第2話 転生しました
なんやかんやありましたが、とりあえず新たな生を受けました。
なんか気が付いたらすでに四歳でした。
転生……したんだよね? 憑依じゃないよね?
辺りを見渡せば、そこは私の家。
足の長い椅子に座りながら、目の前のテーブルに置かれたパンとスープを食べている最中だ。
「どうしたリア。食べないのか?」
リアというのは私の今世での名前だ。なかなか可愛い名前じゃないだろうか。
ぼんやりとしているように見えたのか、目の前の椅子に座っている男性が声をかけてくる。三十歳前後のガタイのいい金髪の、結構イケメンな人物。
ふむ、私の父だな。ちゃんとわかる。
「……なんでもない」
そう言って食事を再開する。前世のものには及ばないが、そこそこの柔らかさのパンと、野菜と豆の入ったあっさりスープだ。とりあえず、何事も食事をしなければ始まらない。考えるのは後でいいだろう。
食べていると、横の椅子に女性が座る。スレンダーな体格にミディアムくらいの長さの髪を後ろで纏めた若々しくて可愛らしい美人。
あー。お母さまですね。めっちゃ美人さんだ。
「ジェームズ、今日は日帰りできるの?」
「ああ、少し魔物を狩って、夕暮れ時には帰ってくるよ」
「おとうさん、どこかいくの?」
なんだ、物騒な会話だな。
「お父さんは冒険者だからな。お仕事だよ。リアはお母さんと一緒にお留守番してるんだぞ」
「おー、おとうさんすごい。がんばってね」
どうやら父は冒険者らしい。聞いた感じ、魔物退治とかがお仕事みたいだ。日帰りできない仕事も多いみたいだね。でも今日はちゃんと帰ってくるらしい。
私に応援された父はニコニコしている。ふむ、親バカかもしれんな。
「ハンナ、リアを頼んだぞ」
「わかってるわよ、当たり前でしょう」
「ハンナも危ないところには行くんじゃないぞ」
「過保護ねぇ」
そういいながらも嬉しそうな表情をしている母。我が家の家族仲は良好のようだ。
父は仕事へ、母は家事に勤しんでいる中、私はお部屋でお勉強だ。という体で自室に引きこもった。
小さいながらも一軒家のお家だけあって、私には自分の部屋というものがあてがわれている。そこで紙とペン――想像しているものよりも粗末なそれ――を使い、現状の把握に努める。
「ちゃんと父と母を認識できたんだから、おそらく転生であることは間違いない」
たぶん、物心がついたとか、自我が芽生えたとか、そういうお年頃になったから記憶が戻ったとかそういうことなんだろう。
つまりあの美人母とのリアル赤ちゃんプレイを……うーん。覚えてないのは残念。
性癖がヤバいって? 美人だからね。血のつながりなど些細なことよ。
「これからどうしようかなー」
別に何か目的があるわけでもない。暇じゃない程度にのんびりスローライフを楽しめればそれでいいのだ。そのために必要なことは何か、それを考えよう。
「まず貰った能力だよね……物騒な能力貰っちゃったな」
だいぶん曖昧な言い方だったけど、爆弾は確定なんだよね……。お腹の中にはないよね?
大丈夫だよね?
「たぶん……人間爆弾にはなってない……と、思う。特に見た目には何ともないし、違和感もないけど」
どちらにせよ怖いな。腹の中で生成してどうやって使うんだよって感じなんだけど。手から生成できるのかな。試そうにもこんなところで使えば家を木っ端みじんにしそうなので無理。
この力、私も巻き込まれて死ぬ可能性が高い。使う機会が来ないことを祈る。
やっぱり悪魔なんじゃないかな、あの神様。
「あとは、足が速くなったり、魔法が使えたり、危険を察知できたり? 祝福ってなんだろう」
わからないことが多すぎるけど、この辺はゆっくり検証していこう。まだ始まったばかりなんだから。
まず優先順位として、情報収集をすることだね。
「一般常識とかは両親に聞こう。冒険者についてもお父さんに聞けば詳しく教えてくれるよね」
いいよね冒険者。憧れる。戦えるかは別として。
「戦い方……何にも知らないんじゃちょっとなあ。お父さん教えてくれるかな」
物騒な世界みたいだし、ある程度戦えないとね。手始めに柔軟でもやってみようかな。
魔法に関しても知りたい。こればっかりは手探りでは難しそうだ。
体内にある魔力を感じ取る……ってよく聞くけど、無理よね。
世の中には耳や鼻を動かせる人がいるけど、できない人には全くできない。どこに力を入れるのかがわからないからだ。
魔力も一緒だろう。どこにそんなものが眠っているのかさっぱりだ。今のところは、ではあるけども。
「まあ、のんびりやりましょう。別に世界を救う旅に出るわけでもない」
勇敢な者とか言われたけど、それは状況証拠であって、実際にそんなものは持ち合わせていないのだ。
ゆっくりのんびり、異世界を楽しみながら、隣に可愛くて美人なおねーさんでもいれば私の人生は完璧だ。