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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第2章 王都学校編
32/212

第32話 実技授業の始まり

 

「あ!! あった!! リア!! あったよ!!」

「どうどう落ち着いて。二人とも受かってよかったよ」


 次の日、学校の廊下で前期試験の合格者が順位付けで貼り出されていた。

 76位まで載っているので試験の合格者が七十六人いるということになる。

 全校生徒が何人だったかは知らないけど、それでもほとんどの人は受かったんじゃないかな。


「おお、八位だ。結構頑張った方じゃない?」

「んー、十位かぁ。リアに負けた……」


 得点も記載されているが、私でも九割は超えている。それでも上には上がいるんだなあ。

 ライラとは一点差だ。八位が二人いるからね。


「一位すごいねぇ。満点だよ」

「満点……あ! マデリーンさんじゃん」


 そう、同じ寮に住む謎の女性。マデリーンさんの名前が一番上にある。

 マデリーンさんとは全然話したことがない……というより、会う機会が全然ない。

 学校だとクラスが違うし、寮だと自室に籠りがちで食事の時ぐらいしか出てこない。

 その食事も仕方なく取っているってくらいにはさっと食べてさっと部屋に引っ込んでいく。

 たまーに出かけているみたいだけど。一体いつも何をしているんだろうか。


「ひとまず後期の授業は受けられるね」

「そうだね! 楽しみだなあ」


 買ったナイフの出番はもうすぐのようだ。無駄にならなくてよかった。






 ガリガリガリガリガリガリガリガリ……

 教室では木の板を削る音しかしない。

 今日は手本を見ながら実際に削る作業をしているんだが、結構難しい。

 下手に横にずれたりするだけで変質してしまうときがあるので、慎重に削る必要がある。

 作業が単調になりがちだけど、集中してやらなければいけないから大変だ。

 前世で、美術の時間に彫刻刀を使ったことを思い出すなぁ。





「木の板にこの術式を刻んでください」

「できましたか? できたら魔石を設置して効果を確かめましょう」

「動きましたね。次にこの術式を足してください」

「できたらまた魔石を設置して、あまり近づかないように……木の板が割れましたか?」

「割れて正解です。この二つの術式を同じ木の板に刻むと木の板が耐え切れずに割れてしまうのです」

「もっと厚い木の板を使えば耐えられるかもしれません。別の術式であれば割れなかったかもしれません。こういった媒体の耐久度を知っていくことも大事ですよ」


 耐久度か……ていうか割れるなら言ってよ先生。びっくりしたじゃないの。

 目の前でバキィ! ってなったときは心臓が跳ねたよ。

 術式を増やせば増やすほど、刻んでいる媒体にかかる負荷が増えるってことね。

 頑張って刻んでいって、魔力を流したところで割れたら最悪だなあ。






「あー! 失敗しちゃった……」

「あらら、もう予備が無いんじゃない?」


 今は寮のラウンジで課題をこなしている。

 横でライラが術式を刻むのに失敗していた。

 木の板を削るため失敗したらやり直せないのだ。

 下手な修正は却って危ない。新しい物を用意した方がいい。


「むむ……まだ時間あるね! 買いに行こう!」

「うん……うん? 私も行くの?」

「リアも予備がもうないでしょ! 行こ!」

「そうね、別にいいけど」


 もうすぐ夕方になるが、買い物に行くだけならそんなに時間はかからないだろう。さくっと行ってこよう。




「地味に出費だよねぇ。この板」

「わかる。失敗ばっかりしてるとそのうち食費を削るようだよ」


 二人でそう遠くない場所にあるお店で木の板を購入。

 このお店には、あの学校に通う生徒が数多く利用している。

 ここで買える木の板は学校の授業でも使われているから、購入するならここがいいと担任にも言われているし。

 実際私たち以外にも何人かの生徒が木の板を買いに来ている。繁盛してそうだね、この店。




「リア?」

「え? あ、エルシーナさん。セレニアさんとクラリッサさんも。こんばんは」

「ああ、こんばんは」


 寮へと帰る途中、エルフ三人に会った。こんな広い王都でなんという偶然。


「その子はお友達?」


 エルシーナさんがライラを見ながら聞く。紹介しておくか。


「はい。学校の友人のライラです」

「ライラです、はじめまして」


 ペコリと頭を下げるライラに、この前お仕事で助けてもらった人たちだと紹介した。

 三人も名乗りお互いの挨拶もする。


「あー、この前すごい美人に助けてもらったとかいうあれね」

「余計なことは言わなくていいの!」


 本人たちの前で言わないでよ恥ずかしい!

 ほらちょっと苦笑いされてる!


「ライラちゃん、リアは学校ではどんな子なの?」


 首をかしげながらライラに尋ねるエルシーナさん。何聞いてるんですか!


「そうですね……。成績も上位組ですし、見た目がこうですから男性からはモテモテで、女性からは嫉妬と羨望の眼差しで見られてますね。告白して玉砕される男性が後を絶ちません」

「なんでそんな話をするの……ライラ以外に友達がいないみたいじゃん……」

「それはお互い様だから大丈夫」

「なにが?」


 なにが大丈夫なの? どういうこと? もしかしてライラって私以外に友達いないの? でも私よりは女子生徒と会話してるよね?


「リアはモテるんだね……」

「え? ええ、まあ。そうみたいですね」


 ちょっと沈んだ様子のエルシーナさん。どうしたの?

 もしかしてエルシーナさんってあんまりモテないのかな……。きっと美人だから遠巻きにされてるだけですよ!


「エルシーナさん美人だから大丈夫ですよ! 美人過ぎて声がかからないだけですって!」

「……そうだね、ありがとう」


 そんなに気にしてるのかな……。

 でも後ろでセレニアさんとクラリッサさんが笑っているように見えるから、きっと気が付いていないだけでモテモテなんだろう。

 こんな美人で魅力的な人を放っておく人なんていないでしょ。


「……そろそろ帰んないと、暗くなってきちゃうね」


 なぜかちょっと笑っているライラに言われ、気が付く。


「あ、そうだね。それじゃあ私たちはこれで失礼します」

「ああ、またな」

「気を付けて帰ってくださいね」

「またね」


 別れの挨拶をして寮へと急ぐ。暗くなってきてから出歩くのは、平和なこの国でも危険だからね。







「あっはっは! 美人だとさエルシーナ、良かったな」

「ふふ、そうですよ。玉砕されているって言っていましたから、恋人はいない可能性が高いですよ。チャンスですよチャンス」

「笑わないで!」



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