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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第3章 修行編
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第68話 夕食

「ただいま」

「腹減ったー」


 玄関の方から男性二人の声がした。もしかして父親とお兄さんかな。

 すぐに中年男性と、その男性になんとなく似ている若い男性が、私たちがいる部屋まで入ってきた。


「おかえり」

「お邪魔してます」


 座りながら会釈をして挨拶をする。私の姿を見て二人がびっくりしている。


「え!?」

「ああ、もしかしてリアちゃんかな」

「はい。リアと申します。ライラさんには大変お世話になっております」


 お兄さんはめっちゃ驚いてるけど、父親はすぐに私が誰か思い至ったようだ。

 なんだか、私が招待されることを誰も知らなかったような反応なんだけど。もしかして今回のことランさんが勝手に決めたのかしら。


「お父さん、マックス。おかえり。もう夕食よ」


 キッチンからランさんが料理を持ってやって来る。なんかすごい豪勢な食事に見えるんだけど。すごいな。


「今日はリアちゃんがいるから豪華よ~」


 こんなに良くしてもらっちゃっていいのかな? 手ぶらで来ちゃったし。今度お礼の品を持ってこよう。



 全員で席に座り、ランさんお手製の夕食をいただく。

 特に作法とかもなさそうなので、一番手が込んでいそうな料理から食べてみる。

 サラダとか食べて美味しいって言われるより、作るのが大変そうな煮込み料理などを食べて美味しいって言った方が喜ばれる気がするので。


「美味しいです」

「よかった~。いっぱいあるからたくさん食べてね」


 うん、お世辞じゃなくとっても美味しい。見た目も綺麗、味も美味しいとは素晴らしいね。これならいくらでも食べられそう。


「母さんの料理は美味いからな~。ライラも覚えておいた方がいいぞ」

「そのうちね」


 父親のバンスさんが誇らしげに言い、そのままライラに飛び火した。覚えていて損はないだろうけど、今は料理よりも魔道具作りの方を覚えたいんじゃないかな。


「結婚するとき困るだろう?」

「あと五年はしないから」

「行き遅れちまうぞ」

「いいの」


 なんというか、我が家の父とは正反対だな。

 我が家のお父さんは、私に好きな人ができたかもしれないって話が出ただけで、膝から崩れ落ちるような人だし。溺愛にも程があるよ。


「そんなことより、リアちゃん。学校でのライラはどんな様子だったか教えて? この子ったらリアちゃんの話ばっかりで、自分のことはあんまり話してくれないのよ~」

「ちょっとお母さん!」


 ああ、あるあるですね。学校のお友達が遊びに来た時に、我が子が学校でどんな様子なのか聞きたがる感じ。

 と、言ってももう卒業して一年経っちゃったんだけどね。

 むしろ「私の話ばっかり」の方が気になるんだけど。


「そうですねー……」

「ちょっと、変な話しないでよ!?」

「大丈夫だいじょーぶ」


 ライラのエピソードか。何があったかな。





 思い出話に花が咲いていた楽しい夕食も、そろそろ終わりだ。

「いっぱいあるからたくさん食べてね」がまさか誇張のない事実だったとは。腹がはちきれそうだ。


「お腹いっぱいです」

「本当にいっぱい食べてくれて嬉しいわ~」


 ニコニコしているランさんを見ると、ライラとはあんまり似ていない気もする。ライラはもっとこう、淡泊な感じ。いつもニコニコはしていないと思う。

 でも優しいところは似ている。仲の良い家族だね。お兄さんはあんまり喋らなかったから、人見知りなのかもしれないけど。



 しばらく食休みをしてから、そろそろお暇することに。

 全員が玄関まで見送りに来てくれた。


「本当に泊まっていかなくていいの?」

「宿があるので」


 ランさんに心配そうに聞かれるけど、すでに宿代は支払い済みだ。

 それに、さすがにお泊りは図々しいかなって思うし。


「気を付けて帰るんだよ」

「またね」

「うん、ありがとうございました」


 別れを告げて、ライラ家を離れ、何事もなく宿まで帰る。

 お風呂も済ませてあとは寝るだけ。明日は何をしよう。


「何かお礼を考えないとね」


 といっても、私が用意できるものなんてたかが知れているよね。

 高級食材とかその辺り、蛇とか豚とかであれば用意は可能だ。蛇は調理が難しいかな。豚にするか。明日獲ってこよう。




「そんなわけで獲ってきた」

「う~~~~~ん……ありがとう」


 半日探し回り、ようやく豚を狩ってセディフに帰ってきた。

 保存用の入れ物に解体した肉と氷を用意して、工場から帰宅しようとしていたライラのところに渡しに来たんだけど、そんなに嬉しくなさそう?


「……いや?」

「そんなことないけど、なんというか……リアらしいね」


 私が抱えている箱を見ながら苦笑いしているライラ。私が用意できるものなんてこれくらいだもの。仕方ないのさ。

 持ち上げようとしていたライラだったけど、重すぎて大変そうだったので、結局ライラ家まで一緒に行くことに。


 ライラ家でランさんにお肉を渡したら嬉しそうにお礼を言われ、帰ろうとしていた私を捕まえて一緒に夕食を食べていくことに。

 まだバンスさんとお兄さんは帰ってきていないけど、一足先にいただいた。

 お礼として渡したお肉が、料理となって私の腹の中に消えていくのは良いのだろうか。一応多めに持ってきたから量は大丈夫だろうけど。食材じゃない方が良かったかな?


 ランさんは料理がお好きらしいので、これで十分すぎるお礼だとライラに言われた。喜んでもらえたのならいっか。


今年最後の投稿かもしれません。

皆さん良いお年を。

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