の理由があれば可能だが、家族旅行のために休みますとか考える人はいない。取れないわけではないとは思うけど、職場環境次第かね。

 ここから王都まで馬車で二日かかるそうなので、往復もすれば一週間近く休まなければいけない。そのため今回母はお留守番となった。

 正直母にはついてきて欲しかった。いろんな意味で。ホントに。でも、二人で行くわけではないので大丈夫。


 門の近くまで行くと、待ち合わせしていた人物がすでに待っていた。


「サイラス、待たせたな」

「サイラスさん、おはようございます」

「ああ、おはよう。馬車はもう用意してある。行くぞ」


 そう、サイラスさんも一緒に行ってくれることになったのだ。といっても、行きの馬車と王都で二日滞在する内の一日だけだけど。その後はお仕事らしいのでお別れだ。

 帰りの馬車で父と二人というのはだいぶん疲れそうで、今から不安である。


 外に出ると馬車と御者の人がすぐ近くで待っていた。今回はこの貸し馬車に乗って王都まで向かうのだ。

 何気に馬車になるのは前世も含めて初めてだ。こんなに大きな馬を近くで見ることも滅多になかった。ちょっとワクワクする。


「よろしく頼む」

「はい、準備はできておりますので、いつでも出発できます」

「じゃあ早速行こうか」

「はい」


 屋根のついた馬車に乗り込む。そんなに広くはないが、三人で乗る分には十分だろう。

 そわそわしながら待っていたら、その様子を見た父が苦笑いしながら話しかけてくる。


「楽しみにしているところにアレだけど、乗り心地はそんなに良くないからね」

「これでもマシなやつだがな。そのうちケツが痛くなる――と、動いたか」



 おお、動き出した、動き出したが――結構揺れる。

 ガタガタガタガタっていってる。


「ガタガタします」

「だよね。これ、お尻にひいておくといいよ」


 そういって父が例の魔道袋からクッションを取り出して渡してくれる。お尻にひいてみると、確かにちょっとマシになった。


「このまま二日って大変ですね……」

「そうだね。疲れたら言うんだよ。休憩するからね」


 そうさせてもらおう。外に出て身体を伸ばすだけでも違うだろうから。




 その後は、王都はどんなところかとか、この辺の地理はどうとか、魔物がどうとか、初めてのガリナの外の景色を堪能したりとか、二人に色々お話を聞かせてもらったり窓の外を見て過ごした。




「嬢ちゃん、火つけてみるか?」

「あ、やりたいです」


 人生初の野営。火を熾そうとしているサイラスさんが、ふと思い立ったのか、私に聞いてきた。


「やり方は覚えているか?」

「はい」


 小型の火の杖を受け取り、集めた薪に向ける。多すぎず、少なすぎず、慌てずに魔法を発動する。小さな火種が薪にポトリと落ち、火がついた。


「ふう……」

「上出来だ。やっぱり才能あるな」


 私の頭をわしゃわしゃと撫でるサイラスさんに杖を返す。

 実はこの二年、ほとんど魔法には触っていない。言わずもがな父が渋るせいである。もう教わったでしょ? 十分でしょ? みたいに言ってくる。過保護。

 そんな父は一連の流れをジッと見てた。怖いわ。


 その後も準備は順調に進み、温かい食事を取ったあとは就寝だ。

 私は馬車のなかで寝かせてもらえるらしい。父とサイラスさんが交代で見張りをするそうだ。御者の人は男性なので私から離れた位置で休むことになっている。お父さんがそう言った。もう何も言うまい。







 二日目。順調に進めているので今日の昼過ぎには王都に到着するだろうとのこと。

 楽しみだ。


「王都に着いたらまずは宿探しだね」

「俺が仕事じゃなければ俺の家でもよかったんだがな」

「そこまで世話にはなれないさ。リアも王都の宿に泊まってみたいだろうし」

「はい。楽しみです」


 サイラスさんは王都で仕事をすることが多いからか、王都にも家を持っているそうだ。

 普段はガリナの家に住み、王都で用があれば王都の家に行くという。さすが高ランク冒険者、家を二つ持つくらいなんてこともないらしい。






 ――ぞわり


 !? なんだ今の……ものすごく嫌な感じがした。

 見られてるような、気持ち悪い、不安になるような……なんだこれ。

 いや……これ、似たようなのをこの前も感じたような……?


「前方に魔物が!」


 御者の叫びで我に返る。それを聞いたサイラスさんが外に飛び出した。


「リア、ここにいるんだよ。外に出てはいけない。いいね?」

「は、はい」


 父は私にそう念押ししてからサイラスさんの後を追った。


「魔物……今のが危険を察知する勘の良さってやつ?」


 身体に不快がまとわりついているかのような気持ち悪さ。これが女神様がくれた力か。今まで反応したことはなかったけど、これは慣れないと気分が悪くなりそうだ。


「いや、慣れるというのもおかしいか……というか、これこの前の爆弾の時にも感じたやつか」


 あの時は手のひらに乗った爆弾に危機察知が反応したんだろう。あの時はこれが何なのかわからなかったけど、今ならわかるな。反応したことがないとか嘘だったわ。

 それにしても自分の能力にも反応するなんて便利だね。涙が出るよ。



 窓から外を見てみるが、この位置からでは魔物の姿は見れない。できれば見ておきたかったんだけど。


「終わったかな……?」


 この辺りに出る魔物はゴブリンみたいな低級の弱い魔物ばかりらしいので、父やサイラスさんが万一にも負けることはないだろう。

 ちょっと覗いてみたい気はするが、外に出たのがバレて父の機嫌を損ねると、このままガリナへ帰るとか言い出しかねない。おとなしくしているのが吉だ。




「リア! 無事かい!?」

「何もありませんでしたよ」


 案の定駆け込んできた父に返答し、特にケガをしていないのを確認する。


「サイラスさんも無事ですか?」

「ああ、今魔物の死骸を焼いているよ」

「見たいです」

「女の子が見るものじゃないよ」

「後学のために」

「役立つ日が来るとは思えないけど……そこから覗くだけなら」


 許可が下りたので、馬車から降りて前方を見る。

 魔物の死骸らしきものが炎に包まれているのが見える。サイラスさんが火の魔法で燃やしているようだ。死骸だけでも見ようと思ったけど、少し遅かったか。

 仕方ないので馬車に戻る。


「すごい火でした」

「そうだね。死骸はああやって燃やすか埋めるかしないと、臭いで他の魔物が寄ってきてしまうんだよ」

「なるほど」


 ゲームみたいに勝手に消えればいいのにね。埋めるとなると大変だし、魔法っていうのは便利だなあ。




 その後しばらくして作業を終えたらしいサイラスさんが戻ってきて、再出発となった。

 その後は魔物が現れることもなく進み、ついに王都が見えてきた。


「おー。あれが王都ですか」

「そうだよ」

「おっきいです」


 遠目に見える巨大な外壁がその街の大きさを物語っている。やっぱりガリナより大きい。


「人がいっぱい並んでるみたいです」

「王都へ入る人の列だね。軽くとはいえ検閲されるからどうしても時間がかかってしまうんだよ」

「ここからがまた長いんだよな……」


 どうやらあの列に並ぶらしい。中に入るまでもう少しかかりそうだ。


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