第31話 これからの話
後半はエルシーナ視点です
段々とガールズラブっぽくなってきた……かな?
その後注文したケーキっぽい物を食べて、今後について具体的に詰める。
私の住むコスタヴィータ王国は世界でいうと東側の大陸にある。他の国に比べると平和な場所だとエルフたちに言われた。
「あまりお金になる仕事がないし、平和だから魔法よりも魔道具の方が出回ってて少し便利ってくらいしか旨味がないのよねー」
そうだったのか。
確かに魔道具は色々あって面白いんだよね。電動歯ブラシとかあるのよ。そのうち車とか出来るのかな。少なくとも今は見かけたことないな。
物価が高い割にはお金になる仕事がないというのも大変だね。
お金持ちが住むにはいい場所なのかもしれないけど。
「次は北にでも行きますか? あそこなら『海』がありますし」
「北の『魔物の海』はさすがに危険だろう。リアがいるならなおさらだ。行くなら南か中央辺りだろう」
「あの、『魔物の海』とは?」
なんだその恐ろしい海は。この世界にも海はあると聞いていたが、見たことはない。もしかして海から魔物が上がって来てるのか。こわっ。
「この大陸は他の大陸と比べて小さいためか、『魔物の海』がないんだったな。知らなくても無理はないか」
そう言って『魔物の沼』と『魔物の海』について説明してくれた。
どうやら魔物が生まれる場所のことらしい。なにそれこわい。
でも通常の海は私の知っているものと同じようだ。まあ普通の海にも魔物はいるらしいけど。
この辺って平和だったんだね……まあ『沼』程度の規模ならおそらくどこかにあるだろうとは言われたが。
魔物がいるんだからどこかにはあるだろうね。魔物の生態なんて知らなかったけど、そんなところがあるなんて。
別の大陸に行くと危険が多い分治安が悪い場所も多いから気を付けるようにと言われた。
なおさら弱いままじゃいられなくなったな。
「南にでも行くか。あそこは広くてここに比べれば物価も安いと聞く。長期滞在には向いているだろう」
「そうだね。合わなかったら移動すればいいし」
「いいんじゃないですか」
どうやら目的地は南の大陸にきまったようだ。
移動は船かな。この世界の船の乗り心地はどうなんだろう。
「でも、本当に迎えに来なくていいの?」
「はい。こちらから向かいます」
最初は二年半後にこの国まで迎えに来ると言われたけど、それは断った。
二年で冒険者ランクが上がりきっていなかったら、移動の間も護衛依頼とかをこなして少しでも評価を上げたい。
一人旅というのは危険だろうけど、必要な経験だ。あまり甘えすぎるのも嫌だし。
「無理はしないでね」
「はい。ありがとうございます」
その後、彼女たちが移動するのはもう少し先にして、何度か共に魔物討伐などの仕事をしてお互いの戦闘スタイルを把握したり親睦を深めたりしようと約束し、その日は別れた。
●
リアと別れ、三人で宿に戻ってくる。周りにセレニアとクラリッサしかいない状況になり、ようやく胸の内を吐露できる。
「すっごく可愛かった……」
まさかあんなに可愛い子だったなんて。なんだろう、胸がどきどきしてる。
「どうしたエルシーナ」
「確かに可愛かったですけど」
セレニアとクラリッサが二人して「何言ってんだこいつ」みたいな顔を向けてくる。ひどい。
「あんな……あんなに可愛いなんて聞いてない!」
リア。新しく仲間に加わった可愛らしい女の子。
笑顔が本当に可愛らしかった。最初に挨拶したときから可愛すぎて抱きしめたくなったし、お願いするときの不安そうな表情が嬉しそうな笑顔に変わったときなんて思わず胸がキュンってしちゃうくらいには可愛かった!
しかも髪もサラサラしてそうだったし、頭を撫でようと手が何度出かけたことか!
「誰も知らなかったしな」
「エルフだって可愛い人いっぱいいるじゃないですか」
「エルフにはあんな純粋な笑顔できるやついないじゃん!」
「否定はできんな」
エルフは狡いやつが多いし、成長速度も遅いから人間の十二歳くらいの見た目でも中身はもっと上だったりするし。
あんな純粋な笑顔を浮かべるやつなんてほとんどいないよ!
「すぐに連れていきたい……」
「犯罪者になるつもりか? さすがにどうかと思うぞ」
「やらないけど!」
「あと二年半待てば一緒に居られるでしょう。もう少しの我慢ですよ」
二年半かぁ。長いなぁ。
でも彼女自身がその期間は強くなるために修行したいって言っていたんだし、待っててあげないとなぁ。
「二年半……十五歳……」
「……エルシーナさんとはそれなりに長い付き合いだと思いますけど、ああいう子が好みなんですね」
「お嫁さん探しが旅の目的とか言ってたな。見つかって良かったな」
「ちが、ちがっ……くないけど! 気が早いよ!」
確かにそういう人を探そうかなとは思ってたけど……! まだそんな関係じゃないし!
でもあの子が私の……こ、恋人になったりしたら……ひゃあああ!
「顔がにやけているぞ」
「顔が面白いですね」
失礼な!
どうしよう、どうしよう! え、まさか、本当に? わたしが一目惚れなんてことがあるの……?
「どうしよう!」
「知らん」
興味なさげにベッドに座るセレニア。冷たい!
「人間は結婚するのが早いって聞きますし、早い段階で意識してもらえるようにしておかないと、故郷を出てくるときに婚約者とか作って来てしまうかもしれませんよ」
「うぐ……わ、わかってるよ」
クラリッサからの忠告には同意するけど、だからってどうしたらいいのかわからない。
言い寄られたことはあっても、自分からなんて一度もない。どうしよう!
「私情を挟んで戦闘が疎かになるようなことはするなよ」
「しないよ!」
わたしをなんだと思ってるの! それくらいの分別はついている……はず!
情けない姿を見せるわけにはいかないし、むしろ張り切らないと!
リア、かぁ。早くまた会いたいなぁ。まずは敬語を崩すところから始めようかな。




