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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第2章 王都学校編
43/212

第43話 念願のモノ

 魔道具ギルドから連絡があったので向かう。もしかしたら例の物が用意できたのかもしれない。


「リアさん、お待たせしました」

「いえ」


 前回と同じように受付で要件を伝えると、個室に通される。

 しばらくするとシャーリーさんが部屋に入って来て向かいに座る。前と同じ状況だけど、違うものがある。


「それではご希望の品をご用意できましたので、確認してください」


 シャーリーさんがトレイに乗せて持ってきた物。大きめの袋と、それよりは小ぶりな袋の二つ。

 待ってました!


「大きい方がご希望の『立体拡張魔道袋』です。そしてこちらが『洗濯機』の買取金額から『立体拡張魔道袋』の金額を差し引いたお金です」


 ついに! ついに魔道袋が手に入った! ここまで長かった……!


 洗濯機の作成方法の買取金額が結構な額になったのは嬉しかったんだけど、その大金をジャラジャラと抱えて歩くのはちょっと……って感じだったので、せっかくならそのお金で良い魔道袋をギルド側で選んでもらおうかなと思い至ったのだ。

 お金として何にも残らないのもあれなので、買取金額より少し安い魔道袋をお願いした。

 これで魔道袋とお金が両方手に入った。しかもお古じゃなくて新品の魔道袋。

 その残りの金額とはいえジャラジャラと音を立てる金貨が入った袋。洗濯機がどれだけ高額で売れたかがわかるね。


「ちょっといい物をご用意させていただきました。この魔道袋は容量がこの個室の四倍ほどになります」


 この個室はそんなに広くはない。それでも机とソファーが向かいで並ぶ広さはある。ここの四倍なら相当大きいぞ。


「そして、特徴として入口よりも大きなものでも入れることができます」


 魔道袋は袋の入口よりも大きい物は入れられないものもある。長い剣なら縦に入るけど、四角い大きな箱だと入れられない。でもこれは入れられる。

 入口が30センチにも満たないとしても、容量が空いてるなら入っちゃう。これは便利!


「その分容量が少し小さくなってしまいましたが……」

「いえ、十分です」


 うん。十分だ。ここの部屋の四倍なら寮の自室が三つは入る。それに、何にも持っていなかったあの頃に比べたら……!

 これで今後の冒険者としての活動が楽になる!


「それから、持ち運ぶのに中身の重さを感じることはありません」


 大量に物を入れても袋は軽いまま! 身軽に動き回れる! もう背中に杖を背負ったまま戦わなくていいんだ! 

 魔道袋を作り出した人は天才だと思う。どこの誰だか知らないけど、感謝します!


「一応、魔道袋の注意点についてご説明しておきますね」


 外側の部分に穴をあけたりすると、壊れて中身が出てしまうので丁寧に扱うこと。もちろん頑丈な作りになっているのでそうそう壊れることはないけど。

 あと中身は袋の中で一緒になっているので、食べ物なら食べ物用の袋に入れてから魔道袋に入れるとかした方がいいとのこと。

 出来立てほやほやのむき出しの魔物の肉と食用のパンが隣り合わせはさすがに嫌よね。袋を用意しよう。

 容量がいっぱいになると入れられなくなるそうだ。押し返されるんだって。すごいね。


「他に聞きたいことはありますか?」

「いえ。あ、洗濯機の方はいつ出来上がりますかね?」


 魔道具ギルドは魔道具の作成方法を売っているが、見本品としていくつかギルド側で作成するらしい。まあ図面だけみてもその商品の本当の良さっていうのは伝わりにくいものね。


 市販の魔道具にはどれも暗号術式というものが刻まれている。

 これは術式を隠すための術式で、複製を防止するために必ずつけられているものだ。魔力を流して魔力回路を分析することが出来なくなる。


 自分で洗濯機を作って親にプレゼントしてもいいんだけど、せっかくならちゃんと市販されるものを渡した方が安全じゃないかなと思って聞いてみた。

 誰かに盗まれるなんてことはないだろうけどさ、作成者がバレるのもちょっと怖いし、そこから術式がバレたら……さすがにギルドにも申し訳ないし。

 販売されるものを先駆けで買えたらなお嬉しいんだけど。

 そんな感じのことを伝えてみたところ、確認してくると言い残し、シャーリーさんは部屋から出て行った。


 さすがにすぐには無理かな。無理なら諦めて出来上がりをガリナで待つか。あんまり王都に長居していると父がしびれを切らして飛んできそうだ。



 出されたお茶を飲んだりしてシャーリーさんを待つ。お茶のおかわりを頼む前には戻ってきた。


「確認が取れました。リアさんが作られた家庭用の洗濯機であれば、あと一週間ほどで作成可能だそうです」

「そんなに早いんですか?」

「はい。現物がありますからね」


 私が作ったやつだね。どうやら洗濯機第一号君は活躍しているようだ。


「それで、そのうちの一つをリアさんにお渡しします」

「いいんですか?」

「開発者の方にはギルドで作成されたものを最終確認のためにお渡ししています。なので、渡すものは元々リアさんの所有物になる品物です」


 なるほど。自分が思い描いていた物と別物だったら困るものね。そういうことなら素直に貰っておこう。お金も払わなくていいみたいだし。


「それを受け取れるのが一週間後ということでいいんですかね」

「はい。一週間後にもう一度ギルドまでお越しください」


 一週間か……私としては勉強や冒険者の仕事をして時間を潰せばあっという間だろう。

 問題はそれまで寮にいられるかってことと、親が心配して王都に来ちゃうんじゃないかってことくらいかな。

 寮はディーナさんに相談するとして、親には手紙でも書こうかな。


「わかりました。また来ます」


 了承してからギルドを出る。滞在が延びるのは決定しているから、まずはディーナさんにお願いしてみて……さすがに無理って言われたら、安い宿でも探すか。





「構わないわよ」

「え? いいんですか?」


 滞在期間を一週間延ばさせてほしいとお願いしたところ、あっさりと了承してもらえた。


「新規入居者はまだ先だし、マデリーンもまだいるしね。それに一週間滞在することは決定しているんでしょ? 放り出すなんて心配だわ」

「あ、ありがとうございます」

「というよりも、一年分の寮への入居費を一年前に払ったでしょう? あれ今月末まで有効なのよね。だから別に何にも問題ないのよ」


 なにそれしらない。そうなの!?


「まあギリギリまで滞在する人は少ないけどね。お金支払う前に説明受けてるはずだけど……」


 知らなかったの? と首を傾げながら言われたけど、知りませんでした……。

 その辺は親がやったからなあ……もしかして早く帰ってくるようにと言わなかったとか? まさかねぇ。自分でちゃんと聞かなかったのが悪い。しっかりしないと。


 ひとまず、それならギリギリまで滞在しようかな。親には手紙を出しておこう。帰るのは来月ですって。こっち来ないでねって。

 おそらく大丈夫でしょう。この一年間、父は一度もここには来なかったんだから。


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