第66話 工場見学
次の日の午後、ライラのいる工場へと見学に訪れた。
「こんにちはー」
「お、リアちゃん。いらっしゃい」
入り口で声をかけると、ガストンさんが出迎えてくれる。
短髪と薄汚れた作業着、働く大人って感じがしますね。
「工場見学してもいいんですか?」
「構わない。ああでも、中のものにはあまり触らないようにしてくれ。危ないものも置いてあるから」
「わかりました。ありがとうございます」
注意事項を聞き、中へと案内される。
工場の中は結構広く、作業台らしき机や工具、よくわからない大きな作業用機器などがたくさん置いてある。
作業台があるってことは、やっぱり手作業で魔道具を作るのかな。
「魔道具は基本的手作り。あの辺の機器は魔道具の耐久性を測るのに使ったり、洗浄したりするものだ」
はー。やっぱり手作業で作るんだね。流石に自動化は無理か。
魔力回路を刻むのって細かい作業だし、機械があったとしても難しいかもね。
魔道具の自動作成……出来たら高値で売れそう。
「リア。ホントに来たんだ」
「来ました。頑張ってね」
ライラが作業着姿で現れる。
昨日は恥ずかしそうにしていたし、今も少し恥ずかしいみたいだけど、ガストンさんがいるからか、気合いを入れ直して作業台へと向かって行った。
「どんなものを作っているんですか?」
この工場ではどんな魔道具を作っているんだろう。ガストンさんに尋ねてみる。
「主に家庭用の魔道具だな。灯りや暖房器具などのよく使われるものや、魔道服なんかも作っているよ」
結構手広くやっているらしい。
ちなみにライラは魔道服を作っている。
学校に通っている時、王都で買い物に出かけた際に魔道服もいいなって思って、それからは魔道服作り一辺倒らしい。
確か王都でそんな話をした気がする。卒業課題も魔道服を作っていたし。
もちろん仕事なので、今はまだそれ以外も一応作っているらしいけど。
「ライラが作った服を見てみるか?」
「良いんですか? 是非見たいです」
「ちょちょちょ、わたしの許可は!?」
「仕事してろ」
私とガストンさんの会話が聞こえていたらしいライラが、慌てて止めに来る。
でもガストンさんに仕事しろと言われてしまえば、大人しく仕事に戻るしかない。
ちょっと恨めしそうに見られていたけど、是非ライラの作品を見てみたいので諦めてもらおう。
工場の更に奥に行くと別室があり、そこに入るとたくさんの魔道具と魔道服が並んでいた。
どうやらここは保管庫になっているようだ。どれもよく街中の魔道具店で見かける魔道具で、それがズラリと保管されている。うーん、これ全部手作業なんだねぇ。すごいねぇ。
その保管庫の一画に、魔道服が並んでいる。これもたくさんあるけど、どれがライラのだろう。
「確か……ああ、この辺だな」
吊り下がっている魔道服には製作者のタグのようなものがつけられているようで、それを確認したガストンさんに、ライラの作品を見せてもらう。
「おー」
一般人が良く着ているワンピース系の服から、防寒性の高そうな仕事着まで様々な物が置いてある。これをライラが作ったんだね。
なかなか実用性と可愛らしさが合わさった素敵な作品だと思う。
こういうのはセンスが必要よね。私にはファッションセンスというものが全然ないので純粋に尊敬する。
「これっていつか売られるものなんですか?」
結構おしゃれで良いと思う。せっかくここまで来たんだし、一着くらい購入できないかな。
「いや、まだまだ売り物にはならない。見た目は良いかもしれないが、魔道服としては売りには出せん」
「そうなんですか」
どうやら魔道服としては売りに出せる作品じゃないらしい。見た感じは良さそうだけど、機能性の部分でダメなのかね。厳しいね。
「ライラには才能がある。今はまだ売り物にはできないが、すぐに見た目と実用性両方に長けた魔道服を作るだろう。学校に行ったのは正解だったな」
「べた褒めですねぇ」
身内びいきもあるかもしれないけど、それでもライラに才能があるのは確かだ。
学校でも頑張っていたもの。きっとすぐに大成するさ。
「ライラには内緒にしてくれ。浮かれて仕事に身が入らなくなっては困る」
「大丈夫だと思いますけど、わかりました」
ライラならそんなことないとは思うけど、苦笑いでお願いされたので、了承しておいた。
話したら面白いかもしれないけど、内緒にしてよう。私の口から私の言葉でべた褒めするのはオッケーでしょ?
いつかライラの作った魔道服を着てみたいな。




