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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第1章 幼女時代編
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第6話 初めての魔法

「サイラスさん」

「お、来たか嬢ちゃん」


 街の外へ出る門の前でサイラスさんと待ち合わせ。今日はようやくサイラスさんと会えた日なのだ。

 というか、父がサイラスさんと都合がつく日を探していたんだが、よくよく聞いてみるとサイラスさんの都合のつく日じゃなく、私と父とサイラスさんの三人で会える日を探していたらしい。

 私とサイラスさんの二人でなら都合はついてたらしいんだが、父は自分も参加するために都合がつかないと先延ばしにしていたんだって。

 そんなに忙しい人なんだなサイラスさん……とか思ってたのに。まあ暇ではないだろうし、父が保護者として参加したいのはわからなくもないけども。

 サイラスさんは信用できる人だから二人でも大丈夫なのに。そんなわけで今日はサイラスさんと二人だ。


「魔力操作が上手くいったらしいな」

「はい」

「よし、じゃあ外に行くぞ」


 サイラスさんと一緒に門から出て、この前の人気のない平地まで歩く。


「まずは確認だ。手を出せ」

「はい」


 手を差し出すと、サイラスさんが握る。


「魔力をここまで流してみろ」

「はい」


 言われた通り、胸にある魔力の塊から、少しずつ手の方へ流していく。


「……ほほう。ちゃんとできているな」

「ありがとうございます」


 ふっふっふ。ちゃんと今日まで練習してきたからな。全身に行き渡らせるのもできるようになってきたし、魔力操作はお手の物だ。


「次は魔法を使ってみるか」

「え! いいんですか!」


 おお! 初魔法! 使っていいの!?


「ああ、ほれ。水を生成する杖だ。これに魔力を流してみろ」

「はい!」


 サイラスさんから杖を受け取る。初めて杖に触った! 

 どうやら水を作り出す小型杖みたいで、30~40センチメートルくらいの長さかな。

 ファンタジーの世界に来たって感じで、なんだか感動しちゃう。


「魔法が出なくても気落ちしなくていいぞ。水と相性が悪いだけかもしれんしな」

「はい。やってみます」


 杖を握り、深呼吸をして構える。そしてゆっくり魔力を流す。すると、杖の先端にある石みたいなのが光り出す。これが魔法発動石かな。


「もう少し多く流せ。だが思いっきりはやるなよ。嬢ちゃんの魔力量だと杖が壊れるからな」


 どうやら流している魔力の量が少ないようだ。でも思いっきりやると壊れるらしい。うーん、匙加減が難しい。


「あ!」


 しばらく探り探り魔力を流していたら、先端の発動石から水がチョロチョロと流れ出てきた。

 これは使えたってことだよね!?


「ガッハッハ! まさかいきなり成功させるとは! 初めては余程相性のいい属性じゃないと上手くいかんのだがな」


 じゃあ水魔法とは相性がいいってことかな。まだ閉め忘れた蛇口ぐらいの量しか出てないけど。


「この水って飲めるんですか?」

「飲めるぞ。旅の必需品だ」


 そうか、いつでも新鮮な飲み水が確保できるわけじゃないもんね。この杖があれば少なくとも水には困らない。もちろん使い手がいないと意味がないけど。


「魔力はどうだ? 疲れは感じるか?」

「え……特に何も」

「そうか……こりゃ本当に才能があるぞ」


 おお? なんかよくわからないけど、才能があるみたい。やっぱり女神様がくれた力なのかな。これは伸ばす価値がありますね。


「他の属性も使えるか試してみるか?」

「! やりたいです!」


 サイラスさんは興奮気味に答える私を見て苦笑しながら、袋から三本の杖を取り出す。その袋どうなってんの?


「この袋か? こりゃあ『立体拡張魔道袋』だ。まあ魔道具の一種だな」


 袋の中が見た目以上に広くなっていて、物がたくさん入る代物らしい。見た目はナップサックに似てる。便利グッズ! 欲しい!


