第64話 ちょっと寄り道
「一旦セディフに行ってくる」
「セディフ? 港とは反対方向だったと思うけど」
家族で朝食を取りながらこれからの予定を話す。母が当然の疑問を投げかけてきた。
あれから数日、すぐに出発……ということはなく、いろいろやっておきたい準備がある。なので、まだガリナでのんびりと過ごしていた。
セディフは王都を挟んで東にある。なので、西にある港を目指すと、まず行かない場所なのだ。
でも、あそこには。
「ライラっていう、学校時代の友達が住んでるの。ちょっと会いに行こうかなって」
そう、セディフにはライラがいるのだ。独り立ちしたら会いに行くと言った覚えがあるので、一度顔を見に行ってみようかなと。
「そうか。旅に出たら会う機会も無くなってしまうしね。いいんじゃないかな」
「うん。数日滞在するだろうけど、ちゃんとガリナに戻ってくるよ」
セディフから港に行くにはガリナを通る必要がある。わざわざ避けて旅に出る必要はない。普通に遊びに行くだけだ。
「元気かな」
たまに手紙は届いていたので、元気だとは思うけど。久々に会いたいな。
そんなわけで、セディフまで走った。
馬車じゃない。走った。身体強化を使って走ってみた。途中王都で休んだけど、王都まで一日かからないからね。
修行に行く際に一度走ってみたら案外早く着いたので、それからはもうずっとこれだ。もう慣れたし、疲れるけど時短になるのは良い。
「綺麗な街」
セディフはガリナとそう変わらない規模の街だ。人も多いし街も大きい、でも結構綺麗な印象を受ける。治安がいいんだろう、清潔感を感じる。
別にガリナが汚いとか治安が悪いとかそういうことではないけど。
「んー、どこだったかな……」
ライラに聞いた工場の場所を探す。全然わからん。広い街だから迷子になりそう。
路地に入ったら更に迷いそうなので、大通りを歩いているけど、こんな通りに工場があるわけないよね。
「これ今日中に見つかるかな……先に宿でも取ろうかな」
そういや宿の場所を聞かなかったな。門番に聞けばよかった。
遊びに来ているだけとはいえ、行き当たりばったり過ぎる。
「お」
そのまましばらく観光しながら歩いていると、冒険者ギルドを見つけた。せっかくだから覗いて行こう。あそこで聞けば宿くらい教えてくれるかな。
中に入ると閑散としていた。時間が時間だし、仕方ないかな。
依頼書を見ようかと思ったけど、宿とライラを探すのが先だな。
「すいませーん」
「はい、なんでしょうか」
暇そうな受付嬢に話しかけて、宿の場所を聞いてみる。
親切にも安全そうな宿を三つほど教えてくれた。値段も違うみたいなので、あとは実際に見に行くか。
「あと、この工場の場所ってわかりますか?」
ついでに工場の場所も聞いてみる。
さすがにわからないみたいだけど、代わりに魔道具ギルドの場所を教えてもらった。おそらくそっちに聞けばわかるんじゃないかとのこと。
魔道具を作る工場だからね。確かに把握しているかもしれないし、行ってみよう。
受付嬢にお礼を言って外に出て、早速向かった。
冒険者ギルド、魔道具ギルドと、だいぶん遠回りした気がするけど、ようやくライラのいる工場にたどり着いた。
「すいませーん」
開けっ放しになっている工場の入口から声をかける。さすがに勝手に中に入るのは気が引ける。
すると中から誰かが出てきた。
「はーい、何か……リア!?」
「ライラだー」
なんと出てきたのがライラだった。
およそ一年ぶりの再会だ。ライラは確か私の一つ年上だったから、今は十五歳かな。
一年くらいじゃそんなに変わらないかと思ったけど、薄汚れた作業服も相まって大人っぽくなった気がする。
「ライラが大人になっちゃった……」
「言い方があるでしょ! もう、何しに来たの」
「え? ライラに会いに来たけど」
それ以外でここに来る理由ある? って言ったら何故か深く溜息を吐かれた。人の顔を見て溜息を吐かないでほしい。
「そういうとこだよ……」
「なにが?」
「相変わらずだね」とか言われた。どういうことなの。
「とりあえず、今は仕事中だからまた今度時間取るよ」
「そうだね。しばらく滞在予定だからいつでもいいよ」
どこで会うとかいつなら時間取れるとか相談していたら、工場の中から男の人が出てきた。
「ライラ! いつまでかかって……知り合いか?」
「伯父さん」
おじさん……そういえば親族かなんかの工場って手紙に書いてあったな。この人がそうか。
「初めまして、リアと申します。ライラさんとは学校時代の友人です」
「おお、君がそうか。ガストンだ」
ガストンさんね。私のことを知ってるのかな?
ライラが話したのかな。私もライラの話を両親にしたし、それくらい普通か。
「ライラから仲のいい友達だと聞いている。姪が世話になったな」
「いえ、こちらこそライラさんには大変お世話に……? お世話になりました」
「どうしてちょっと詰まったの」
お世話したでしょ! ってライラに怒られる。そういえば朝寝坊したときに起こしてもらったりした気がする。ケガしたときとかも……うん、大変お世話になりました。
恋愛イベントの時は完全にモブになってギャラリーの一員だったけど。
「今日はライラに会いに来たのか?」
「そうです」
「……一人でか?」
「そうですけど」
何故か目を丸くするガストンさん。そんなに冒険者に見えないのかな。修行の成果は身体に出ていないらしい。
リアは一応冒険者だから……ってライラがガストンさんに説明してる。一応とは。
半信半疑なガストンさんだったけど、とりあえずその話題は横に置いておくことにしたようだ。
今日はライラも忙しいから時間は取れないけど、明日はお休みだから一日空いてるって、ガストンさんに言われる。
ライラが口をぽかんと開けているのを見るに、別に明日は休日の予定ではなかったんじゃないだろうか。悪いことしたかしら。
まあ、私が口を出しても仕方がない。また明日ここに来るってことで一旦お別れ。
これ以上お仕事の邪魔するのも申し訳ないからね。
冒険者ギルドで聞いた宿を探して、一番綺麗そうな場所に泊まる。お金は修行のおかげでたんまりあるから心配なし。
明日はライラに街の案内でもしてもらおうかな。
着々と評価やブクマが増えてきていてとっても嬉しいです。
今後ともよろしくお願いします。




