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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第3章 修行編
65/212

第65話 一年

「へぇー。旅に出るんだ」


 次の日、ライラにセディフを案内してもらい、人気の食事処で昼食を食べながら近状報告だ。


「そう。その前にライラに会っとこうかなーって思って」

「来るなら言ってくれればいいのに。急なんだから」


 この世界の連絡手段って手紙しかないからなあ。手紙送って返事を待って……ってするより、来ちゃった方が早いんだもの。


「一人で行くの?」

「別の大陸に仲間がいるから、そこまでは一人かもしれない」

「仲間?」

「王都で会ったでしょ、エルフ三人」

「ああ!」


 あの美人さんたちねーと言いながら食事をパクリ。私も食べる。人気処とあってなかなか美味しい料理だと思う。


「良かったねー。美人さんと旅なんて」

「ドキドキしてるよ」

「仲間内恋愛してギクシャクしないように……相手にされてないんだっけ?」

「まるで振られたみたいな言い方やめて」


 まだ! 何も! 始まってないよ! いやそんなつもりはないけども!

 年の差があり過ぎて子供扱いから抜け出せる日は……無さそうだし。いいんだ、恋人になんてならなくて。


「いいのもう。お友達になれただけで十分だから」

「またそんなこと言って。子供みたいに意地を張るんだから」

「失敬な」


 我儘な子供を見る目で私を見ないで。

 ライラとは一つしか違わないし、精神年齢は私の方が上だよ。

 自分が子供っぽい自覚はあるけど。


「もう諦めたからいいの」


 私の中で、別れ際のエルシーナの行動は親愛行動の一種だと理解したから。きっと友人相手になら全員にやっている行動であって、特別な意味なんて無いんだと思うの。

 前世でだって女子同士で別れ際に抱き合ったりしたし、そんな感じでしょう。手を握られるくらい普通だ。

 私が恋をしたところで、誰も幸せにはできないだろうから、恋人なんて作らないのだ。


「旅をしていれば、何かしら進展もあるよ」

「そうかもね」


 私とエルシーナの仲が、とは限らないけどね。

 私に進展させる気がないんだもの。エルシーナが私以外の誰かと幸せになる、そんな覚悟でも決めておこう。自分で言ってて凹むという謎。


「後悔はしないようにね」

「気を付けるよ」


 私の幸福を願ってくれているライラには悪いけど、上手くいくとは思えないんだよね。

 近くにいない状態で色々考えてもどうしようもないか。会いに行けば何か変わるかね。

 会いに行ったら恋人がすでにいた……とかになってたらどうしよう。心へのダメージが大きすぎるかもしれない。


 やめよう、自分で自分にダメージ負わせてるわ。妄想で。


「ライラは結婚は?」

「今のところそういう話はないかな」


 ライラはもう世間的には成人だ。結婚の話の一つや二つ、来ているかと思っていたけど、さすがにまだだったか。


「好きな人もいないんだ」

「そうだねー。まだあと五年くらいはいいかな。まだ働き始めたばっかりだし」


 確かに、学校を卒業して一年、働き始めて一年しか経ってないのに、結婚は早すぎるね。まだまだこれから色々やりたいことができてくるときだろうし。


「まあ、結婚以外にも道はあるんだし、好きに生きればいいと思うよ」

「そうだね、リアも好きに生きていきなよ」

「好きに生きてるよ。旅にも出るし」


 これ以上ないくらい好きに生きてると思うよ私。むしろ自由過ぎるんじゃないかと心配している。周りに迷惑かけてそう。


「恋愛面でもね」

「んんんんん……善処します」


 蒸し返さないでくれ……。

 でも、いつかライラにも良い報告ができる日が来ればいいなとは、思ってるよ。



「落ち着いたら手紙送るね」

「旅先に手紙って送れるのかな?」


 長期滞在できれば大丈夫だろうけど、突然夜逃げみたいにいなくなったりしないとも限らない。いや、犯罪者になる予定はないけど。


「どこか長期滞在する場所ができたら手紙送るよ」

「待ってる。わたしはセディフから出る予定ないし」

「魔道具士として頑張ってるんだよね。どんな感じ?」

「そうだねぇ」


 一年ぶりの親友との再会。一年は短いようで長い。私たちの会話は尽きることなく続いていく。楽しい。最近こういう時間は減っていたから、なんだか癒される。


 その日はずっとライラと遊んだ。日が暮れるまで話し込んでも足らないくらいだった。

 明日は、ライラは工場でお仕事だけど、ガストンさんが工場見学に来てもいいって言ってたと告げられる。

 いいね、ライラの仕事姿も見られるし、魔道具を作っているところを見られるかもしれない。

 ライラ的には恥ずかしいので来ないでほしいみたいだけど、是非見に行かせてもらおう。


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