「ジェームズも持ってると思うぞ?」

「あー。持ってそうですね」


 お父さんもCランクの冒険者だもんね。そりゃあ持ってるよね。帰ったら見せてもらおうかな。


「それじゃあ、他の杖も試してみろ。火と風と土だ」

「はい。光と闇はないんですか?」

「その辺は杖自体がほとんど出回ってない。俺も見たことがあるだけで使ったことはねえ」

「そうなんですか」


 うーん。光魔法と闇魔法ってどんなのなんだろう。灯りとかは火属性だし。魔物除けとかかな。

 まあ手に入らないものは仕方ない。この三つが使えるか試してみよう。






 結論から言えば使えた。三つ全部。水も合わせて四つだね。


「まさか四属性全て使えるとはな……大半はどれかに偏るんだが」

「え、ええと……」


 サイラスさんが驚いてるっぽい。まずい、これは想像以上に目立っちゃうかもしれない。それは正直本意じゃない。だって面倒くさいもの。

 オロオロしてた私に気づいたサイラスさんが、私の頭をわしゃわしゃと撫でる。


「そんなに気にしなくて大丈夫だ。むしろすごいことなんだぞ? 確かに得意不得意があるやつの方が多いが、四属性全部が使えるやつももちろんいる。俺とかな」

「サイラスさんも四つ使えるんですか?」

「おおよ。こう見えて結構有名な魔法使いなんだぜ」


 そうだったのか。そういえば私サイラスさんのことあんまり知らないな……。父の仲間ってことだけだ。

 ひとまず、他にも四属性使える人はいるってのは安心だね。私だけっていうのは面倒ごとの予感しかしないし。


「さすがに疲れただろ。魔法を使うのはここまでだな」

「わかりました。サイラスさんまだ時間はありますか?」

「ああ、あるぞ。なんだ、相談事でもあるのか?」

「んーと、もう少しサイラスさんやお父さんについて知りたいなと」

「そんなことか。構わんぞ」


 よし、いろいろ聞きたいこともあるし、あわよくば戦い方についてご教授願いたいところだ。




 サイラスさんは御年四十一歳でありながら若々しい肉体美を持つムキムキの魔法使いだ。

 父は現在三十二歳なので、おおよそ一回りほどの年齢差がある。父とは十年以上の付き合いだそうだ。

 父の冒険者パーティは父と、サイラスさんと、タンク役の男性と魔法剣士の男性で四人。元は父とタンクの男性と魔法剣士の男性で組んでいたらしいが、いろいろあってサイラスさんがそこに加わった。

 四人はすぐに気が合い、今でもずっと信頼のできる仲間だとか。だから私に魔法について教えるという願いを承諾したと。

 父たちのパーティはCランクパーティだが、サイラスさんだけはBランクの冒険者である。それはサイラスさんが凄腕の魔法使いであることの証明でもある。一人だけランクが上がることに抵抗があったサイラスさんだけど、仲間の後押しもあってランクを上げたんだって。

 ただ最近は、四人で仕事をすることは減ってきているらしい。パーティメンバーの結婚や、ソロでの指名依頼によって四人で時間を取ることが難しくなってしまったそうだ。

 だから父とサイラスさんの予定が合わないのね。


「今は偶に王都にある魔法学校で臨時講師として雇われることもあるんだぞ」

「え……じゃあわたしはとっても運がいい?」

「ガッハッハ! そうだぞ! 俺が直々に魔法について教えてるんだからな!」


 サイラスさんはすごい魔法使いなんだろうなあって思ってたけど、想像以上だった。こんな幸運めったにないだろうし、もっと魔法使いとしての色々を鍛えてもらえないかな。


「サイラスさん、私に戦い方を教えてください!」

「ガッハッハ! 構わん! ……と、言いたいところだが、親友の娘っ子を無断で弟子にするわけにもいかんな」

「ぐぅ」

「そしてあの親バカが許可を出すとも思えないな」

「……ですよねー」


 ぐぬぬ……お父さんという壁の高さよ。これでは何もできんぞ。


「ガッハッハ! 嬢ちゃんはまだ六歳だろ? もう少し……そうだな、二年後くらいに気持ちが変わってなかったら、父親を説得してもう一度言いに来るといい」

「むー。わかりました」

「それまでは存分に遊んでいるといいさ。ガッハッハ!」


 はあ……焦っても仕方ないことだし、こればっかりは諦めるしかないか。今すぐ必要ってわけじゃないしね。




 その後もサイラスさんにお父さんとのエピソードを色々聞かせてもらって過ごし、夕暮れ前には自宅に送ってもらった。

 ちなみに両親の馴れ初めも聞いた。高い競争率を勝ち抜いたんだねお父さん。お母さん美人だもんね。


「今日はありがとうございました」

「サイラスさん、娘がお世話になりました」

「ガッハッハ! 気にするな! ジェームズによろしく言っといてくれ」


 母と共にサイラスさんにお礼を告げて見送る。ろくにお礼もできなくて申し訳ないなあ。



評価やブクマなどをしてくださった方、とても嬉しいです。

ありがとうございます。

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