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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第3章 修行編
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第57話 肉!

 せっかく高級肉が手に入ったので、是非食べたい。時刻はもうすぐ夕方だし、これで夕食といこうじゃないの。


「でも結構あるんだよね……一人で食べるのは勿体ない気もするけど」


 レオとフィンレーがどこにいるかわからないのよね。冒険者ギルドで待っていれば来るだろうか。

 でも保存用の氷も一緒に貰ったとはいえ、あんまり長時間置いておくのもね。

 こういうときに携帯電話が欲しくなる。前世の便利さが恋しい。


「かといって他に知り合いはいないしねぇ」


 いなくもないが、一緒にお肉食べましょうとか言える仲ではないのは確かだ。

 仕方ない、一人で行くか。



「あれ、リア」


 ギルドを出て歩き始めたところで声をかけられた。

 なんとも素晴らしいタイミングでレオとフィンレーが現れた。


「なんて素晴らしい」

「なんだいきなり」


 レオが引いてる。心の声が口から出てしまったようだ。


「今から夕食行くんだけど、一緒にどう? おごるけど」

「いいのか!? 行く!」

「遠慮がないねレオ……。でもいいのかい? 別に無理におごらなくても」


 目を輝かせるレオと、こちらの懐の心配をしてくれるフィンレー。対照的だなぁ。


「実はいいお肉が手に入ってね。一人で食べるには勿体ないからさ」

「肉か! 早く行こうぜ!」

「そういうことなら」


 二人とも乗り気になったところで、ギルドで教えてもらった持ち込み可の料理屋へ向かった。





 若干迷いそうになりながらも、それなりの賑わいを見せているお店にたどり着く。

 どうやらここのようだ。結構綺麗なお店で、ちょっとお高めに見えるな。


「なんか高そうだけど大丈夫か?」

「まあ、お金はあるから」


 蛇の肉を扱える持ち込み可の店ってなると限られてくるみたいで、ここがいいとギルドに言われたのだ。今更他の店に行っても仕方がない。

 意を決して中に入る。すかさず店員が近寄って来たので、こちらから声をかける。


「このお店なら食材を持ち込んで料理してくれると聞いたのですが」

「はい。可能ですよ」


 持ち込みと聞いて少し表情が明るくなった気がするのはあれか、お金が無さそうとか思われてたんだろうか。


「こちらに調理する食材をお出し願えますか」


 今持っている肉を全部出すか悩んだけど、持ってたところで日持ちするわけでもないし、全部出しちゃおう。レオとフィンレーも育ち盛りだし、余ったら店側にあげればいい。

 ということで、魔道袋から豚と蛇の肉をドバーっと出しちゃう。ほとんど蛇だけど。


「ありがとうございます。それではお席に案内致します」






「あれ何の肉なんだ?」

「蛇と豚」


 席で料理を待っているとレオがソワソワしながら聞いてくる。


「蛇も豚も初めて食うなあ。美味いのかな」

「高級品とは聞いたけどね。私も食べたことないからわかんないや」


 あんまり前世で見た家畜っていないのよね。牛乳とかは売ってるから、いるにはいるんだろうけど。

 正直ウルフとかの魔物の肉の方が安いから、一般に出回っているのはそっちだ。


「どこで手に入れたの?」

「昨日とってきた」


 一体どこで何をしてきたのかと質問攻めにされたので、適当に答えておいた。なんだか二人の私を見る目が変わっていっている気がする。敬っていいぞ。

 早く料理こないかな。昨日村で貰ったサンドイッチ以降何も食べてないんだ。

 どんな料理になるかは店側にお任せしたので、楽しみだ。




「お待たせいたしました」


 しばらくして漸く料理が運ばれてくる。

 いきなり厚切りのステーキが出てきたよ。これは豚肉かな。早速パクリ。うん。豚肉だわ。美味しい豚肉。豚肉はどこの世界でも変わんないね。

 次にスープ。これには蛇肉が入っている。蛇肉のスープ。どれどれ……魚と鶏肉の間みたいな味がする。うん、美味しい。これなら抵抗なく食べられるな。


「うまいな!」

「うん、美味しい」


 二人も美味しくいただいてくれているようだ。

 肉も美味しいけど、このお店の調理が良いんだろう。味付けが良い。ここに来て良かった。


 その後も炒め物や蒸し物など様々な料理が出てきた。どれも美味しかったが、私には少し量が多かった。これでもいつもより食べた方なんだが。渡した肉の量が多かったのだろうか。


「あー……お腹いっぱい。もう入らない」

「リアは小食だな」

「そんなことはない」


 レオとフィンレーの食欲がおかしいんだ。どんだけ食うんだ。


「でもボクもお腹いっぱいだよ。美味しかった」

「そうだな。こんなにたらふく肉を食ったのは初めてだ」

「満足してもらえてよかったよ」


 預けた肉は全て食べ切ったらしい。すごいな。一人で来てたら確実に余ってたな。

 その後会計をして店を出る。持ち込みだからか、かなり安く済んだ。


 レオとフィンレーが泊まっている宿屋を聞いて、悪くなさそうだったのでそこに向かい、ちょうど一人部屋が空いているそうなので今日はそこに泊まることに。


「飯ありがとな、リア」

「ご馳走様。おやすみ」

「どういたしまして。おやすみ」


 レオとフィンレーと別れ、部屋に入り、ベッドに飛び込む。


「明日は武器を見に行ってみるか」


 今日のお金で新しい武器を買えるだろう。蛇の皮を鞣してもらっているから、それができたら術式を刻んでみよう。しばらくは強化期間になりそうだ。

 図書館に行って裁縫の基本を学んでおくのもいいな。

 鞣しが終わったらガリナに戻ってもいいかもしれない。

 どうせ王都にはすぐに来れるし。用があればまた来ればいい。


「忙しいな」


 これも必要なことだ。強くなるのは大変だけど、成果が出るとやっぱり嬉しいね。






 王都に滞在中は依頼を受け、武器屋を見に行き、図書館で勉強したりして過ごした。

 でもそろそろガリナに戻ろうかな。家でゆっくり術式を刻む作業に入りたい。せっかく蛇の革が手に入ったんだし、親も心配しているだろうから。


「私はガリナに帰るけど、二人はどうする?」

「そうだな。そろそろ帰ってもいいか」

「うん。帰ろうか」


 レオとフィンレーもガリナに帰るというので、三人でまた護衛依頼を受けてガリナに戻った。

 帰りの護衛依頼は雨も降っておらず、盗賊も出なかったので比較的楽だった。魔物が出たけれど、私たちの敵ではない。





「ただいま」

「おかえり」


 ガリナの家に帰り、母に挨拶。母はもう私が遠出することに慣れたようで、感動的な再開のような挨拶がされることはなくなった。

 いいことだ。私はいつか出て行くんだから。


「リア! おかえり!」

「ただいま」


 父は最近抱き着いてこなくなった。まあ、私が避けるからだけど。

 私もお年頃なんだと母に言われたようだ。酷くショックを受けていたように見えたけど、これには慣れてほしい。さすがにこの年で父親に抱きつかれるのはごめんだ。



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