第47話 幼馴染たち
いつもは大体夜に投稿しますが、これからは変わるかもしれません。
父との試合は、二年間の内であればいつでも可能。
武器は木剣。魔法は禁止。魔道具は可とのこと。つまり道具有りの剣術の試合ってことね。
「僕が暇なときならいつでも構わないよ」
「わかった」
そんなわけで今日早速外で試合をしてみた。
いきなり勝てるとは思ってないけど、実力差を把握しておくのもいいだろうと思って。
「まだまだだね」
結果、笑えるくらい惨敗した。
速さ、筋力、剣術、体力まで、どれをとっても父の方が上だと再認識させられた。当然か。経験も身体のつくりも違いすぎる。
現に今、地面に座り込んで息切れしている私と、汗はかいているけど立ったまま息切れもしていない父がいる。これだけ見ても、差は歴然だ。
「少しは強くなったみたいだけど……王都で冒険者として活動してたね?」
「うぐ……」
ジト目で言われて言葉に詰まる。
戦ったらさすがにバレるよね。だってようやく一人になれたんだもの! 行きたいと思うじゃん? ダメ? ダメですよねゴメンナサイ。
「無事に帰って来てくれたから、怒らないけど。ちゃんと話してほしかったな」
「ごめんなさい……」
「今ランクは?」
「E」
父はランクを聞いたらさすがに驚いたようだ。
でも怒られなかったな。過保護な父のことだから、もっと延々と何かしら言われると思ったけど。
父もこの一年間で子離れできるようになったのだろうか。
「Eランクか、すごいね。でもリアの実力ならDランクにもなれると思う」
「ホント?」
「ああ、でも今のままじゃそこ止まりだね」
むむ。やっぱり今のままじゃ何かに欠けているんだろうな。筋力とか速さとか、うーん、魔道具に頼ってみるか……?
「強くなったと実感したら、またおいで。その時はまた試合をしよう」
「うん、よろしくお願いします」
よし、まずは魔道具を売っているお店に行ってみよう。何かいいものがあるかもしれない。平行して冒険者としての仕事もこなして実戦も経験しないとね。
父にお礼を言ってその日は一緒に家に帰った。
「そんなわけで、二年後に旅に出るべく頑張ってます」
「少し見ない間にすごいことになってるね」
エミリーが呆れてる。茶髪のポニーテールもお姉さん気質な性格も未だに健在だ。
今日は幼馴染たちと集まって近状報告会だ。さすがにいつもの広場じゃ味気ないので、騒いでも平気な食堂で食事も兼ねて集まった。
今は一通り自分がどういう状況になっているのかを説明をしたところだ。
「リアもEランクなんだね。ボクたちの方が依頼を受けているはずなのに、同じになっちゃったよ」
「二人分だから時間かかってるんだね」
フィンレーは今もレオと一緒に冒険者をしている。二人で活動していると一つの依頼の評価が等分されるから、単純に二倍の数の依頼をこなさないとランクアップできない。
一人は危険だけど、早くランクを上げられる。悩ましいよね。
それにしても、フィンレーもレオも一年見ないうちに随分と体格がしっかりしてきた。やっぱりその辺は男の方が伸びるね。
「リアちゃんケガとかしなかったの? 大丈夫だったの?」
「平気だよ」
仕事ではケガはしたけど、試合ではしませんでした。
ロージーは少し大人っぽくなった。いつも家で陶器を売っているそうだけど、ロージーが可愛いから接客の評判がいいって聞いた。今度コップでも買いに行こうかな。
「それより、王都の話を聞かせてくれよ!」
「はいはい。何が聞きたいの」
「えーっと、えーっと……」
レオは相変わらず元気だ。未だにガリナから遠出はできていないようだから、王都がどんなところなのか、気になるんだろう。
それからは王都で見たこと聞いたことなんかを幼馴染たちに話した。
王都の人の多さ、見たことない食材や魔道具、近くに出現する魔物、学校の話、私が作った魔道具までいろいろだ。
「旅か~。オレも旅に出てえな! フィンレー、オレたちも行こうぜ!」
「はは……いつかは言い出すと思ってたよ」
私の話を聞いて興奮状態のレオがそのままの勢いで言い出した。急だなぁ。
「二年後一緒に行く? まあ、大陸を渡るところくらいまでだけど」
そういうのもアリかなと思っている。一人だと護衛依頼を受けられないけど、この二人と一緒なら受けられるだろうし。
「む……どうするか……」
レオが本気で悩み始めた。余程旅には出たいらしい。
「リアが魔法使いとしてパーティ組んでくれるって考えたら良い話だね」
「剣でも魔法でも構わないけど」
二人は剣士だ。フィンレーは魔法剣士になれるけど、魔法剣が手に入ってないようだ。あれ高いからね。現状で二人だけで旅に出るのは難しいだろう。
……一人で大陸を渡ろうとしている私も大分無謀だな。
「まあ、お父さんに勝てないとガリナから出れないんだけどさ」
「結構厳しい条件だよね。ボクだったら二年じゃ無理そうだよ」
フィンレーが父の強さを思い出したのか、眉を寄せながら呟く。父は私たち三人の剣の師匠だもんねぇ。
Eランク冒険者がCランク冒険者に勝てっていうんだもの。真正面から勝てるビジョンが思い浮かばないよ。やっぱり魔道具に頼らないと無理そうだ。
「先の話は置いといてさ、今度一緒に護衛依頼受けてくれない? あれ一人じゃ受けられないんだよね。でも一度くらい経験しておきたいから」
父のことはまだ後回しでいい。それよりも今は色々経験しておきたい。
護衛依頼をレオとフィンレーが一緒に受けてくれるなら、拒否されることもないだろう。野営も経験したいし、王都までがいいかな。道中そんなに危険じゃないし。
「ああ、ボクたちも受けたことがないから構わないよ。レオもいいよね」
「護衛依頼? 別にいいぞ」
フィンレーから快く返事をもらい、旅の件はひとまず保留にしたらしいレオからも了承をもらえた。やったね。
その日は夕方までそれぞれの一年間の話をして盛り上がった。
やっぱり幼馴染というのは気心知れてていいね。




