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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第2章 王都学校編
21/212

第21話 一人でお仕事できるもん

サブタイに悩んだ結果こんなタイトルに……

 今日はお出かけ。一人で寮を出て、向かう先は冒険者ギルド。

 初めてお一人様で冒険者活動をする。早速依頼を受けに行こう。

 昨日武器を腰に携帯できるベルトを購入できたので、今日はそれで剣を持ってきている。

 杖は悩んだ末に風と土を持ってきた。二つまでなら背負っていても大丈夫だろう。

 他は持ち物で代用するしかない。やっぱり魔道袋が欲しいな。


 朝なのでギルド内は人で溢れかえっている。

 今はGランクなので、Fランクの依頼掲示板を見て、できそうなものを探す。

 魔物討伐、薬草採取、荷物運び……うーん。無難に討伐系でいいか。採取もできそうならやっておこうかな。


 適当に依頼書を引っ掴み、受付に持っていく。

 受付の人に一人で受けるの? みたいな顔をされたけど、大丈夫なので早くしてほしい。王都は広いから移動に時間がかかる。

 無事に依頼を受注できたので王都の外へ。


 そう遠くない場所にある森の中に入り、薬草を探しながら歩く。

 危機察知能力もいいけど、探査の方が便利だったかなぁ。


「ゴブリン二匹目っと」


 剣でサクっとゴブリンを真っ二つにする。魔石を取り出し、残りは埋める。手間だなあ。


「ウルフは解体が面倒なんだよね……」


 続いて倒したウルフの毛皮と肉と魔石を取り出す。内臓は処分。水が無くなっちゃうな。


「んー? なんか大きいのいるねえ。ぞわぞわする」


 ゴブリンともウルフとも違う、もっと強いのに見つかったらしい。

 反応している方を見ると、バキバキと枝がへし折れる音がする。ああ、あれかあ。


「熊……ジャイアントベアーだっけか。確かEランクの冒険者辺り推奨ってさっき見た気がする」


 まあ、だからといって慌てていては勝てるものも勝てなくなる。偉い人との会話ではこうはいかない。貴族を相手にする方がよっぽど緊張する。

 ジャイアントベアーの特徴は、二足歩行、二メートルを超える体躯、固い体毛、大きく鋭い爪だ。

 まずは、あの固い体毛をどうにかしないと攻撃が効かない。風魔法が効くだろうか。


 ズンズンと近づいてくる熊に風魔法の杖を構える。すると向こうも臨戦態勢になり、一気に距離を詰めてきた。

 近づかれる前に撃つ。しかし、予想していたよりも速い動きで避けられる。あの図体であんなに速いのか。

 だがここで諦めるつもりはない。二、三と連続で繰り出す。二は避けられたが、三は熊の肩辺りを掠る。

 毛がパラパラと落ちるだけで効いているのかわからないな。


「よっ、とぉ!」


 近づいてきた熊の大振りな爪を避ける。当たった木の枝が真っ二つになった。切れ味抜群ですね。


「次は、これ!」


 腰につけていた剣を抜き、そのままの勢いで横なぎする。しかし後ろに下がり躱される。


「長期戦になりそう」


 風の杖を背中に戻し、剣を熊に向ける。負けるつもりはない。



 昔……というか、前世での話だけれど。

 学校の授業で剣道を習ったことがある。面を被り、竹刀の振り方を教わった。

 今私が振っているのは両手剣だ。あの時の竹刀の振り方をこの両手剣に落とし込む……ことはハッキリ言ってできない。

 竹刀は日本刀のような軽い剣を使うことを前提としているので、この両手剣のような重い剣を振るのには、あの振り方では隙が大きくなってしまう。

 もちろん一撃で葬れる自信があるなら問題もないだろうけど。

 両手剣で攻撃するには、剣を止めずに振り回し続けるのが基本だ。

 そして足の運び、これを組み合わせることによって動きに多様性が生まれる。

 剣の勢いを殺さず、攻撃を続け、相手の攻撃を受け流す。これが両手剣の基本。

 斬るというよりも叩くに近そうだけど、それはその人の技術と剣の切れ味次第かな。


 そんなわけで、両手剣は疲れる。

 腕がキツイし体力もキツイ。この両手剣を振り回すのに、私に足りていないのは腕力だろう。

 もしかしたら私に両手剣は合っていないのかもしれない。ただ父が両手剣を使っていて、これを父から教わったから使っているだけだ。

 もう少し軽い剣……というか、片手剣に変えた方がいいかもしれない。

 日本刀に近いものがあるならそっちの方がいいかな。斬るのに特化した剣がほしい。

 だがしかし、そういう物はお高いのだ。買えるのはいつになるかわからない。

 それまではこの剣と長いお付き合いをすることになるだろう。




「埒が明かない」


 剣だと切れたり切れなかったりして上手くダメージを与えられない。このままじゃジリ貧だ。

 熊は傷を負わされて腹が立ったのか、先ほどよりも動きが速く、攻撃が強力になっている。


「最後の手段はなあ……上手くいくかどうか」


 最後の手段、それは例の爆弾だ。これに魔力を込めて熊に投げれば勝てるだろう。

 熊のミンチと大やけどの私が残るだろうか。それは困る。


「やめやめ、ここまで来たら剣で勝つ」


 幸い効いていないわけではない。狙う箇所を絞ればなんとかなるだろう。

 私には足の速さもあるんだし、存分に活かそう。

 危機察知のおかげでケガもしてないし。もっと力があればいいのになぁ。





