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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第3章 修行編
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第62話 母と洗濯機と

 

 最近なんと、ガリナにコインランドリーができた。正しくは『洗濯屋』だけど。

 魔道具店に洗濯機が置かれているのは見たことがあったが、ついに大型洗濯機の実用化がされたようだ。

 私の作った魔道具としての洗濯機が、どのような進化を遂げたのか気になる。


「そんなわけで、行ってみたいと思うの」

「いいわね。リアが作ったものが利用されているっていうのは誇らしいもの。私も見に行きたいわ」


 母に汚れた洗濯物をコインランドリー――洗濯屋――に持っていきたいと言ってみたところ、母も行きたいとのことで、後日一緒に行ってみることに。

 そして母は、この日のために数日分洗濯物を溜め込んだとか言っていた。わざわざそこまでしなくてもいいのに、おかげで着る服が無くなった。

 服をもう少し買った方がいいとわかったので、今度買いに行こうと思う。



 自宅からはそんなに近くないので、普段はおそらく利用しないだろうな。

 辿り着いた建物は出来立てほやほやの新しくて綺麗なお店だ。

 前世みたいにガラス張りの壁とかではないけど、中に入ると数台の大型洗濯機が設置されている。

 すでに誰かが使っているようで、何台か稼働しているのがわかる。


「おおー。家庭用より全然おっきい」

「すごいわねぇ」


 二人してはしゃぎながら、店内を見回す。

 業務用の現物を見たのは初めてだ。家庭用よりも多機能になっていると思うけど、具体的にどんなものが付いたのかはわからない。

 さすがに原案を作ったからと言って、何でもかんでも教えてはもらえない。


 空いている洗濯機に近寄り早速使ってみることに。

 前世のような無人の店ではなく、お店の人が在中しているので、その人にお金を支払うようだ。

 お金を支払い、洗濯機に洗濯物を放り込む。設定は店員さんが、こちらが望む通りにやってくれるらしい。


「あ、回ってる」

「水がこぼれるから蓋開けない方がいいんじゃないかな」


 母が回転を始めた洗濯機の蓋を外して中を覗く。前世の洗濯機みたいに高性能じゃないんだから、変なことしない方がいいんじゃないかと思う。

 まあ蓋が外れても中身が溢れないようには作ったはずだけど。


「それにしても便利ねぇ。この間に買い物に行ってきてもいいんでしょ?」


 一応店員さんが見ててくれるそうなので、ここから離れてもいいらしいけど。どうなんでしょうね、安全性とか。

 日本に比べたらやっぱり、こっちの世界の方が治安悪いしね。




 その後、母と二人で洗濯屋を出て買い物に向かう。

 こうやって二人で出かけるのは随分と久しぶりな気がする。最近は修行修行で……自分のことしか頭になかったな。


 服屋に行って、普段着を二人で見る。そしたら店員さんに「姉妹ですか?」って言われた。

 顔がソックリなのは自覚あるけど、姉妹とは……。

 私が老けて見えるというより、母が若々し過ぎるんだと思うけど、私からすると何か複雑だ。

 母は嬉しそうだったけど。


 あと偶に男性から声をかけられる。所謂ナンパだ。

 普段も嫌だけど、母と一緒にいるときというのはもっと嫌だね。

 さっきの店員さんが言ってたように、私たちは周囲からは姉妹に見えているんだろうか。

 親子ですって言うと引き下がってくれるから面倒なことにはなっていない。


「ふふ、この歳にもなってナンパなんてねぇ」


 何故か少し嬉しそうな母。

 お母さんいくつだっけ? 三十代か四十代か、わかんないけど、それなりだよね。

 何でこんなに若々しいのかしら。


「お母さん見た目が若いからねぇ」

「一言余計よ」


 若いって言ったのにちょっと怒られる。笑っているから雰囲気は和やかだけど。

 母と一緒にいるのは楽しいなぁ。



 そろそろ洗濯も終わっている時間なので、洗濯屋へと戻る。


「洗いをやってくれるのも楽だけど、この絞ってくれてるのがいいのよね~」


 母が嬉しそうに洗濯物を取り出している。

 そう、洗濯機には絞りの機能も付いている。家庭用にも同様だ。

 ついていないタイプも売られているけど、便利さでは圧倒的に絞り機能付きの方なので、こちらの方が売れていると魔道具屋さんで聞いた。

 大きな服を絞るのがなかなか大変なのは知っていたので、この機能は絶対につけたかったのだ。

 そのせいで洗濯時間が長くなるのだけど、それはもうしょうがない。洗濯中はほったらかしにしていていいのだから、別に困ることでもないだろう。


「手洗いの方が落ちるのは仕方ないね」

「そうね。でも十分綺麗になっていると思うわよ?」


 水を含んで重たくなった洗濯物を二人で分けながら持ち、家まで帰る。

 重たいけど、ニコニコしながら軽い足取りで歩く母を見ると、魔道袋に入れる気にはならなかった。母が私の作った魔道具で楽ができていると思うと嬉しい。

 穏やかで平和な時間だ。旅に出ると決めたのは自分だけど、母とこうして過ごす時間もそう多くはないと思うと、やっぱり少し寂しいな。


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