第58話 そろそろ本気出す
ガリナの家に帰ってきて両親との挨拶も済ませると、父が何かを渡してくる。
「そういえば手紙が来ていたよ」
そう言われて私宛の手紙を受け取る。手紙は冒険者ギルドに届いていたようなので、父が受け取っておいてくれたようだ。
エルフの三人からかと思ったが、ライラからのようだ。別れてから二カ月以上経つが、元気にしているだろうか。
ふむ。どうやら彼女は故郷に戻った後、親族が経営している魔道具工場で見習いという形で働かせてもらっているそうだ。
既存の魔道具を量産、複製をする作業に追われているとのこと。
まだ店に卸せるほどの物は作れていないらしいが、工場でビシバシ扱かれながら頑張っていると書かれている。
「ふふ……ライラも頑張ってるんだなぁ」
ライラだってあの学校では成績上位者だった。腕は決して悪くない。
きっと彼女が作った魔道具が店頭に並ぶ日も遠くないだろう。
「負けられないね」
親友が頑張っていると聞くと、なんだかやる気が漲ってくるね。返事の手紙を書いたら私も頑張らなければ。
そんなわけで、レザークラフトをします!!
蛇の革を縫い合わせて防具にします。レザークラフトなんて初めてだけど、図書館でやり方は調べてきたからなんとかなる。
革は針が通らないので、予め穴を開けておかないといけないらしい。ちゃんと道具は買ってきたから、まずは使わない革で練習してみよう。
革の量は限られているんだから、失敗しないようにしないと。
等間隔で穴を開けて糸にロウを塗って針を通してみて……結構難しいな。
綺麗に縫えるようになるまで時間がかかりそうだ。
革の切れ端は穴だらけになっている。硬いから余計に大変だ。今日は練習だけで終わりそう。
布製品なんかに術式を刻む方法は学校でも習ったから刻むのは問題ない。とはいえ習った時から大分時間が経っているから、これも練習しないと。
ううん、完成まで程遠いな。
その後も革製品の切れ端を安く手に入れたり、既存の革の防具に試しに術式を刻んでみたり、練習に練習を重ねた。
革製品は安くはないのでお金がどんどん減っていく。大金を手に入れていなかったら諦めていたかもしれん。
平行して他のこともしていたので時間がかかったけど、数か月後にようやく完成した!
作ったのは籠手だ。手の甲辺りまでなら防具として覆ってしまっても大丈夫だろうと思い、籠手を作ってみた。
爆弾は手のひらから出てくるので、そこに何もなければ問題はない。
籠手には身体強化の術式を刻んだ。あまり負荷をかけ過ぎない方がいいと女神様にも言われているから、重い剣がキチンと振り回せる程度の強化に抑えておいた。
さすがに真正面から力比べをするのは難しいけど、いきなり弾き飛ばされることはないだろう。
胸当てとブーツも作ろうかと思ったけど、刻む術式が思い浮かばなかったので普通にお店に素材を持ち込んで作ってもらった。素人の手作りよりは良い品ができるだろうと思って。
次からはこれを見本に手作りしよう。
そんなわけで防具一式が完成したので、早速外で試してみることに。
まず、いつもの剣を身体強化を使って振ってみる。ブォンと良い音がする。
確かに今までよりも軽く感じるし、振るスピードも上がっているようだ。術式はちゃんと発動しているらしい。さすが私。
腕に影響があるかと戦々恐々としていたが、特段違和感などは感じない。
次に強化を切って爆弾を生成してみるが、いつも通りの物ができる。手のひらが空いていれば爆弾作りは問題ないみたいだ。自作籠手は素晴らしい魔道具となった。
ブーツの強度を測るために身体強化を使って走り回り、魔物を蹴り飛ばしたり高く跳び上がったりといろいろ試したが、今のところブーツが壊れる気配はない。
前のブーツは身体強化の衝撃に耐えられず壊れかかっていたのだ。頑丈なブーツが手に入ってよかった。
さすがに胸当てをつけたまま剣を突き立てる気はないので、外してから叩いてみたりしたが、問題ない強固さだ。心強いね。
重くなくて硬くて頑丈。蛇革って素晴らしい。長い付き合いになりそうだ。
しばらく防具に慣れるために、冒険者のお仕事も含めて身体を動かしていた時に、ようやくエルフ三人から手紙が届いた。
でもなんだか、当初の予定通りには進まなかったみたい。
「中央大陸か……」
どうやら、現在は中央大陸にいるらしい。そこで足止めを食らっていると。
予定ではガリナのある東大陸から、直接南大陸に向かう船に乗るつもりと聞いていたが、冒険者ギルドの関係でごたごたに巻き込まれたと書いてある。
何故か中央大陸行きの船に乗ることになり、その上中央大陸から出られない状態なんだとか。
別にケガとかはしていないようだけど、情報が規制されているのかあまり詳しいことは書かれていなかった。
ただ……。
「『頑張って強くなってくれ』……か」
よくわからないが、向こうもCランクに甘んじたままの状態では待っていられないようだ。直接書かれてはいないが、そんな感じに読み取れた。
Bランクに上がっていたら、そう書けるとは思うから、まだだとは思う。でもそれくらいの功績を残したのかもしれない。
「これ以上引き離されるわけにはいかない」
私はまだEランクだ。もう少し焦った方がいいのかもしれない。何から始めるか。
「防具はもういいとして、武器を新調するか。ついに剣が手に入るね。また蛇に会えないか、もう一度あの辺りまで行ってみるかな」
北にある『魔物の沼』は立ち入り禁止らしいけど、付近まで行けば魔物も多いだろう。今度行ってみるか。あ、でもその前に、返事の手紙を書かないとね。届くまでどれくらいかかるんだろう。
早く会いに行きたいな。




