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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第4章 中央大陸・魔物の海編
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第87話 移動するだけで大変

 サルの群れを倒し、ライオンの群れを倒し、虫の群れを気持ち悪さと戦いながら倒したところで休憩がとれるようになった。

 息を吐きながら地面に座り込んだところで、セレニアが話しかけてくる。


「聞きたいことがいくつかある」

「でしょうね」


 真剣な表情で詰め寄ってくるけど、周りに聞こえないように小声で話される。

 私はまだエルフ三人に自身の戦い方を何も話していない。身体強化も障壁のことも。

 障壁はまだ使っていないし、ここには人目もある。いざという時まで使う気はないので、話すのは今度でいいかな。

 四属性、光属性、身体強化……普通の人なら絶対持っていないであろう、それだけの魔法の才能。話すのは躊躇いがある。

 もちろん、仲間も例外じゃない。


「その腕はどうした」

「これは防具に刻んであるよ。自作」

「平気なのか」

「見ての通り、何にも問題ないよ」


 セレニアは私の腕にどんな魔力回路が刻まれているのか、微かではあるが知っている。

 どれだけ複雑で、どれだけの負荷がかかるか想像もできない、得体の知れない魔力回路の存在を。

 身体強化に耐えられず身体が損壊することは無い話じゃない。

 10倍の力が出せる身体強化を刻んでも、その力に身体が耐えられない。たくさんの術式を刻めば杖本体がその負荷に耐えられないのと同じだ。

 セレニアの疑問は、爆弾の魔力回路がすでに刻まれている腕に、防具の上からとはいえ、新しい魔力回路を刻んでは腕への負荷が大きすぎるのではないか、ということだ。


「許可、っていうか、お墨付きというか。とりあえず、そんなに負荷のかからないものを作ったから。同時使用はできないけど」

「杖とは?」

「それは大丈夫」


 足らない言葉での説明だったが、セレニアは正しく理解をしたようだ。

 腕の強化は杖と併用は可能で、爆弾とは不可能だと。


「どういうこと? 大丈夫なの?」

「リアさん身体強化使えたんですね」


 エルシーナとクラリッサは上手く理解できなかったようだ。まあ、魔力回路や魔法に詳しくないと難しいかな。何も問題ないことにわざわざ心配をかける必要はない。


「大丈夫だよ。この防具自作なの。身体強化刻んであるんだ、すごいでしょ」

「へぇー。これ自分で縫ったの?」

「そうだよ」


 この防具は全て自作だ。蛇を何度も狩り、革を自分で縫って防具にしている。

 最初は胸当てとブーツはお店に頼んでいたけど、旅の間毎回頼むことができるかわからないし、自分で作れるようになっておいた方がいいかなと思ってからは自作するようになった。

 すでに何代目かわからないけど、今ではだいぶまともな品になったと思う。


「その脚もか」

「これは腕と一緒。腕に刻んだ人が脚にも刻んだ」


 セレニアにしか聞こえないように教える。教えたところで何かが変わるわけでもない。

 セレニアの表情は変わったけど。信じられないようなものを見るような目だ。どういう感情なんだろうか。

 あ、人ではなかったな。まあ他に言い方がないけど。


「……活性化が終わったら全身調べさせてほしいところだ」

「私もだよ。自分で調べるには限界があってね」


 是非手伝ってほしい、なんて言うと、案外厳しそうに見えて優しいこのエルフは、眉を顰めながらも頷いた。




 爆弾や障壁を使うような事態が訪れることなく馬車は進み、夜間の見張りも各パーティで交代しながら務めたので問題は起きなかった。

 どうやら魔物除けの魔道具があるらしい。貴重な品なので夜間の時くらいにしか使われないとのこと。

 真っ暗な中で戦うのは大変だからね。夜間だけでも十分すぎる。


 そして次の日のお昼頃、誰一人欠けることなくキャンプ地にたどり着いた。



「つっっっかれたあー」

「本番はこれからだけどね」


 キャンプ地っていうからテントがいっぱい張ってあるだけかと思いきや、きちんと砦があり、そこで休憩や食事、シャワーなんかもできるようになっている。

 砦は頑丈な作りだけど、建ててからはそれなりに年月が過ぎているみたいだ。きっと『魔物の海』に対処するために建てられたんだろうな。

 全員が寝るところはさすがに用意できないので、それは外にテントを張って休むしかないそうだ。

 私たちも外にテントを張ってそこで休んでいる。あとでシャワーを借りたいな。


「これからすぐ?」

「いえ、明日からです。今日はゆっくり休んで大丈夫ですよ」

「まあ、こんなところでは休んだ気になれないがな」


 人が多くて落ち着かないとか、戦場のすぐ近くだからみんな気が立っているとか、そういうのもあるけど、それ以上に瘴気がすごい。


「これが瘴気かぁ……すごいね」

「ここはまだ薄い方だよ。もっと近づくと酷くなるから、無理しないようにね」


 東大陸で修行をしていた『魔物の沼』から少し離れた場所、あそこでは瘴気はほとんど感じなかったから、まともに瘴気を浴びるのはこれが初めてだ。

 身体に何かがまとわりついているような不快感、臭いなんかしないのに気分が悪くなり、空気がどんよりしているような気持ち悪さを感じる。


「普段からこんななの? 活性化のせい?」

「普段はこの辺りはもっと薄いそうだが、活性化のせいで瘴気の範囲が広がっているらしい」


 そうなのか。瘴気自体は普段からこんな気分が悪くなるものらしい。

 長居できないっていうのは本当だね。こんなところにずっといたら寝込むよ。

 こんなところに一週間もいないといけないなんて、大変だ。



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