第202話 今後の話し合い
「と、いうことでした。結局その一回しか斬れなかったよ」
いつも四人で集まって食事をとる。その際、エルシーナとセレニアにも鉄を少しだけ斬ることができたと伝える。
あの後も何度も挑戦したけど、結局二度目を拝むことはできなかった。残念。
でも斬るには斬れたので、二人にも報告した。
この中で実力が一番下であろう私の自慢など、子供の自慢話のようなものだ。でも言いたかったので話したし、パーティ内での実力の情報共有も大事。
そういうことにしておいて。でも褒めて。斬れたことが嬉しかったから。
「一回でも十分すごいよ」
「その年でそこまでいけるとは。諦めずに毎日修練を続けた結果だな」
「ふふ~」
べた褒めしてくれる。エルフたち優しくて大好き。
私が鉄を簡単に斬れるようになれば、このパーティの実力も底上げされるってものですよ。うん、頑張ろう。
「でも、まだまだこれからだよ」
「そうなの?」
浮かれた気分の私にエルシーナが釘を刺してくる。まだまだ道のりは遠いという予想はしているけど。
「動かない鉄を斬れても、動いている状態だと斬れないって人多いからね。わたしも動きながら鉄を斬れるようになるのに更に数年かかったもん」
「あー……」
そりゃそうよね。アイアンゴーレムだって動きが遅いとはいえ動いてはいるし、自分が動き回りながら斬るのだって大変だ。
剣を使い始めた頃も、比較的柔らかい物だって動いている相手を斬るのは大変だった。
そう考えれば本当に今はスタート地点に立ったばかりでしかないんだ。
「うーん……あと何年かかるやら」
「リアならきっと大丈夫だよ」
「頑張る」
「そういえば」
エルシーナに励まされ今後も努力を続けていこうと決意を新たにしたところで、クラリッサが何かを思い出したように言葉を発する。
「腕の魔法の分析も結構進んだんですよね?」
「ん? そうだね」
ついこの間のことだけれど、腕の部分の魔力回路の分析が大分終わってきたとクラリッサとエルシーナには伝えてある。
片腕しかやってないけど、たぶん反対側の腕も同じものだと思うんだよね。反対側も分析するとなるともっと時間かかるだろうな。
「リアさんって腕の分析が終わったらどうするんですか?」
「んー……あー……決めてなかったなぁ」
そっかぁ。そういえば、腕の分析をするために一緒にいるんだよね。
でもパーティメンバーではあるし……どうなんだろう。分析が終わった後も一緒に行動してもいいのかな。
一緒にいたいとは思うんだよね。
楽しいし、セレニアにはいろいろバレてるし、クラリッサと一緒にトレーニングをするとやる気も継続するし……エルシーナとも、ね。
あ、でもさすがに……。
「一回はガリナに帰って親に顔を見せに行こうかなぁ」
さすがにもう年単位で帰ってないし、最近の手紙にはいつ頃帰ってくるのかという内容も書いてある。一度は帰った方が良さそうだ。
「そうですねえ。仲の良い親がいるのなら、顔を見せに帰った方が良いとは思いますね」
クラリッサの言葉に、他のエルフも頷いている。
言葉に含みを感じるのは気のせいじゃないだろうけど、そこを突いても気まずくなるだけだと思うので何も言わない。
「その後はどうするの?」
「うーん。また旅に出ると思う」
少なくともガリナに留まるという選択肢はないな。
もちろん両親の状態次第ではあるけど。実は病気になっていたとか、ケガをしていたとか、そういった並々ならぬ事情があれば家に留まるよ。
「じゃ、じゃあ、これからも一緒にパーティ組んでも良いんじゃないかな」
「それはまあ、みんなが良いなら、そうしたいかな」
エルシーナが今後も一緒にどうかと提案してくれたので、私としてはそれに乗っかりたいかな。ちょっとどもったのはどうしたのかわかんないけど。
クラリッサとセレニアはどうだろう。
「ワタシは構いませんよ。人数多い方が戦闘も楽でしょう」
「そう言ってくれると嬉しい」
戦力として期待してもらえるのはとても嬉しい。修行してきた甲斐がある。やっぱり他人に努力していることを認められるのは特別嬉しいよね。
クラリッサも了承、セレニアはどうかな?
「そうだな、戦力としてはもちろんだが、私としては脚の分析もしたい」
「ああー……セレニアらしい。脚かぁ。脚も調べたいねぇ」
どうやらセレニアは腕だけじゃ満足できないらしい。
脚も女神様謹製だからね。普通の身体強化とどこか違うところがあるのか、調べてみたい気はする。
「ひとまず腕の分析が終わったらガリナに帰ろうかな。脚はその後戻ってきてから。脚までやってからだと、何年かかるかわかんないし」
たぶん一年以内には爆弾の魔力回路は解析できると思うんだよね。それくらいで一度帰る方が良いだろう。
「一人で帰るの?」
「そうね……というか、三人は何か用事ないの? 魔力回路の分析終わったらどうするとか決まってないの?」
一人で帰るしかなくないですかね。この三人が東大陸に用があるというのなら一緒でも構わないけど。
脚の分析をするなら、どうせまたこうやって家を借りて魔力回路の分析をすることになるんだし、ちゃちゃっと行って戻ってくるので良いんじゃないかとも思う。
「わたしは別に」
「ワタシも特にないですね。帰る気がないだけで、どこかに行きたいというわけではないのですよ」
そういえば、エルシーナとクラリッサはエルフの国が嫌だから旅に出たって言ってたね。
じゃあセレニア次第なのかな。
「セレニアは?」
「私としては解析した術式を使って魔法を創りたい。素材をここで集めておくことができるのであれば、場所はどこでもいい」
杖の素材になる金属をこの大陸で集めたいのか。
金属だったらこの辺りに生息しているゴーレムたちが一番良いだろう。
素材やその他お金等が大量に手に入ってしまえばこの大陸にいる必要はないけど、万が一足らなくなった場合を考えたらここの方がいいのかも。
「なるほどね。魔法や魔道具を作るのには、ここは結構いい場所よね」
「そうだな」
素材は集まる、お金も稼ぎやすい。もちろんゴーレムを倒す腕があればの話だけど。
食事は野菜が多めだけれど、隣の国へ行けば美食の街がある。食糧難になるような場所でもない。
その辺りを踏まえると、この大陸はとても過ごしやすいね。




