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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第4章 中央大陸・魔物の海編
82/212

第81話 心配<エルシーナ視点>

エルシーナ視点です

 アシュミードの冒険者ギルドで、ギルド内を見渡す。

 お目当ての人物は、まだここには来ていない。


「いつ来るかなあ」

「ガリナからここまで一月半以上かかるからな、まだ先かもしれん」


 リアからの手紙にもうすぐ旅に出ると書いてあった。入れ違いにならないように、たまにこうして冒険者ギルドを覗きに来ている。

 予定よりもだいぶ早いけど、彼女がそう決めたのなら反対することはない。わたしたちはここで待っていればいい。どれくらい成長したんだろう。早く会いたいな。


「ランクはDになったそうですね。一緒にここで戦ってくれるでしょうか」

「仲間になりに来るんだから戦ってくれるんじゃないかな」


 冒険者なら中央大陸に上陸は可能だし、ここで何が起きているかも知れるだろう。

 少なくとも戦うのが怖くて来ないなんて、そんな子ではないことは確かだ。


「でも最近魔物が手ごわくなってきた気がする」

「確かに、他の冒険者もそう感じている者がいるみたいですね」


 最初に来た頃は別にそこまででもなかった。でも最近は少しずつ強い魔物が混ざってきている。

 おかげで今までは下位冒険者も参戦できていたのに、今後はそれも怪しくなってくるかもしれない。これ以上仕事が増えるのはやめてほしい。


「これ以上きつくなる前に来てくれないかな……」

「そうだといいですねえ」


 そんな会話をギルドの隅でしていると、入口のドアが開く。

 少し期待してそちらを見るが、男性三人組の冒険者だった。そのあとから六人の男女混合冒険者が入って来た。あまり見ない顔だ。

 さすがに一年もここに居れば、多少見覚えがある顔かどうかくらい覚えてしまう。あの二パーティは見たことがないと思う。

 聞き耳を立てていると、彼らの声が聞こえてくる。

 依頼、護衛、船……もしかして船に乗って来た新しい冒険者かな。戦力が増えるのは喜ばしいけど、新人は死亡率も高いからなぁ。


「船で来た冒険者かな」

「そうみたいだな。そろそろ出るか。今日はもう宿に戻るぞ」


 もうすぐ夕方だ。今日はもう来ないだろう。

 セレニアに促され、ギルドを後にしようと入口に向かった。



「リアの嬢ちゃんはもうこっちに来てんのかなー」



 バッとすごい勢いでそちらを見てしまった。




 今リアって言った? もしかして? あの子のこと?


「落ち着けエルシーナ。そうと決まったわけじゃないだろう」

「そ、そうだけど」


 同じ名前の人なんて珍しくもないけど、気にしていた名前だったから過剰反応してしまった。でも、気になる。もう少し会話を聞いてみる。


「もう着いてるだろう。強い子だった」

「あんな子供が普通に向かってきた俺らより早く着くことってあるのか?」

「港で別れたとき、肩慣らしと言っていた。直前にアシュミードまでの最短距離も聞いていたが……まさかな」



 港からここまでの最短距離……確か森と川があったと思うけど、まさかそこを一人で通ってくる?



「どう思う?」

「……気になりますねえ。その子の特徴でも聞いてみたらどうですか?」


 あの人たちに、とクラリッサから言われる。ここまで気になるのだ。いっそ聞いてしまった方が早い。声をかけよう。


「ちょっといい?」

「え、な、なんでしょう」


 男たちに話しかける。話しかけると勘違いするやつが出てくるけど、この人たちは大丈夫そう。わたしの表情が真剣なのもあるけど。


「そのリアって子のことを教えてほしいの」

「……もしかしてここで待ってる仲間ってのはあんたらか」

「その子が可愛い女の子で、東の大陸から来たならそうかも」


 それからアーロンとかいう男から、リアという子の特徴を教えてもらった。身体的特徴からして間違いなくあの子だ。

 それから船での出来事や、港での会話も教えてもらった。




「中央大陸には着いているんだな」

「焦らせすぎましたかね」


 セレニアとクラリッサの感想に同意する。彼女はもう中央大陸に着いているけど、実力に不安があって一人で森へ向かった可能性があると。無茶すぎるでしょう!


「リアの嬢ちゃんって結構強いと思うんだけどなー」

「手合わせだって何度も負けた。勝てた数の方が少ないくらいだ」


 船の中でリアは彼らと手合わせをしていたらしい。なかなかの腕前だったと言っているけど、それでは納得できなかったのだろうか。

 そこでクラリッサが何かに気が付いたようにつぶやく。


「もしかしてワタシたち、ものすごく期待されているのではないでしょうか」

「一年以上ここで戦い続けているあんたらはすごく強い、と疑ってなかったな」

「どうしよう、失望されそう」


 そんなに大した魔物じゃなかったんだよ……最近はそうでもないけど。

 ジャイアントベアーが十匹目の前にいたってどうとでもなるでしょう。ただ単に数が多いってだけで、その程度の魔物ばっかりだったのに……。

 それで強くなったかといえば、変わっていないランクを見ればわかるでしょう。Cランクならこれくらい余裕と思われてる。事実そうなのよね。


「とりあえず、だ。これからどうするか」

「どうしましょう。迎えに行きますか? 入れ違いになりそうですが」

「彼女が無事ならな」

「怖いこと言わないでよ」


 ああもう、どうしよう。彼女は無事だろうか。ただでさえ魔物が増えている森に一人で向かうなんて。しかももう港に着いてから十一日も経っているらしい。


「でも、もう日が暮れてきています。今から向かっては夜になってしまいますよ」

「じゃあ行かないってこと?」

「今日は、行くのはよそう。明日になっても姿が見えなければ探しに行く。それでいいな」

「うん……」


 セレニアに諭されるように言われて渋々頷く。

 心配だなぁ。修行なんてしに行かなくていいから、早く会いに来てくれればいいのに。

 頑張っているあの子に失礼かもしれないけど、無事に会える方が嬉しいよ。早く会いたいな。



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― 新着の感想 ―
[一言] うずうずしてるエルシーナさん可愛いなぁ…。 この3人の信頼しあってる感じもすごく好き。
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