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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第2章 王都学校編
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第41話 売買契約

 卒業式を終えた次の日、私が訪れたのは魔道具ギルド。例の洗濯機の売買についての話だ。

 すでに学校側からギルドへ話がある程度付いているので、受付に要件を伝えればすぐに話が進む。


「リアさんですね? 私はシャーリーと申します。本日はよろしくお願いします」

「よろしくお願いします」


 個室に案内されてシャーリーさんというギルド職員さんと二人きりだ。シャーリーさんは眼鏡が似合いそうな知的美人さん。そんな人を前に、私は今いろんな意味で緊張している。


「そんなに緊張なさらなくても大丈夫ですよ」

「は、はい」


 ニコっと相手を安心させるような微笑みを見せてくれる。これも計算の内か!? とか思わなくもないけど、こんな可愛い美人になら騙されてもいい。

 いや、さすがに程々がいいけど。


「早速ですが、リアさんが卒業課題で作られた『洗濯機』というものなんですが、これはすごいですね!」

「そ、そうですか?」


 早速本題に入ったかと思ったら、いきなり目をキラキラさせながら興奮気味に褒められた。

 どんどんほだされていくわたしがいる。


「これの作成方法を是非当ギルドに売っていただきたいと、職員満場一致で可決済みです。これは今後世界中で使われる日が来ますよ!」

「そ、そんなにですか?」


 魔道具ギルドが買うのはその魔道具の作成方法だ。

 みんな魔道具ギルドが認めたものは安心安全なものだと広く世界に認められているので、挙って欲しがる。

 ギルドは作り方を公開し、それでお金を取る。作り手は作成方法を買い、商品を作って売る。そしてまた誰かがギルドに作り方を売り、誰かがギルドから情報を買う。そんな感じで世界は回っているそうだ。すごいね。

 前世では洗濯機のない生活なんて考えられないくらいには普及していたけど、この世界でも売れるのかね?


「もちろん多少富裕層向けや業務用として利用するために改良する必要はあるでしょうが、リアさんの作った『洗濯機』が基になることは間違いありません」


 そう言いながらシャーリーさんが一枚の紙を渡してきた。どうやら契約書のようだ。想像以上にとんとん拍子で話が進む。


「こちらに書かれている契約について同意していただければ契約成立となります。まず上から説明していきますね。無理強いさせるつもりはありません。大事なことですからよく考えてください」


 案外融通が利くようなので、じっくりと考えさせてもらおう。子供相手なのに、こうやってキチンと向き合ってくれるのはありがたいことだ。





「お疲れでした。これで契約成立です」

「ふぃ―……つっかれたぁ」


 だいぶ時間はかかったけど、ちゃんと契約は結べた。製品として出回るのはまだ先だけど、そのうち街中で見かける日が来るだろう。


「リアさんが作られた実物は見本としてギルド側が預かることになっていますが、よろしいですか?」

「あー……まあいいですよ」


 一応聞かされていた話だしね。親に渡す予定だったけど、また新しく作ればいいだけだ。


「それでは本日はありがとうございました。例の品物はご用意でき次第ご連絡致します」

「はい。ありがとうございました」


 魔道具ギルドにはあるものを頼んだ。かねてから欲しかったアレだ。楽しみだなぁ。






 寮に戻ると、入口の近くに豪華な馬車が止まっていた。

 もしかしたらナターシャさんの家の馬車かな? 確か今日中にここを出ると聞いているから。

 寮に入るとナターシャさんとメリッサさんをディーナさんとライラが見送っていたところのようだ。マデリーンさんはまだギルドから戻って来ていないのかな。


「あらリアちゃん、間に合ったわね」


 寮に入って来た私を見てディーナさんが楽し気に告げる。

 一応昨日全員とお別れ話はしたけど、それでも間に合ったのはいいことだ。


「ナターシャさん、メリッサさん、もう行かれるんですか?」

「ええ。迎えが来ましたから」

「お屋敷暮らしに逆戻りかー」


 不満げなメリッサさん。この人本当に貴族の家のメイドさんなの? それっぽさを一度も見たことがない気がする。


「お二人にはたくさんご迷惑をおかけして……本当にすみませんでした」


 二人に……特にナターシャさんに向けて深々と頭を下げる。あのパトリックとかいう男のせいで!


「そんなことはありません。むしろあんな男と結婚しなくて済んだのですからお礼を言いたいくらいです。本当にありがとうございました」

「そうそう。あんな男ナターシャ様には不釣り合いだもん!」

「ははは……そう言っていただけると助かります」


 まあ確かにあんな男と結婚するなんて地獄だろう。貴族ってのは大変だ。

 ……そういえば私ずっとナターシャさんのこと、さん付けで呼んでたけど大丈夫だったかな。何にも言われてないし大丈夫だよね。さすがにもう会う機会なんてないだろうし。


「それじゃあそろそろ行きますね。皆様お世話になりました。お元気で」

「さよなら!」


 ナターシャさんがお辞儀をし、メリッサさんが手を振って去っていく。最後まであの人達らしいな。


「お気をつけて」

「さようなら」

「元気でね」


 それぞれ別れの言葉を告げる。この寮から二人いなくなってしまった。

 こうやってみんなとお別れしていかないといけないんだなぁ。わかっていたことだけど、やっぱり寂しいね。


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