「と、ど、めぇ!!」


 ザクっと剣を頭部に突き立て、ようやく熊が倒れる。すごく疲れた。

 これでお金か評価にならなかったら許さんぞ。もう死んでるけど。


「はあ……つかれたー」


 さっさと解体しないと夜までに戻れなくなる。

 もうすぐ夕方だ。今から解体して王都に戻って、ギルドに行って……時間がない。


「休む間もない」


 固くてこれまた解体に時間がかかるな……もうっ。



 なんとか解体を終え、王都まで無事に帰りついた。荷物が重すぎる。

 混み始めたギルドの受付に並び、依頼の品を渡す。


「はい、確かに。依頼品をお預かりします。そちらの荷物もでしょうか?」


 受付のお姉さんが指したのは肩に背負っているジャイアントベアーの肉とか毛皮とかが入った布袋だ。

 こうやって背負っているとサンタさんの気分だね。真っ赤な服は熊の返り血で染めたのっ。


「これはジャイアントベアーの肉とかですね。依頼品ではないです」

「ジャイアントベアー……!? 買い取り希望でしょうか?」

「そうです。重いんで」

「でしょうね。こちらでお預かりします」


 一瞬驚いていたが、すぐに表情を戻して話を進めたお姉さん。ベテランですね。

 買取専用の受付に並ばないといけないと思っていたけど、ここで買い取ってくれるようだ。助かる。

 依頼品と合わせて合計の査定額を出してくれるそうだ。

 受付のお姉さんが依頼品や熊肉を後ろでバタバタ忙しそうにしている人達に渡して戻ってくる。


「あれはどなたかと一緒に討伐されたんですか?」

「いえ、一人で討伐しましたよ」

「そうですか。では少々お待ちください」


 そういってまた席を立ったお姉さんは奥の部屋へ入って行った。

 しばらくすると手に何かを持って戻って来た。


「お待たせしました。リアさんのランクがFに上がりましたので、こちらが新しいプレートになります」

「ありがとうございます」


 やっとFに上がった。長かった。二年もかかっちゃったよ。


「そしてこちらが依頼報酬と、ジャイアントベアーの買取金額を合わせたものになります」


 おお、結構ずっしりとした重さだ。いつもより多いね。

 ジャイアントベアーってそんなに高く売れるのか。でもあんまり綺麗には倒せなかったし、むしろ少ないのかも。次はもっといい戦いをしたい。


 プレートとお金を受け取り、お礼を言ってギルドを出る。

 すっかり夜になってしまった。早くしないと寮に入れなくなる。

 さすがに今から宿を探す気力なんてない。さっさと帰ろう。



 王都の中を走り、寮にたどり着く。まだ鍵は開いていたので中に入る。


「はあ~間に合った」

「おかえり。遅かったね」


 息を切らしながら玄関に座り込んだところでライラに声をかけられる。

 ライラはラウンジで本を読んでいた。寮内は夕食のいい匂いがする。ああ、お腹空いた。


「今日また二人ほど入って来たんだよ。あとで挨拶しといたら?」

「ああうん。疲れたから明日にする……」

「なんだか汚れてるね。何してきたの?」

「お仕事。お風呂……でもお腹空いたな」


 とりあえず、荷物を部屋に置いてこよう。剣も杖も疲れた身体には重たく感じる。


「あらリアちゃん。おかえり。夕食は食べる?」

「ディーナさん。ただいま戻りました。食べたいです。お腹すきました」

「ふふ、とりあえず荷物を置いてきなさい。食事を用意しておくから」

「わかりました」


 部屋に荷物を置いて食堂へ。後で剣の手入れをしておかないと。


「はいどうぞ」

「いただきます」


 ディーナさんから食事をもらう。昨日より多めな気がするが、今のお腹の空き具合なら平らげられるだろう。おまけしてくれたのかな?



「こんばんは」

「ちょっといいかしら?」


 食事にがっついていたら声をかけられた。昨日は見なかった人たちなので、今日入寮してきた人たちだろう。

 ボブくらいの茶髪、可愛らしい顔立ちの二十歳前後のスレンダーな背の低い女性と、同じく二十歳前後の偉そうな切れ目美人だ。大きな胸に目が行くのは仕方ないことだと思うの。

 食事終わってからじゃダメ?


「こんばんは。何でしょうか」


 ひとまず口の中の物を飲み込んでから答える。


「食事中にごめんね。今日からこの寮にはいったの。メリッサよ。よろしくね」

「私はナターシャですわ。以後お見知りおきを」

「リアです。よろしくお願いします」


 そして食事を再開する。早くお風呂に入って寝たい。


「それじゃあおやすみ。また明日ね」

「ごきげんよう」

「はい。おやすみなさい」


 なんだ。絡まれるのかと思っていたけど、素直に部屋に戻っていった。

 部屋に戻りたかったけど私が来ちゃったから仕方なく食事中にみたいな? まあいっか。


「はー。ごちそうさまでした」


 満腹だ。食器を片し、部屋に戻る。剣の手入れは今日中にしておかないと。明日は休暇に当てようかな。

 今日はお金が結構手に入ったし、武器や魔道具を見に行ってもいいかもしれない。でもこの様子だと昼まで寝ちゃうかもなあ。

 手入れを終えお風呂に入り、疲れた身体をおして部屋に入ったところから記憶がない。途中で力尽きたようだ。体力が足らないね。


評価やブクマを貰えて嬉しいです。心から感謝いたします。

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