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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第3章 修行編
71/212

第71話 長き人生を幸福に

 セディフから戻ってしばらく。

 数日戦っていない状況が続いたので、『魔物の沼』の近くのいつもの修行場で戦闘中だ。旅費と旅に持っていく道具を買うための資金集めも兼ねているけど。

 そんな中、ふと試していないことがあることに気が付いた。


「腕の身体強化を使いながら、爆弾を生成したらどうなるんだろう」


 ため……試した方がいい、かな。ちょっと怖いんだけど。

 でもいつか危機的状況に陥ったときに使うかもしれない。一度だけでも試してみないと。

 左腕の防具に魔力を流しながら、腕の爆弾の魔力回路にも魔力を流す。

 すると――


「いっっっっっ!!」


 腕からピシリと嫌な音がした。

 そして爆弾は生成された。慌てて近くにいた魔物に投げる。

 パンッといつもと変わらない音と威力で魔物の顔が焼けた。その魔物にとどめを刺しながら思案する。


 女神様が言ってた、負荷をかけ過ぎない方がいいってこういうことかぁ。

 流した魔力量が少なかったおかげでジンジンとしびれる程度で済んでいるけど、これ思いっきりやったら骨が砕けるね。むしろ弾け飛ぶかもしれない。そんな気がする。


「使わない方がいいな。というか、使い道ないから使わないな」


 爆弾って結構すぐ爆発するから遠くに投げるとかもできないのよね。

 爆弾と強化の防具を同時に使う機会はないと思う。杖と強化の防具の同時使用は問題ないし、使うのはこっちだけだろう。

 爆弾を作るだけで腕が限界なんだと思えばそれだけだし。


「相変わらず恐ろしいね」


 私の身体は普通じゃないなぁ。今更だけど。

 女神様は私をどうしたいんだろう。別に何も望んでいないのかな。長き人生を幸福に生きてください、か。それだけでいいのかな。




 ――長き人生ってなんだろう




 変わった言い方だよね。まるで長く生きることが前提というか、当たり前みたいな。

 これだけ能力与えたんだから、長生きできて当然だろ? 的なことかな。

 ……そうだよね?

 でも普通なら、長生きしてくださいね、とか言いそうな気がするんだけど。

 ……?





 なんとなく、なんとなくだけど、嫌な予感がした。

 だから、一番近い場所にある神殿――王都の神殿――に向かって走り出した。





 ガリナの神殿よりも大きく、人も多いけど、気にしていられない。

 今から尋ねる内容が返答によっては大変なことになる。主に私の今後という意味で。

 女神像の前に跪いて祈る。


「(女神様、聞きたいことがあるのですが)」


 聞こえてる? 届いてるよね? 返事してくれ女神様!


『どうしましたか?』


 良かった! 返事が来た!


「(私に与えた能力の中で、話していないものはありますか? それと祝福に関しても、具体的にはどのようなものなのかお聞きしたいのですが)」


『話していないことですか? 魔力回路は頭部と、腕と、脚にだけ刻みましたよ。どれも自信作ですから、頑張って使いこなしてくださいね』


 マジでこの神様私の頭に魔力回路刻んだのか。怖すぎるでしょ。これもいつかちゃんと調べないとなぁ。

 それより女神様に自信作って言われると、不安を感じるのはなんでだろう。


 とりあえず、魔力回路は三つだけか。もうこれ以上刻む場所はないので十分ですけどね。胴体にまで刻まなくていいので。やめてくださいね。私の身体が損壊しそう。




『祝福に関しては話していませんでしたね。これは貴女を不老不死にするためのものですよ』



 ああああああああああ……。嫌な方向に予想が当たったぁぁぁぁ……。



「(死ねない、ということではない、ですよね?)」


『さすがにそこまでしてしまうと理に反してしまいますので……寿命が無くなり、老化が止まる程度のものだと思ってください』


 良かった!!! 死ねない身体になってたらどうしようかと……さすがに永遠を生きるなんて無理だからね。

 でも老化が止まって寿命も無くなる……それはそれで怖いなぁ。


『前世の貴女は早死にでしたので、ささやかな贈り物です』


「(そうですか……ありがとう、ございます……)」


 不老不死がささやかって……さすがスケールが違いますね。

 心遣いには感謝しますけどね。これ早死にしたらまた転生させられるのかな。


『免疫力も向上していますよ。でもケガには効きませんから、気を付けてくださいね』


「(気を付けます。この世界では女神様の祝福は無病息災だと思っていたのですが、違うんですかね)」


 もしかして私以外にもいるのだろうか。不老不死が。


『いいえ。貴女のだけが特別です。他の者には少し免疫力が向上する程度のものに留めています』


 ああ、祝福ってそういう効果があるのか。祝福を貰った全員が全員、健康体で長生きしたってわけじゃないもんね。

 そのせいで祝福の効果がよくわかってなかったみたいだけど。


「(そうでしたか。老化はいつごろ止まりますか?)」


『そのうち止まりますよ。数年以内ですね』


 漠然とし過ぎでは? スケールがデカイっていうか、大雑把というか。いつなのか全然予想できない。


「(そうですか……疑問が解けました。お忙しい中ありがとうございました)」


『それはよかったです。それでは長き人生を幸福に生きてくださいね』


 はぁ……。

 別れの挨拶の決まり文句かなんかかと思ってたけど、ちゃんと意味があったのね……。

 勇敢な者といい、そういうのはずるいと思う。頭の悪い私には難しいよ。

 今日はもう休もう。今は何も考えたくない。



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