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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第2章 王都学校編
29/212

第29話 地獄と天国

 昼食も食べ終わり、ライラと別れ昨日のエルフのお姉さんたちに会いに行く。


 髪ツヤツヤ! 服装も清潔! さすがに化粧はしていないけど、まあ見れる顔にはなってるはず。

 いつも街中を歩くときは、父からもらったコートを着てフードをしているので、今はフードを外す。

 礼儀って大事よね。ライラの横ではずっと被ってたけど。

 手土産あった方がいいかなあ。でも邪魔になるかな。

 エルフって食べられないものがあったりするかな。変な物渡して失望されるのは嫌だしなぁ。むむむ。


 待ち合わせ場所は販売と飲食スペースが両方ある甘味処――カフェっぽい飲食店だ。

 お店の前に着いたけど、三人の姿は見えない。

 中に入っているのかな。でもお店の前って言われたし、外で待ってる方がいいのかも。

 このお店には入ったことないけど、美味しいのかな。持ち帰りできるみたいだし、今度買いに来てもいいかも。


「おや? リアさんじゃないか! やっぱり僕たちは運命なんだね!」

「うげ……」


 突然男に話しかけれられる。

 誰だこいつ。王都の知り合いなんて学校関係者だけだから、生徒だとは思うけど。前に運命とかいって告白してきたやつがいたような……。


 私の嫌そうな声は彼には聞こえなかったようで、距離を詰めてきた。来るな。

 ああもう、フードを外してたのがあだになったな。なんでこういうやつには危機察知が反応しないんだ。


「このお店が気になるのかい? なら僕がごちそうしてあげよう!」

「ちょ、ちょちょちょ! ちょっと待って!」


 私の身体に触れながら店内に入ろうとする男。触んな!


「ここでは待ち合わせをしているので、申し訳ありませんが、また別の機会にしていただけませんか」


 別の機会なんてないけどな。名前も知らん男と何故こんなところに来なきゃいかんのだ。

 すると男は心底意味がわからなさそうな顔をして


「僕より大事なものがあるのかい?」


 とか言い出した。あるわ!

 むしろお前より下を探す方が大変だよ!


「申し訳ありません」


 下手なことして居座られても困る。謝るからさっさと帰ってくれ。


「そうか……では次の休日は僕のために一日空けておいてくれるかい?」

「……明日から後期の授業ですし、難しいんじゃないですかね」


 勉強忙しいからダメと遠回しに告げる。事実どれくらい難しくなるのかわからないし。


「ふむ……確かに障害を乗り越えた後の方が恋心も増すというもの。仕方ない、ここはおとなしく身を引こう」

「よか……申し訳ありません」


 いかん、うっかり口が滑るところだった。


「ではリアさん。また明日会おう」

「……さようなら」


 何故かウィンクをされた。気持ち悪さに鳥肌が立つ。

 二度と会いたくない。せっかくのいい気分に水を差さないでほしい。


 私の外見以外に興味なんかないくせに。運命とか笑える。




「こんにちは。昨日の子かな?」


 しばらく男が消えてった方を睨むように見てたら、後ろから声をかけられた。


「あ! そうです!」


 返事をしながら振り返ると、そこに美女が三人いた。


「リ、リアと申します」

「エルシーナよ」

「セレニアだ」

「クラリッサです」


 う、美しすぎる! なんだここは天国か!? 

 昨日見た時点で美人だと思ってたけど、今改めて見たらとびきりの美人だったわ。あの時の私は意識が朦朧としてたんだな。

 みんなすっごく美人なんだけど、特にエルシーナさんが別格! 

 エルフは何度か見かけたことあるけど、みんな本当に顔面偏差値高いよね。


 エルシーナさんは背が高いお姉さんって雰囲気。

 背中くらいまで伸びた金髪、スラリとした長身、優しさを感じる微笑み……? 

 なんかちょっと目がぎらついている気がしなくもないけど、どうしたんだろうか。午前中に魔物討伐でもしてきたのかな。

 あまりの美しさに今にも落ちそう。外見がもう私の好みのど真ん中。どうしよう、一目惚れしちゃう。

 いや、落ち着け、私が恋なんてしたらろくなことにならないのは前世で学んだ。

 慎重に、気にしすぎず、貴女には興味ありませんよくらいの態度でいなければ。よし、大丈夫。


 セレニアさんは少しつり目で厳しそうな印象があるけど、それがまた美人度を押し上げてて美人でイケメンって感じがする。

 短めの髪が良く似合ってる。カッコイイ。


 クラリッサさんは二人に比べたら少し背が低めだけど、逆にそれで可愛らしさに拍車がかかってて、美人だけど、どちらかというと可愛い系だ。

 しかし三人の中で一番体つきがいいというか、筋肉が付いているというか。気になる程ではないけど。

 確か回復魔法をかけてくれたのは彼女のはず。もしかして回復の杖って重いのかな。


 この人たちに会えただけで異世界転生した甲斐があったな……幸福……。

 さっきの男のことはすっかり頭から消えた。


 ここで話すのもあれなので、お店に入ることに。

 飲食スペースの人気の少ない奥の方に座り、ひとまず注文をする。


 この世界に来てから甘い物はあんまり食べられていない。

 たまにハチミツを食べるくらいだ。髪に使うから食用は少ししかないんだけどね。

 でも砂糖やバターなんかは少し高いが手に入らないものではない。

 なので、甘味は贅沢品ではあるが民衆の手が届かない希少品とまではいかない代物となっている。

 アップルパイとかパンケーキとか前世に似たものも多い。美味しそう。食べたい。食べよう。


 食が美味しいというのは、生きる上で大事な要素である。転生先がこの世界で本当に良かった。


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