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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第6章 中央大陸・ものつくり編
201/212

第200話 喜んでもらえると私も嬉しい

「エルシーナさん、ワタシにも貸してください」

「あ、じゃあわたしとリアで撮って」


 クラリッサがカメラを受け取り、エルシーナが私の横に立つ。身長差のせいで遠くからじゃないと映らないかな。


「これでいいんですよね?」

「うん。大丈夫だと思う」


 ピントを合わせるのに四苦八苦していたけど、どうやらちゃんと撮れたらしい。ぼやけていない、しっかりした写真が出来上がっている。


 慣れればこんなカメラでも平気だけれど、やっぱりオートフォーカス機能が欲しいね。さすがに難しいかな。

 それよりもレンズの方を進化させて、ズーム機能やレンズを前後に動かしてピントを合わせるなどの仕組みを搭載する方が現実的かも。次のカメラはもっと高性能にしたい。


「このカメラというのは売らないのか?」


 その後も何度か写真を撮ってみんなでワイワイした後、セレニアに問われる。

 魔道具ギルドに売るのかってことか。


「ちょっとねー、使っている術式に問題があって……人前に出すのは難しいかも」


 カメラには私の頭に刻まれていた術式を使用している。既存の術式では作れないものだったからだ。このカメラのためだけに頭の魔力回路を分析したっていうね。

 なので、このカメラを公表するということは、女神様が刻んだ新しい術式を公表することと同義になるわけだ。


 魔道袋からその術式が書かれた紙を取り出し、セレニアに渡す。

 それを受け取ったセレニアがしばらく紙を眺め、驚きを隠せない様子で言葉を発する。


「これはなんと……画期的な術式だ。これが公表されたら間違いなくリアの名前が本に載るな。リアが作ったのか?」

「その辺りはちょっとね、内緒にしたいのよ。だから身内で楽しむ程度にしておこうかなって。エルシーナもあんまり人前では使わないようにね」

「うん、わかった」


 女神様の作った術式だからなかなかに高性能なんだけど、それ故に自分のものとして公表するのに抵抗がある。

 これが公表されるだけで世の中の魔道具や魔法の品質がレベルアップしそうなものなんだけどね。


「もったいないが……私が強制することではないな」

「ごめんね。内緒にしててくれるならその術式の紙はあげるよ」

「ホントか。なら私は何も言わない。これがあればいろいろと捗る」


 セレニアは嬉々として術式の書かれた紙を丁寧に折り曲げて懐へとしまった。意外とそういうところ現金よね。



 その日の夜、寝室でもエルシーナはカメラを眺めたり写真を撮ったりしていた。でも暗いと映りも悪そうだ。フラッシュ機能をつけるべきかもしれない。


「気に入ったみたいだねぇ」

「うん。こうやって……記録が残せるのって素敵だなって思って」


 ベッドに座り、お互いに寄りかかりながら写真を見る。今日だけで何枚撮ったかな。

 たまにボケてしまっているのもあるけど、大方見える写真にはなっている。カメラ第一号君なのにいい仕事をしますなぁ。


「まとめて見やすく保管しておこうね。日の光にさらさないようにするだけでも長持ちすると思うから」

「ありがとう。いつか見返して懐かしく思ったりするのかな」

「そうかもね」


 写真ってやっぱり思い出として残すものってイメージがあるよね。

 前世でも旅行に行ったら写真は必ず撮っていた。写真を撮っている時は楽しいし、いつか見返した時にまた思い出が蘇ってきて楽しくなる。


 撮った写真を眺めた後、綺麗にまとめて日の当たらない場所にしまっておく。明日にでも保存に使えそうな道具をいろいろと探してこよう。


「リアってこんなすごいもの作れるんだね」

「これはずいぶんと時間かかっちゃったけどね」


 カメラを撫でながら今日何度目かの褒め言葉をもらう。どうやらエルシーナはカメラを余程気に入ってくれたらしく、今日はずっとカメラを離さなかったよ。


 エルシーナにあげるんだったら、もう少し見た目に気を配ればよかったな。中身を完成させることを最優先にしていたから、見た目はあまり弄らなかったんだよね。

 金属製の無骨で暗い色をしているだけの、可愛らしさの欠片もないようなカメラ。重たくて持ちやすくもないし……見れば見るほど改良の余地がたくさんあるなぁ。


「次はもう少し良いカメラを作るよ」

「わたしはこれでいいよ。これだって十分良い物だもん」

「ありがとう。でも遠くの景色を撮れるようにしたり、動かずにピントを合わせられたら便利でしょ?」


 まだ近くにあるものしか撮ることができないけど、レンズをもっと改良したり増やしたりしていけばズーム機能をつけられるかもしれない。

 いや、術式で拡大ができないか試してみるのもアリだな。レンズって高価だから安く済む方法を探したい。


「それはそうだけど……」

「別に取り上げたりしないよ。また新しく作ったら、それも使ってみてって話」

「そういうことなら、楽しみにしてる」

「まあ、まだまだ先だけどね」


 カメラ第一号君が出来上がったばっかりなので、二号君はまた気が向いたら作るよ。それ以外にもやりたいことはたくさんあるからね。


 それにしても……エルシーナがカメラをねぇ。もしかしたら無趣味だった彼女がカメラのおかげで変わるかもしれない。


「カメラで時間を有意義に使えるかもね」


 みんなで撮り合った後もエルシーナは一人でカメラを構えていたし、何気ない瞬間を撮った写真がこれまた絶妙に魅力的な写真なのだ。才能があると思う。


「……いいかも。撮るの楽しいし、後で写真を見るのも楽しいから」

「なおさらもっといいカメラをあげたくなるなぁ」

「ふふ、しばらくはこれでいいよ」


 エルシーナはカメラを大事そうに魔道袋にしまい、ベッドに横になる。どうやらもう寝るつもりみたいだ。私も寝ようかな。あ、でもその前に。


「水を差すようで悪いんだけど……写真に色をつけてる魔石が安くないから無駄使いはしないようにね」

「あ、そうなの?」


 さっき魔石インクの残量を見た感じ、そんなには減っていなかったから大丈夫だとは思うけど、使えば無くなっていくものだからね。


「闇の魔石がね……手に入りにくくて……」

「ああ……気を付けるね」

「そうすぐには無くならないけど、たまに残量を確認してね」

「はーい」


 軽快な返事が聞こえたところで部屋の明かりを消して横になる。

 エルシーナの趣味ができたようで喜ばしいね。人前ではあんまり使えないのが難点だけど。いつかもっと高性能のカメラを作ってエルシーナにプレゼントしよう。

 セルフタイマー機能があれば四人で写真が撮れるかな?

いつの間にか200話に到達してしまいました。

たくさんの方に読んでもらえて嬉しい限りです。評価やブクマなどもありがとうございます。


300話いく前には完結したいと思ってます…。

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