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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第4章 中央大陸・魔物の海編
85/212

第84話 感動の再開? <エルシーナ視点>

エルシーナ視点です

やっと合流しました

 リアが森にいるかもしれない、そんな話を聞いた翌朝。セレニアとクラリッサと一緒に、森まで様子を見に行くことに。

 宿を出て森に一番近い門まで気持ち駆け足で向かう。すると、その門から街の中に入ってくる血だらけの女の子がいた。


「リア!!」


 名前を呼んで走り寄る。あの子だ。リアだ。およそ一年半くらいぶりに会う可愛い可愛い大事な仲間。

 名前を呼ばれた彼女は、わたしたちに気が付いたみたい。


「あー。ひさしぶりー」


 なんてのんきな声なのか。自分の姿に気が付いてないの?


「ケガ! 大丈夫なの!?」

「へいきだよぉ」


 ふあぁ、と大きなあくびをしている。本人は平気そうだけど、見た目からは到底そうは思えない。

 頭からの出血は綺麗な銀髪を赤く染めているし、顔も半分真っ赤だ。左脇腹の裂傷はそれなりに深そうで、流れた血がブーツまで届いている。

 他にも細かい傷が多そうだ。ほったらかしにしていいものではない。


「ど、どうしよう、どうしたらいいの?」


 思考がまとまらない。こういうときってどうしたらいいんだっけ!?


「落ち着け。これはもう神殿に連れて行った方がいい」

「そうですね、人の往来もありますし、そうしましょう」


 セレニアに落ち着かされ、まともな思考が帰ってくる。

 クラリッサも回復魔法が使えるけど、こんなところで治療するわけにもいかない。かといって宿に連れて行くには遠いし、周りに不自然に思われる。回復魔法を使える人は少ないから。

 それならいっそ神殿に連れて行った方が早い。クラリッサの持っている回復の杖で治し切れなかったら二度手間だし。よし、急がないと。


「じゃあしんでんにいってくるね」


 そういって何故か一人で歩き出すリア。足取りはフラフラしていて危なっかしい。


「危ないよ! ほら、連れて行ってあげるから捕まって」


 慌てて横に並び、肩でも貸そうとして……いっそ担いだ方が早いかな? なんて思っていたら。


「どっかいくんじゃないの?」


 心底不思議そうな目で見てくるのが信じられない。わたしたちがこんな血だらけの仲間を放ってどこかへ出かけると思っているの?

 仮にそうだったとしても、どうしてこの子は、「助けて」すら言わないの?


「……リアさんを迎えに行くところだったんですよ」

「わぁ」


 茫然としていたらクラリッサがリアの横に立ち、抱え上げる。先を越されてしまった。

 そのまま急ぎ足で神殿へ向かう。抱え上げられたリアはおとなしくされるがままだ。


「むかえ? なんで?」

「君が森へ向かったと聞いたからな」

「なんでしってるの?」


 どうやら本当に森を突っ切ってきたらしい。信じられない。あんな魔物だらけの森を一人で……この程度のケガで済んでいるのはむしろ奇跡なんじゃないかな。


「アーロンとかいう冒険者に聞いたの」

「ああ……」


 さきをこされたなぁ、なんて呟いている。この子はあの川をどうやって渡ったのだろう。聞きたいことがたくさんあるけど、今はこの子の回復が先だ。急いで神殿に行って休ませよう。


 まだ朝だからか神殿内は人が少なく、すぐに治療が受けられた。リアは回復魔法をかけられながら睡魔と戦っていた。

 寝てしまっていいとセレニアに言われていたが、何故か頑張っている。どうしたの?


「ギルド行ってくる」


 回復が終わって、今にも崩れ落ちそうな彼女が発した第一声がこれだ。どうやら魔道袋に魔物が入っているらしい。それを売りに行きたいと。

 この子は他人に心配をかけたことをちゃんと理解しているのだろうか。受け答えはしっかりしてきたけど、治療は終わっても出血量は戻らないし、見た目が血だらけなのも変わらないのに。ひとまず顔だけは綺麗にしておいたけど。


