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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第3章 修行編
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第61話 Dランク昇格へ

 さて、Dランクへの昇格試験開始だ。


 初手から突っ込ませてもらおう。

 脚に魔力を通し、勢いよく踏み込んで相手に肉薄する。

 この脚にも慣れた。前に見たエルシーナ並みの速さが今の私にもあるだろうか。あれくらいまでいけていると思うんだけど。


「うお!?」


 この速さは予想外だったようだが、すぐに対処しようとするところはさすが元Cランクだ。そのまま大剣が振られる。

 それを緩急をつけて難なく避ける。試しにあの硬そうな鎧と同じ色をした腕の防具を斬りつけてみようか。

 適度に力を込め、勢いよく振り下ろす。


 ガキィン


 硬い金属音がした。どうやら真っ二つとはいかなかったようだ。傷はついているようなので、ノーダメージというわけでもないだろうか。あれくらいじゃ何ともないか。


「ほほぅ。速いな」


 ブォンと大剣が横なぎされる。あの大きさの大剣をあの速さで振るんだから、かなりの力持ちだね。あれに当たったら私真っ二つなんだけど、ルール的に大丈夫なのかね?

 防具の上からダメなら、防具の無い場所を突けばいい。手のひら、関節、顎……結構あるし。

 でもどうしようかな……変なところをこの剣で狙ったら殺しちゃうよね。それはダメだし。


 考えている間も大剣を振り回されている。でもいくら相手が筋肉ダルマだとしても、あんな大きな剣を振るのは大変だろう。

 私の動体視力なら問題なく追える。避けるなんて難しくもなんともない。蛇の方が速い。

 大剣をかいくぐり脚の身体強化を使って大男の腹部を蹴り飛ばし、そのまま距離を無理矢理空ける。


「ぐぉおお!?」


 重いかと思って結構思いっ切り力を込めたので、想像以上に吹き飛んで行った。面倒くさいくらいに距離が空いてしまった。


「ふ、はは! まさかこれほどとはな」


 向こうは少し息が荒くなっている。やはりあの重そうな防具で大剣はキツイんだろうな。


 そんな相手の方へゆっくり歩いて向かう私。傍から見れば強者がどちらかわかるだろう。

 戦闘は情報戦だ。相手の弱点を探り、そこを突くのが最も効率の良い戦い方と言えるだろう。

 だから、今私がここに来るまでこなしてきた修行と、あの大剣を躱し続けたことによる疲労で結構しんどいことになっているなんて、誰にも悟らせちゃいけないのだ。


「あ、そうだ」


 せっかく距離が空いているんだ。この状態を有効活用しよう。動くのも疲れたし。

 剣を下ろし、魔道袋から火属性の中級杖を取り出し、構える。

 向こうが少し驚いているように見えるが、私はちゃんと魔法が使えることをギルドに伝えてあるのだ。ルール的にも問題はない。今度はこちらが攻める番だ。


 魔力を杖に込めれば人の上半身を燃やし尽くせるほどの大きさの炎の塊が撃ち出される。当たると殺しちゃうかもしれないけど……元Cランクなら避けられるでしょ。

 しかし大男は着弾寸前まで避ける動作をしない。おや? と思っていたら、おもむろに大剣を振りかぶり、炎に振り下ろした。すると、炎が真っ二つに切れ、そのまま霧散して消えた。


「すごい」


 あんなことができるのか。あの大剣は魔法剣なのかな。それとも特別な金属とか?

 もっと見たいな。よし、もっとだ。

 すぐさま次を撃ち出し、それが斬られる前にもう一発。それを繰り返す。

 避けられると困るので、避けた先に撃ち出したり、連続で撃ち出して避けられなくしたりした。

 うん、どんどん斬ってくれていいよ。



「ま、まて、参った」


 十発を超える数を斬られた辺りで大男が情けない声を出し始めたので、止めた。そしたら膝をついてしまった。もっと見たかったのに。




「嬢ちゃん強いな。合格だ」


 無事に合格できたようだ。これでようやくDランクか。まだまだCまで遠いな。


「すげぇな、ウェイドさんに勝ったぞ」

「魔力の量どうなってんだ」

「あの大剣結構速いのに……」


 あー、ウェイドね。うん。名前を忘れてた。このウェイドさんとやらはどうやら強い人らしい。Cランクって肩書はやっぱりすごいのかね。


「その年ですごいな」

「……どうも」


 年齢の割に強いっていうのは好きじゃない。大人よりは弱いって言われているのと同じ意味に感じるから。相手からしたら褒め言葉なのかもしれないけど。ひねくれすぎかな。


「お前さん、最近大量の魔物を持ち込んでるらしいな」

「ええ、まあ、そうですね」

「ほどほどにしとけよ。その年で無茶なんてするもんじゃねぇ」

「……善処します」


 まあ、最近根を詰め過ぎたとは思うし、少し休憩するか。ガリナに戻ろう。防具もちょっと傷が増えてきたからね。

 あの修行を止めるかと言われると、止めないだろうけど。

 この人も身体強化とか持ってるのかな。あの大剣を何度も振り回せるんだし……いや、待てよ?


「おじさんって、もしかしてドワーフ?」

「おお、そうだぞ」


 なんと。どうやらドワーフだったらしい。

 この世界のドワーフはデカイ。男性は九割が筋骨隆々のマッチョ。女性は普通。胸以外。

 見た目は人間種と大きな違いはないけど、筋力量は圧倒的にドワーフの方が多い。

 人間とドワーフ、見た目の筋肉が同じに見えても、実際の力は段違いだったりする。

 密度が違うのかね? すごいよねぇ。羨ましい。



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