第53話 ゴブリン退治
宿を引き払い、保存食を朝食代わりに食べてレオとフィンレーと一緒にギルドに向かう。
中は相変わらずの人だかりで、壁の依頼書を見るのも一苦労だ。
なんとか見れるようになってからは依頼も減っている。これといって面白そうな依頼はないなぁ。
「ゴブリン討伐……村を襲っている、か」
小さな村から出た依頼か。大した依頼料じゃないけど、一人でも受けられる依頼っていうと、こんなものくらいだ。宿代にはなるだろう。
早速手続きをしてギルドを出る。レオとフィンレーもどっかにいたけど、人込みではぐれた。どうせ一緒に行動するわけでもないし、いいや。
村は少し遠いけど、この脚ならそこまでかからないだろう。早速向かおう。
休憩を入れながら、身体強化を使い走り続けて数時間。ようやくお目当ての村へ到着だ。
予想通り小さな村のようで、農村って感じ。
「こんにちはー」
村の入口に門番っぽい男の人がいたので、挨拶する。鎧を身に着けた、こんな小さな村には似つかわしくない姿だ。例のゴブリンのせいだろうか。
「こんにちは。何か用かな?」
男性は私を見ながら微笑み、子供を相手にするような態度で接してきた。
まあ、私一人を見て冒険者とは思わないよね。子供に見えるのも仕方がないとは思うけど。
冒険者プレートを見せればいいかな。
「ゴブリン討伐の依頼を受けにきました」
「え!? ……君一人かい?」
門番はプレートを見て驚き、言葉を聞いて驚き、周りを見渡して信じられないと言わんばかりの表情で問いかけてきた。大分失礼だな?
「そうですよ。それで、どこに出るんですか?」
問答が面倒くさいので、さっさと討伐に行こう。依頼書には十匹くらいだと書かれていたけど。
「あ、ああ。村長に話を聞きに行くといい。案内しよう」
ひとまず村長へ。クエストの定番ですよね。男性の後について村の中に入っていった。
「ゴブリンはここから少し歩いたところにある山から度々下りてきて、畑や家畜を荒らすのです」
村長に会い、門番と似たようなやり取りをした後、ようやくゴブリンの話が聞けた。みんなして私を子供扱いしすぎではないだろうか。
「数はわかりますか?」
「一度に五匹ほど下りてきたことがあります。山に確認に行きましたが、ゴブリンの見分けはつかないので……持っていかれる作物や家畜の量を考えると十匹はいるのではないかと」
さすがに私もゴブリンの見分けはできんな……仕方ないか。
「わかりました。ひとまず見に行ってきます」
「お願いします。お気をつけて」
そんなわけで山に入ったわけだけど。
「いきなりいるじゃん」
少し歩いたところでゴブリンを発見。早速討伐する。面倒だけど、討伐の証として魔石を持っていかないといけない。
でも普通のゴブリンだし、大した敵じゃない。これくらいなら問題ないな。
せっかくなので新しい杖を試す。必要な魔力量を確認しておかないといざという時に使えないからね。下級杖に比べるとやっぱり大きいし重たい。その分頑丈そうだけど。
一発目、下級杖と同じ量の魔力を流す。うーん? なんか思ってたより弱い?
二発目、魔力をもう少し増やしてみる。下級杖とそんなに変わんない? でも切れ味はいいかな。
三発目、もう少し多く流す。あれ、大きくなってきたな。スピードも上がって来た。
四発目、下級杖の倍ほど流してみる。大きさも速度も切れ味も、目に見えて違う。強いじゃないの。
なるほどね。単純に必要魔力量が多くなる上に、魔法発動石が強力になったから燃費も悪くなってるのね。下級杖と同じ量を流すと、魔法発動石の部分で下級杖よりも多く損失しているから却って弱くなると。
魔力が少ない人には連発は無理だろうね、この杖。私には余裕だけどな!
使い方さえわかれば問題なし。ガンガン使っていきましょう!
「じゅーさん、じゅーし、じゅーご……多くね?」
予定よりもゴブリンの数が多いな。集団で襲いかかってきてもゴブリン程度なら何ともないけど、これはそういう問題じゃないよね。
「うーん……今日は一旦戻るか」
一応確認した感じ、これ以上はいないかな? 念のため明日も確認しに来るかな。
村長にゴブリンの数が多いので、明日もう一度山に入って確認してくると告げると、一晩食事と寝床を用意してくれるとのこと。ありがたい。
「こんなにゴブリンがいたんですか?」
村長にゴブリンの魔石を見せると、驚いていた。別に嵌めようとしていたとかではなさそう。嵌められるようなことをした覚えはないけど。
「この村には前からゴブリンが?」
「今までも何度かありましたが、ここまで多くはなかったですね」
うーん。もしかしたら山で何かあったのかな……大した事じゃなければいいけど。
「もし、私が明日山から戻って来なかったら、山で異常事態が起きたと思ってください。もちろん私も無理はしませんが」
さすがにここで死ぬ気はないからね。何か見つけても無理はしないよ。たぶん。
「わ、わかりました。どうかお気をつけて。今日はゆっくり休んでください」
「ありがとうございます」
さてさて、何が出るかな?