「それが終わったら宿に行ってさっさと寝るんだぞ」

「わかった」


 わたしとセレニアがリアに付き添い、クラリッサが宿に戻って三人部屋を四人部屋に変更してもらうように頼みに行った。




 今、この街には冒険者が多い。冒険者ギルドもそれなりの賑わいだ。まあ、騒いでいるだけなので、受付は空いているのだけど。血だらけのリアを見て何人か悲鳴を上げていた。

 リアが受付に向かい、買い取りをお願いする。


「解体もしてなくてちょっと大きいんですけど」

「それでしたら奥の倉庫に直接出していただいてもいいでしょうか」


 あのケガで魔物の解体をするほどの余裕はなかっただろう。これは時間がかかるかな。奥の倉庫に案内され、指定の場所に魔物を出す。出てきたのが――


「ロック鳥……」


 馬鹿でかい鳥が魔道袋から出てきた。それはいい、それよりも。


「あれ一人で倒したの……!?」

「そうだよ」


 ロック鳥を一人で倒したという。どうしたらあんな鳥を一人で倒せるというの。しかも、トドメが剣による刺し傷だ。どうやったらあれに剣を刺せるような状況に追い込めるのか。

 わたしだったらどう戦うだろう。地上で降りてくるのを待って……飛び道具があるロック鳥が降りてくることがあるかな? 本当にどうやって倒したんだろう。


「あと他にもいろいろあるから、これもいい?」


 まだ出てきた。二つ持っている魔道袋から大型の魔物が数体出てくる。これ、すぐには終わらないんじゃないかな。


「ホントにまだDランクなの?」

「仕事で遠出するより近場で魔物退治している方が修行になるかなーって思って」


 あまり依頼を受けていないからギルドの評価が上がっていないらしい。これはもう、少し強くなったとかじゃなく、とんでもなく強くなっているんじゃないだろうか。


「これは、一度連携を確認しておくべきだな……」


 セレニアがつぶやく言葉に頷く。前のときも年の割に強かったけど、まさかここまで成長しているなんて。年もランクも関係なく、強い冒険者の括りに入ると思う。

 本当に、なんで森で追加修行とかしてきちゃうのかな……。


 解体には時間がかかるとのことで、終わり次第受け取りに来ることに。お肉なども冷蔵保存しておいてくれるそうなので、ゆっくり取りに来ても大丈夫だって。

 もうそろそろ彼女を休ませないと心配だし、ギルドを出て宿に戻ろう。




「やれやれ……新しい仲間はなかなか癖が強そうだ」


 セレニアが疲れを滲ませた声でつぶやく。本当だよ。

 クラリッサが部屋を取っておいてくれたおかげで、すぐに休むことができた。

 ベッドに飛び込んだ彼女から寝息が聞こえてきたのはすぐだった。よほど眠かったのだろう。ここまでにあくびを何回見たか。


「感動の再会とかでは全然なかったなぁ……」

「まあ一年半くらいですし。それで、ギルドはどうでした?」


 ギルドであったことをクラリッサに話す。ロック鳥などの大型魔物数体の話を聞き、はあ、と大きな溜息を吐いたクラリッサ。


「なんというか……予想以上というか、すごいですね」

「うん……ホントにね……」


 これから大丈夫かな……いや、私たちだって今までたくさん戦い続けてきたんだから弱くはない。きっとわたしたちは強いパーティになる。


「この子、夜までに起きるかな」

「難しいな。明日には向こうに行かないといけないんだが……」


 すやすやと眠る彼女を見る。可愛らしい見た目が今じゃ血だらけだ。久しぶりの再会には刺激が強すぎる。

 今はアシュミードに滞在しているけど、これは今日までだ。明日は北の『魔物の海』に向かわないといけない。朝に起きてくれれば十分間に合うけど。

 三日街で休み、一週間向こうでキャンプを張り、交代制で討伐に当たる。瘴気のせいで長時間『海』の近くに留まることができないため、このようなやり方をするしかないとギルド側からの指示だった。

 今日リアに会えていなければ一週間再会が先延ばしに……なってないな。たぶん、この子なら『海』まで来ていたと思う。


「朝には起きるだろう。そのときに現状の説明をして『海』に向かう。準備をしておけ」


 四人で戦うのは久しぶりだ。前衛で頑張ってくれるなら、わたしの負担も減るはず。減るといいな。

 今日はもうゆっくり過ごして、明日からの毎日に備えよう。早く活性化が終わってほしい。


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