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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第3章 修行編
70/212

第70話 またね

 今日はガリナに帰る日だ。

 ライラのお仕事が始まる前に別れの挨拶に向かう。結構早朝ではあるけど、ライラ家に向かうとライラとライラのご家族、それからガストンさんが待っていた。


「皆さん、お世話になりました」

「気を付けて帰るんだぞ」

「またいつでもおいで」

「また工場見学に来るといい」


 バンスさんとランさん、ガストンさんに優しく言われ、なんだか心が暖かくなる。

 ライラのご家族には何度も夕食をごちそうしてもらったし、ガストンさんには工場で貴重な見学をさせてもらった。どちらも楽しくて良い経験になったと思う。

 短い間だったけど、大層お世話になった。またいつか遊びに来たいね。


「リ、リアちゃん」


 一人一人挨拶をしていたら、ライラのお兄さんに話しかけられる。まともに話しかけてきたのは、これが初めてでは?


「なんでしょう?」

「えっと、その、あー……ま、また来てくれよ。あ、その、ライラも、喜ぶし」

「……はい。また来ますね」


 この前ライラから、お兄さんが私に惚れているかもしれない、という話を聞かされているので、なんとも複雑な気分ではある。

 まあ、知らない体で返すのが礼儀だと思うので、無難に返事をしておこう。

 ちなみにライラとそのご両親は苦笑いをしている。笑ってやるなよ、可哀想だから。


 お兄さんとも会話を終え、最後にライラと話をする。


「リア」

「んー?」

「あげる」


 そういって落ち着かない様子のライラから服を渡される。紺色のかっこいいパーカー。マウンテンパーカーっていうのに似てる気がする。

 仕事着でも持っているのかと思っていたけど、私に渡す用だったのね。


「すごい、かっこいい。ライラが作ったの?」


 ライラが大きく息を吐きだして、微笑みながら答えてくれる。


「そうだよ。前に作ったやつだけど、リアでも着れそうなやつ見つけてきた」

「嘘言え。リアちゃんのために前から作ってたやつだろ? 良かったな、褒めてもらえて」

「伯父さん!」


 なんと、ライラが前々から私のために服を作ってくれていたらしい。なにそれ嬉しい。

 もしかしてあの時サイズを測ったのはこれの為なのか。


「ライラからの愛を感じる……」

「違うから! ちょっとその……その人に合う服っていうのを想像しながら作ってただけで、深い意味はないから!」


 これはツンデレか。ライラはツンデレだったのか。可愛いな!


「言い値で買おう」

「いらないよ! それよりも服の素材になるものにしてよ」

「了解。良い物を探しておきましょう」


 こうなったら、ビックリするようなすごい素材を探してやろう。見つかるといいな。

 昔父が暮れたコートは結局小さくなってしまったので、今は着ていない。せっかくだからこれを着てみよう。


「サイズは良さそうだね」

「うん。すごい。いいね」


 フードが付いているし、前もボタン付きで閉まるし、ポケットも付いてる。素材は柔らかくて動きやすいものみたいだ。これなら動き回っても動きに支障は出ないな。

 お尻まで隠れるし、なかなか保温性もありそう。


「いい素材使ってるからね。寒さには強いと思うよ。ある程度なら濡れても平気」

「最高だね」


 旅に着ていくには最適だろう。暑い場所では使わないだろうけど、寒い時期にはちょうどいい。

 でもボロボロにしたら嫌だから、戦闘するときは着ないでおこう。


「これ何か刻んであるの?」


 魔道具士であるライラが作った魔道服に、何も刻まれていないということもないだろう。何も刻まれてなくても着るけど。


「大したものじゃないけどね。なるべく頑丈になるようにしてあるから、魔力流して使ってね」

「ちゃんと俺が監修したからキチンと作動するぞ」


 ガストンさんがそういうなら、きっとしっかりとした魔道服になっているのだろう。ライラは本当に才能があるね。

 防具の代わりになるかはわかんないけど、普段使う分には十分私を守ってくれそうだ。


 魔道服は魔道具の一種なので、魔石をセットして使うものと、魔石を使わずに魔力を流して使うタイプがある。

 魔石無しで、魔力を流して使うタイプは、私の腕の防具がそうだ。


 魔道具は『魔石を使う』か『空っぽの魔石に自分で魔力を溜めて使う』か『魔力を流し続けて使う』かのどれかになる。一番目と二番目は似ているが少し違う。まあその辺りは今はいいだろう。


 こんな素晴らしい物をくれるなんて、ライラは本当に優しいね。自慢の親友だ。


「ありがとう。大事にするね」


 私の言葉に、ライラは頷きながら微笑みを浮かべる。


「どういたしまして。気を付けてね。行ってらっしゃい」

「行ってきます」


 ライラからの「行ってらっしゃい」は、なんだか嬉しくて寂しくて変な感じ。

 またいつか会えるといいな。ううん。いつか必ず会いにこよう。またね、ライラ。


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