表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第4章 中央大陸・魔物の海編
76/212

第75話 港へ

 

 ガリナを出て走る。脚の強化魔法を使って走る。


 港までの間にガリナやセディフのような大きな街はない。小さめの町がいくつかある程度だ。

 さすがに港までぶっ続けで走るのは無理なので、途中の町で宿を取りきっちり休む。それを繰り返して港まで走る。

 その途中の町にも冒険者ギルドはある。町に立ち寄ったら覗いているが、これといって面白そうな依頼もない。

 この辺りの魔物は王都の北にある『魔物の沼』と大して変わらないようだ。それならわざわざ受ける必要もない。


 それにあの三人に早く会いたい気分なので、早々に港に向かうことにした。親との別れが意外と寂しかったのかもしれない。

 そんなわけでガリナを出て数日、ようやく港に到着した。



「結構大きい」


 さすが大陸の玄関口。大きな港に大きな船が見える。そこに行くまでには普通の港町が広がっている。


「魚のにおいがする」


 生臭い魚のにおいもするけど、焼き魚のにおいもする。

 魚料理は内陸に行くほど高くなるので、あんまり食べられないのだ。しかしここは港。魚料理がたくさんある!


「串にさした焼き魚……食べよう」


 ふらふらとにおいに釣られて屋台で買い食いをする。新鮮なだけあって美味しい。他にもイカ焼きとか焼き貝とか海の幸がいっぱい。

 たくさん買い食いしながら、お店の人に船の乗り方について聞く。


「船の方に行けば乗船券販売所があるよ。そこで乗船券を買えばいい」


 ちゃんとチケット売り場があるらしい。

 お店の人にお礼を言い、お腹いっぱいになるまで食べながら売り場に向かった。

 しょうゆっぽい調味料があるみたいで、日本食っぽい味付けが懐かしくて嬉しい。塩でも美味しいけど。

 もっと前世の料理に近い物はないだろうか。たまに日本食が恋しくなる。


 いつか落ち着いた生活ができるようになったら、料理にチャレンジしてみてもいいかもしれない。




 乗船券売り場の近くまで行けば、船も近づいてくる。

 こんな大きな船は前世でも乗ったことないな。船旅ってちょっとワクワクするね。

 売り場に入る前に、船着き場の方へ歩く。


「やっぱり海は海だねー」


 今世初の海! でも前世の海と違いは感じない。潮のニオイも、船着き場に押し寄せる波も、上がる白いしぶきも変わらない。


 この世界は地球と少し環境が似ているって女神様が言っていたっけ。

 こういう場所を見ると少し安心しちゃうのは、生まれ故郷への想いってやつが消えないからだね。

 海には家族で遊びに行ったことが多いから、楽しい思い出がたくさんあるし。


 私が死んで家族はどうしただろう。役立たずが死んで清々する……なんて思う人達じゃないのはわかってる。

 変に英雄扱いされているらしいから、もしかしたらマスコミに追い掛け回されていたかもしれない。

 死んでからも迷惑かけてるなんて、親不孝もいいところだ。

 だからといって、今の私にできることなんて何にもないけど。

 私の分も、なんて、そこまで押し付けるつもりはないけど、どうか長生きしていてくれればいいなと思う。




 海を見てセンチメンタルになったけど、気を取り直して乗船券販売所に入る。

 中には人がそれなりに並んでいるようで、見るからに冒険者な装いの人達から、普通の家族連れまで多種多様だ。

 えっと、中央大陸のアシュミードって街だったかな。そこ行きの船に乗らないと。チケットが買える窓口に並んで待つこと暫し。


「どこ行きの乗船券をご希望で?」


 受付はおっさんだった。いや、別に女性じゃなきゃ嫌とかは思ってないけど。


「中央大陸のアシュミードに行きたいんだけど、そこに一番近くまで行けて速い船に乗りたい」

「悪いが今中央大陸行きの船には制限がかかっててな。一般人は乗れねぇんだ」

「一般人じゃなきゃ乗れる?」


 そう言いながらDランクの冒険者プレートを見せる。

 人の顔を二度見したおっさんだったけど、すぐに切り替えて話を続けてきた。


「嬢ちゃんは今中央大陸で何が起きてるか知ってるか?」

「知らない」


 何か冒険者が働かないといけないような事態であることは確かだろうけど。それくらいしかわかってない。


「情報規制されてるからしゃーねえか」


 そういって小声で説明してくれた。

 どうやら中央大陸で『魔物の海』が活性化していて、魔物が大量発生しているらしい。

 で、船に乗ろうとしていた依頼中じゃないCランク以上の冒険者は、軒並み中央大陸行きの船に乗せられて強制徴集されていると。

 なるほど、あの三人はCランクだもんね。巻き込まれたか。

 中央大陸行きの船には今、物資を運ぶ商人と冒険者くらいしか乗せていないそうだ。


「それでも中央大陸に行く気か?」

「行くよ。用事があるんだから」

「わかったよ」


 やれやれといった表情で乗船券を売ってくれた。

 船には大部屋と個室があるらしい。どう違うのかな。


「大部屋は大人数を一部屋に詰め込んでる。騒がしいし臭いし狭いが安い。まあ今は中央大陸行きの船に乗ろうとするやつは少ないから、普段よりはマシだと思うがな。個室は自分専用の部屋を使える。最低二人以上から利用可能だ。その分金はかかるが。一人で個室を使いたいなら料金は二倍だ」


 船にもよるらしいけど、一番間近に出航する船ならこうなるらしい。

 うーん……どうしよう。

 おおよそ半月ほどで中央大陸まで行けるらしいけど、その間ずっと見知らぬ誰かと一緒に過ごすか、一人で高いお金を払ってのんびり過ごすか……。

 個室でも払えない金額ではないけど、無駄遣いはしたくないよなぁ。


「ちなみに大部屋って何人くらい入るの?」

「大部屋自体がいくつもあるが、一部屋に二十人前後だな。」


 結構いるのね。半月くらいなら我慢できるだろうか。何事も経験だな。よし、大部屋にしてみよう。


「大部屋にするよ」

「あいよ。船は五日後に出る。乗り遅れても船は待たないからな」

「わかった」


 物資を運ぶ関係で割と頻繁に船が行き来しているそうなので、そんなに待たずに船に乗れるみたいだ。私としては助かるね。


 船が出航するまで港町の宿をとり、観光をしながら過ごす。

 一度冒険者ギルドに話を聞きに行ったところ、乗船場の受付のおっさんが言っていたことと大差なかった。

 もう二年近く『魔物の海』の活性化が続いているそうなので、Dランク以下でも実力がある冒険者には中央大陸まで行くようにお願いしているようだ。

 アシュミードは『海』から一番近い場所にある街らしい。


 向こうは物資が高くなっているので、必要な物は買っていくことを勧められた。日持ちしない食べ物は無理だけど、日用品なら買っていってもいいかな。

 あとは戦場で必要な物……やっぱり武器かな。

 魔法の適性が全属性にあるって言われたから回復の杖とかも用意しようかと思ったけど、やっぱり高いんだよね。光と闇の杖はほとんど見当たらないし。

 ここは港町だし、何か掘り出し物でもないかな。探してみよう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