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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第2章 王都学校編
27/212

第27話 その頃 <エルシーナ視点>

終始新キャラ視点になります。少し短いです。

 

「それで、どうする予定なんですか?」


 王都の宿に帰って来て、クラリッサがセレニアに尋ねる。わたしもそれは気になるところだ。


「あの女の子のことか? それはもちろん、お礼としてじっくり調べさせてもらうさ」

「セレニアはホントにそういうの好きだよね……」


 思わず呆れてしまう。セレニアの魔法、もとい魔力回路への探求心は異常だ。

 今日助けたあの女の子。その手から発生した魔法と言っていいのかわからないアレに、セレニアが目を付けないわけがない。

 向こうがお礼を言いだした時のセレニアの捕食者のような目に、あの子は気が付いただろうか。


「それはまあ予想通りですけど、そう簡単には無理じゃないですか? 本人の意思はもちろん、それ以外でも」

「ふむ、確かにな」


 あの女の子はどう見ても子供だった。

 身体に刻まれた魔力回路は肉眼では見れないはず。調べるには相当時間がかかるだろう。

 あの子はそんな時間が取れるような自由な立場にいる子だろうか。


「彼女自身が魔力回路図を持っていれば時間など必要ないが、そうでなければ時間が必要だな」

「つまり、その間は旅に連れていくということですか? それとも終わるまでここに?」

「私はどちらでも構わないが」


 あの子を旅に連れていく。つまり冒険者パーティとして同行するということになる。

 武器を持ち森に一人でいたあの子が冒険者じゃないとは考えにくい。


「人間の子供かぁ……」

「寿命差など今に始まった話じゃないだろう」

「そうですけど……」


 まだ若いあの子が一生を終える間、わたしたちは見た目も変わることなく居続けることになる。

 人間は百年も生きることができない。わたしたちはその何十倍も生きるのに。


「まあ、わたしもどっちでも良いよ」

「そうですね……たまにはいいんじゃないですかね。ここから離れるかはあの子次第ですし、そもそも寿命を気にするほど長く一緒にいるかもわかりませんし」

「そうだな。よし、これで気兼ねなく誘える」


 あの子の持つ魔法を調べる気満々なセレニア。ここで否定をしていたら彼女一人で別行動していたかもしれない。

 それにしても、とクラリッサがつぶやく。


「どんな経緯であんな魔法を持つことになったんでしょうね」

「その辺って突いて平気なのかな」

「非合法な研究所での不幸の産物だったらどうします?」


 クラリッサが脅すように言うが、可能性を否定できない。それほど異質な魔法だった。


「話したがらない可能性はある。が、見せてくれるまで諦めないぞ私は」

「優しい子だったから断らないとは思うけどさ……」

「……ほどほどにしてくださいね」


 回復魔法の杖をはじいたのも、剣を振ったのも、近寄るなと叫んだのも。そのどれにも殺気なんて籠っていなかった。

 ただただわたしたちに危害を与えないようにととった行動だったんだろう。

 きっと根は優しくて良い子だと思うけど……。


「握りしめるって、異常な気がする」

「手が弾け飛んでましたねぇ」


 爆発が起きる魔法なのか、効果がよくわからない魔法だったけど、放出される魔法を手で抑え込むなんて普通するだろうか。

 あれを、会ったばかりのわたしたちに危害を加えないためにやったとでも言うのだろうか。


「見てて不安になるなぁ」

「まあ、変わった子なんだろうな」


 今わたしたちが気にかけたところで何かが変わるわけでもないから、放っておくしかないけど。




「正直、あんまりこの街っていうか、この国に長居するのはやだなあ」


 今後の行動はあの子とセレニア次第だけど、この国はあんまりおもしろくない。

 魔物は少なくて弱いし、お金にならない仕事ばかりだ。

 平和だけど、手持ちのお金に余裕があるわけでもない。


「エルシーナさんに同感ですね。ここは魔物も少ないし、物価も高いしで退屈です」

「そうだな……確かに平和な場所だ。私としては面白い魔道具が多くていいんだが。やはり『魔物の海』が無い国は魔法に関して遅れていると言える」


 世界には真っ黒なドロドロとした液体が溜まった沼のような場所が突然生まれる。

 そこで魔物が生まれ、世界中に飛び散る。


 大小問わずこれが世界中の山々や森の奥にひっそりとあり、埋め立てようにもいくら土を沈めても一向に満たされる気配がないんだとか。

 これを『魔物の沼』といい、海から生命が生まれたことになぞらえて、『魔物の沼』の中でもとびきり大規模なものを『魔物の海』と呼ぶ。

 大昔に封印された邪神の力の一部だと言い伝えられているらしいけど、本当かどうかはわからない。


「しかしあの子は子供だからな。無理矢理連れ出せば犯罪者になってしまう」

「それは本当にやめてね?」

「セレニアさんならやりそうですね」

「失敬な。分別くらいついている」


 どうだか。セレニアは魔法のことになると目の色が変わるから。


「ひとまず明日色々聞いてみてからだな」

「そうだね」


 あの子は無事に家に帰れただろうか。元気になってるといいけど。



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― 新着の感想 ―
[一言] えっ、未だ幼いとはいえ優秀気味のリアさんが一瞬で死に掛ける場所なのに緩いと思われるのか。。。
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