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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第3章 修行編
54/212

第54話 山の奥へ

 翌朝山に入って歩き回ってみる。ゴブリンがまだ数匹いるようなので倒しておく。

 根絶やしにはしない方がいいのかな……生態系というのは難しいね。魔物にもそういう、生態系のバランスとかあるのかな。でも狩らないと増える一方だし、あんまり気にしなくていいか。


 ゴブリンはほどほどにして、更に奥へと向かう。

 奥に行くにつれて木が増えてきて、少し強い魔物が増えてくるが、別段おかしいことではない。


「でもなんか……奥には近づきたくない、みたいな感じが……」


 逃げてる? 避けてる? なんだろう、何かいるのかもしれない。



 ――ぞわり



 あー……何かいますね。これもしかしてバレてるのかな……それとも危なすぎるから帰れっていう女神様からのお告げ? その方が助かるんだけど。

 でも何がいるか見もしないで帰るのは、途中で仕事を放棄したと同じよね。なんか怖かったんで帰ってきました、とか言ったら笑い者だ。せめて姿だけでも見ていこう。

 少し進むと、開けた場所が見えてきた。木に隠れるようにしながらそっとのぞき込む。



 でっかい蛇がいた。



 いや、デカいな。とぐろを巻いているから全長はわからないけど、太いわ。すっごい太い。

 私なら三人束にしても通れるね。丸呑みされても腹の足しにならないんじゃないかな。意味わからん。

 どうやら魔物が下りて来てるのはあれのせいみたいだ。今は寝てるっぽいけど、蛇って意外と動き速いし、強そうだ。


 どうしようかな。戦ってみたいけど、強いよね。でもなぁ、お金の塊だと思うと……。

 いや! 無理をしてはいけないと散々みんなに言われてるから……おとなしく帰ろう。



 音を立てないようにゆっくりと後ろを向いたら、目の前にデカイ豚がいんの。心臓が跳ねたわ。


「ひゅ……!!」


 蛇のせいで危機察知がどこを向いてたかわからなかった!

 とっさに口を押えたが遅かった。豚が私を敵として認識し、今にも突撃しようとしている。


 そして後ろからの強烈な殺意に私は全力で横に跳んだ。


 今まで立っていた場所を蛇がものすごいスピードで通り過ぎた。速すぎる。これはマズイ。


 すぐさま体勢を整えて蛇を見る。

 先ほどの豚が木に叩きつけられ、ぐったりしているところを蛇に丸呑みされていく。私の倍以上の大きさはある豚が蛇に喰われている。なんという光景か。


 認識された以上あの速さから逃げるのは難しい。お食事中悪いけど攻撃させてもらう――!?



 またもや私を狙う殺意を感じ、咄嗟に上にジャンプ! すると横にあった木が轟音を立ててへし折れた。


「……尻尾は卑怯でしょ」


 どうやら尻尾で私を攻撃しようとしたらしい。食事の邪魔をするなと。そりゃ怒るわ。

 危機察知で攻撃が来る前に回避行動をとらないと死にますね。


「まあでも、お金にも評価にもなるだろうし、頑張ってみるか。私のために死んで?」


 豚を飲み込んでポッコリお腹になった蛇に告げる。どうやら満足したから逃がしてやるなんて都合のいい展開にはならないようだ。

 もちろん逃げるつもりはないし、逃がすつもりもないけどね。



「まずは、これ!」


 中級の風の杖から風の刃を飛ばす。胴体を狙ったが、避けられる。やっぱり動きが速いね。

 後ろの木が真っ二つになったのは見なかったことにしたい。どうしよう、森林破壊になっちゃう。

 躱した後に突進してくる蛇を避ける。身体強化のおかげで難なく避けられているけど、なかったら何度か死んでるな。さっきの豚が消化されていないからか、少し身体が重そうなのも幸いした。


 何度か攻撃していると、風魔法が蛇の身体に当たる。当たったが……。


「無傷はちょっと……想定外なんですけど」


 効いてない。傷がついてない。どんだけ硬いんだ、あの身体。

 せっかく新しい杖買ったのに! やっぱり剣の方が良かったんだろうか……。


「どうしよう」



 岩をも砕く突進、鞭のようにしなる――というには太すぎる尻尾が地面を抉る。当たったらひとたまりもない攻撃を何度も避けている。

 だけれど、少し疲れてきたし、このままじゃ埒が明かない。


「もう少し攻めるか……」


 当たるまで避ける、それじゃもう勝てない。これはそういう敵だ。

 死なない程度にギリギリまで引き付けて攻撃。これくらいしないとダメだ。


 立ち位置を、さっき蛇が寝ていた開けた場所にまで、少しずつ移動する。障害物のない場所だ。

 じりじりと近づいてくる蛇を見ながら大きく息を吐き、集中する。


 杖に魔力を込めたまま、脚に魔力を流して大きく跳び上がる。

 蛇の頭よりも高い位置までジャンプして、眼下を見る。私の姿を確認した蛇が大きく口を開け、器用に頭を上げてくのが見える。


「口の中ならなんでも効くでしょう」


 落下しながら蛇の口に近づき、杖を向け風魔法を飛ばす。

 風の刃が蛇の口から顎までを大きく切り裂いた。


「よし!」


 悲鳴を上げて暴れる蛇に追撃で風魔法を飛ばす。のけぞってくれたおかげで口にダイブせずに済んだ。

 地面に着地し、横から迫る尻尾を避け、さらに近づく。


 苦しんで暴れまわっているが、先ほどの攻撃で口が閉じなくなったようだ。脚の強化を使いながら執拗に口元に近づき、風魔法を飛ばし続ける。


「攻撃が効けば怖くないね!」


 蛇の頭を風の刃でズタズタにし続けていると、ようやく蛇が倒れて動かなくなる。

 危機察知にも反応がなくなったので、どうやら無事に倒せたみたいだ。


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