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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第2章 王都学校編
44/212

第44話 王都での最後の時間

本日二話目

 洗濯機が出来上がるまで、毎日好きなことをして過ごした。

 図書館で調べものをしたり、冒険者ランクを上げるために仕事に精を出したり、新しい魔道具の構想を練ったり。


 図書館では術式の勉強もしたけど、調べてみたいことがあったのでそれについての本を探した。ここは広いなあ。

 女神様からもらった力で、唯一何にもわかってないのが『祝福』だ。

 これが一体なんなのか、女神様がどんな神様なのか、この世界ではどんな扱いなのか。

 今までなんとなく知る気になれなくて調べてなかったけど、時間もあるし、現状行ける図書館で一番大きい場所はここだし、せっかくなので調べてみることにした。


「邪神を封印した神様……この世界の創造神……うーん、なんかすごそうな神様ってことでいいかな」


 神話に関する本を探して読んでみる。いくつか見つかったけど、内容は似たり寄ったりだ。

 女神様ってそんなすごい神様なんだねぇ。そりゃあ矮小な人間にはその崇高なお考えなんて理解などできんよ。

 神殿で祀られている神様はあの女神様で間違いなさそう。今度お祈りにでも行くべきかね。


 そんな女神様から頂ける『祝福』については……正直よくわからん。


「生涯健康長寿に過ごした……とかそういうのが多いな。無病息災のご利益があるとかかなぁ」


 うーん、曖昧。

 歴史上、実際に夢で女神様に会ったとか、お祈りしていたら声が聞こえたとか、そんな風に女神様の存在を感じた人は意外といるんだとか。

 で、女神様からかけられたお言葉が


「貴方に祝福を授けましょう」


 だったとか。

 その言葉の前に「貴方は信心深いので~」「貴方は強いので~」「貴方は美しいので~」みたいな言葉があったそうだけど。

 俗物感が見え隠れするのは気のせいだろうか。女神様って結構下界の民のことを見てらっしゃるんですね。


 とりあえず、そういう人たちの大半が健康長寿に過ごしたことが多いので、これが女神様からの祝福なのだろうと言われている。

 つまり正確に祝福が何なのかは誰にもわかっていない。女神様、言葉が足らなさすぎませんか。


 私も今世で大きな病気なんてかかったことないし、無病息災の祝福があるって思っていいのかな。

 まだ十年と少ししか生きてないから決めつけるには早いかな。


 あの女神様から渡されたものだから心配してたけど、変な物じゃないってわかっただけいいか。






 冒険者としてのお仕事が順調だ。何せ魔道袋が手に入ったんだから。

 大量の魔物を持って帰ってくることもできるし、四属性全部の杖を持ち歩くこともできる。

 なんて身軽なんだ。快適すぎて、もう手放せない。



「リアさんの冒険者ランクがEに上がりました」

「意外と早いですね」


 Fランクに上がったのがおおよそ一年前だとしても、仕事量を考えたら早いんじゃないかな。この一年休日にしか仕事してなかったし。


「お一人でジャイアントベアーやビッグボア、ウルフの群れなどを討伐できるんですから、十分すぎるほどの実力はありますよ」


 もしかして普通のFランク冒険者はジャイアントベアーをソロで狩ることはないのか。

 同ランクの冒険者の知り合いなんてここにはいないしなあ。今までの修行と危機察知のおかげで攻撃をくらうことなんて滅多にないから、強い相手でもなんとかなってるのよね。


「EランクからDランクに上がるためには、評価の他に元冒険者のギルド職員との試験に合格しなければいけません」

「試験?」


 なんでも、Dランクからは一人前扱いなので、その最終チェックとして試験官と模擬戦とか魔法力を見たりとかがあるらしい。めんどくさそう。

 魔法使いなら魔法関係、剣士なら剣術関係、回復士なら回復関係と、その人の得意分野での試験になるそうだ。

 私の場合はなんだろうか。


「リアさんの場合は剣術と魔法がお得意とのことですので、模擬戦になるかと思います。そんなに難しいものではありませんので、気負わずとも大丈夫ですよ。評価が溜まり次第ギルド側から連絡がいくかと思いますので、それまでお仕事頑張ってくださいね」

「わかりました」


 まだまだEランクになったばっかりだから試験なんて先の話だ。

 でも、この二年で受けられるようにはなっていないとね。最低でもD、できればCランクまで上げたいけど、難しいかな。






 そんな風に日々を過ごしていると、時間はあっという間に過ぎ去る。

 ついに市販される洗濯機を手に入れる日が来た。


 シャーリーさんに案内され、魔道具ギルドの中を歩く。

 いつもの個室よりも大きな部屋に通されると、そこには私が作った洗濯機によく似た物が置いてあった。


「こちらがリアさんの洗濯機になります」

「ほー」


 大きさや形に大きな違いはない。中が覗けるようなガラスの蓋とかが付けられたら良かったんだけど、どうやらギルドでも用意できなかったらしい。

 別にロックがかかるわけでもないから、蓋なんて取れば中は見れるんだけどさ。


「何か変更点はありました?」

「大きな違いはありませんね。しいていうならこの辺りが――」


 シャーリーさんの説明を聞いた感じ、どうやら私が作った家庭用の洗濯機とほとんど同じ構造になったようだ。

 お母さん使ってくれるといいな。


「業務用も作っているんですか?」

「はい。そちらはまだ時間がかかりそうですが」


 洗濯機の実物は作っていないけど、構想だけならいくらでもある! と言わんばかりに紙に案を書いて卒業課題として提出したので、それがそのままギルドに渡ったらしい。

 そのおかげで洗濯機の買取金額が予想以上に高値になったようだ。

 大型の洗濯機を用意すれば洗濯専用のお店……コインランドリーみたいなものがこの世界にも生まれることだろう。きっと家事が楽になるよね。


 魔道袋に洗濯機を入れてシャーリーさんに向き直る。


「いろいろとありがとうございました」

「こちらこそ、素晴らしい魔道具を売っていただきありがとうございました」


 お互いにお礼を言い合い、ギルドを後にした。

 もうここに来る機会はほとんどないだろうな。


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