第55話 蛇討伐完了
「うわ。入ったよ。すごいな魔道袋」
この蛇を持って帰らないとお金にならない。依頼主にこれを見せて原因これでしたって伝えないといけない。どうしよう、入るかなーって思いながら魔道袋に入れてみたら、なんと入った。
「もうこれ以上入んないな……まあいっか。早く帰ろう」
これ以上の戦闘は面倒なので、脚を使ってさっさと村まで走ることにした。
村に戻ったころには昼を過ぎていた。お腹すいたなぁ。
村長に蛇を見せると、腰を抜かしていた。おいおい大丈夫か。
「このようなものが……なんとお礼を言えば」
「いや別に、これがいつか下りて来ていたかはわかりませんけど。他の魔物はこれを避けるために山から下りて来ていたみたいですね」
蛇はあそこを根城にしていたんじゃないかな。でも餌がなくなれば下りてくるか。一体どこから来たんだろう。
そういえばこれ、解体しないといけないのか……。めんどくさい。ギルドでやってもらおう。
「それじゃあ帰りますね。蛇については王都のギルドに報告しておきます」
何かお礼を! とか言われたので、食事をくださいって言ったらサンドイッチを用意してくれた。お腹すいてたんだ。ありがたい。
依頼自体はゴブリン退治だしね。追加でお金をもらうわけにもいかないのかな。
その辺りはよくわかんないけど、とりあえず依頼完了の証明書と、蛇討伐の証明書をもらって、王都に帰った。
結構魔力を消耗していたようで、王都に着くころにはへとへとだった。日も暮れてしまったが、蛇はあるけどお金はないという状況なので、さっさとギルドへ向かう。
「混んでるぅー……」
時間が悪かったのか、ギルドは混んでいた。帰りたいけど、帰る場所もないので諦めて受付に並ぶ。
物語ではこういう時って揉め事が起こったりすることがあるけど、そういうことが起きる様子はない。
周りを見渡すと、みんな疲れた顔をしている。朝から依頼をこなしているんだ。元気なんてないのは当然か。さっさと終わらせて酒でも飲みたいんだろうな。
「お待たせしました。依頼完了の報告でしょうか?」
ようやく私の番が来た。もう疲れて眠い。綺麗なお姉さんが相手でも眠気は吹き飛ばない。
「そうです。これ」
「拝見します」
受付のお姉さんに村で貰った二通の書類を渡してしばらく、疑わしそうな目つきで見つめてきた。
失敬な。
「えっと、これは本当ですか?」
「蛇出しましょうか? 解体して買い取ってほしいんですけど」
こんな混雑している中で蛇を出したら悲鳴と怒号が飛ぶでしょうけど。疑わしいなら出しますよ、ここで。
嫌ならどこか出せる場所ないですかね。
「ええと、ではこちらへどうぞ」
受付嬢が後ろにいた人に何かを告げて、席を立つ。
案内されて扉をくぐり、通路を進むと倉庫のようなところへ出た。
中では解体作業に追われている職員が大勢いる。冒険者が持ち込んだ魔物かな。みんな解体が面倒くさいのかね。
「ケイブさん。ちょっといいですか」
受付嬢が指示を出していたガタイのいい男性に声をかける。ここの偉い人かな?
「どうした?」
「大きめの魔物の解体をお願いしたいんですが」
「どれくらいだ?」
聞かれた受付嬢が私の方をチラっとこっちを見てきたので、適当に答える。
「貴方の十倍くらい」
「はっ! いうじゃねーか。そこの台に出せ」
ホントにそれくらい大きいですけどね。もう問答も億劫なほど眠い。
石か何かで出来た解体台を示されたので、そこに蛇を出す。でっかいねぇ。
「ひぇ」
「こりゃあ……」
受付嬢が小さく悲鳴を上げ、ケイブとかいうおっさんがニヤリと笑いだす。
魔道袋の中って掃除できないのかな……血だらけになってそう。今度魔道具ギルドに聞いてみようかな。
「ウッドサーペントか? よく倒せたな」
ウッドサーペントっていうのか。なかなか強かったなぁ。
新しい中級杖が効かなかったときの絶望感がもうね。よく倒せたよ。
「解体できます?」
「ああ。ただ時間がかかる」
だよね。それなりに大きいもん。眠いから、蛇のお金は明日とかにしてくれないかな。
「ねむいから休みたい」
「その辺りはそっちの受付の嬢ちゃんと話してくれ」
そう言っておっさんが解体に取り掛かる。
それもそうかと受付嬢に話をしようと思ったら、倉庫に新しいおっさんが入って来た。
こっちもガタイがいいな。おっさんも筋肉も、もうお腹いっぱいだよ。
「ギルマス!」
あの筋肉はどうやらギルマスらしい。王都のギルマスかぁ。やっぱりすごい人なのかな。ギルドマスターってどういう基準で選ばれるのかな。
そんなことより、この人は何しに来たんだろう。
「報告書は読んだ。あのウッドサーペントを討伐したのはお前さんか」
「そう」
どうやら私に用みたいだ。長い話は勘弁してほしいな。
さっきからあくびが止まらない。人って本当に疲れるとすごく眠くなるんだなぁ。
「ねむい。蛇のお金明日でいいから寝たい。依頼のお金ください」
「依頼の報酬金も明日じゃダメなのか?」
「寝床をくれるならいいですよ。今日の宿代もないんで」
ギルマスが呆れたようにこちらを見てくる。仕方ないじゃないか。杖を買ったらお金が無くなっちゃったんだから。
あれがなかったら勝てなかった……と、思う。思いたい。
「はあ……わかった。仮眠室を使わせてやる。金は明日用意する」
「ありがとうございます」
どうやら寝床をくれるようだ。ありがたいので素直に利用させてもらおう。
受付嬢が案内してくれるそうなので、ついて行く。
そろそろ限界である。体力がないのか、普通に働き過ぎたのか。今日はさすがに後者だろう。
「この部屋をどうぞ」
「ありがとうございます」
ベッドと簡単な仕切りがいくつか並んでいるだけの簡素で広い部屋に通された。
使っていいベッドを聞いて、もぞもぞと潜り込む。受付嬢が何か言っていた気がするが、聞く前に眠ってしまった。




