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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第6章 中央大陸・ものつくり編
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第197話 まだまだ我慢〈エルシーナ視点〉

エルシーナ視点です

 隣で目を閉じ、机に突っ伏してしまった可愛いリアを見つめる。


「寝ちゃった?」


 ツンツンと頬っぺたを指でつつく。嫌がるように腕で顔を隠していく姿が可愛い。


「かぁわぁい~い~……」

「はあ……エルシーナさん、歩けるんでしたらリアさんを連れて寝室に行ってください。変なことしちゃダメですよ」

「しないよ!」


 失礼な。流石に寝ている子に手を出したりなんて……しないよたぶん。

 クラリッサの視線から目を逸らし、リアを運ぶために立ち上がる。

 セレニアも頭をグワングワンと揺らして今にも寝落ち……というか、倒れそうだけど、クラリッサがどうにかするだろうから任せちゃおう。

 早速寝室に連れこっ……運びましょうね~。


「りーあ、運ぶね」


 一応肩を軽く叩いてみたけど呻くだけで反応はなかったので、椅子を引いて抱え上げてお姫様抱っこ。

 羽のように軽い……とは言わないけど、わたしよりずっと小さい子だ。抱えるのに手間取ることはないね。


 わたしもお酒をそれなりに飲んだけど、珍しくお酒が進んでいたリアが可愛くて、そちらばかり見ていたらいつの間にか酒瓶が空になっていた。

 普段よりは飲み足りないけど、酔ってヘニャヘニャになっているリアが見れたから、全然良い。


「んん……ん~……? えるしー……なぁ……?」

「危ないから捕まっててねー」


 お姫様抱っこをされていることに気がついたリアは、眠たそうな目でわたしを見る。

 それから嬉しそうに、へにゃりと笑った。そのまま頭を擦り付けるように擦り寄ってくる。

 何この子可愛すぎる!!


「エルシーナだぁ」

「んん〜酔ってるねぇぇぇ」


 酔った勢いで額に口付けでもしたい……。いつもこれくらい擦り寄ってきてくれていいんだよぉ。


 手元が狂って落としてしまわないようにガッシリ抱え込んで慎重に歩き、ようやくわたしたちの寝室に入った。

 大きなベッドにリアを寝かせて一息つく。


「んー……」

「ふふ、いつもとは逆だねぇ」


 普段ならリアが酔ったわたしを寝室まで運んでくれる……らしい。酔い潰れているから覚えてないけど。


 ベッドに潜り込み、リアの隣で横になる。

 月明かりしかない部屋の中、手を伸ばせば触れられる距離まで近づいて、目を閉じているリアの顔を盗み見る。


 かわいい。


 寝ていても、笑っていても、落ち込んでいる姿でさえも可愛らしいと思う。

 この子はどうしてこうもわたしの欲をかきたてるのかな。この子からしたらそんな気はないんでしょうけど。


 ふと、リアの首元で光るチョーカーが目に入る。

 リアへの成人のお祝い、わたしたち全員でお揃いの装飾品。色違いだけれど、わたしの首にも巻かれているもの。


 喜んでもらえて本当によかった。きっとリアなら嫌がらないとは思ってたけど、いざ渡すとなると緊張しちゃったもの。

 派手でも地味でもない無難なものを選んだけど、すっごく似合ってる。


 しばらくはこのチョーカーをつけているリアを見るだけで喜んじゃうな。


 でも寝る時は邪魔かな? 外した方が良いかも。


「寝ちゃった? チョーカー外す?」

「ん……いい……」

「そう? ……寝ちゃったかな」


 わたしの声がちゃんと届いたのかわからないけど、彼女から微かに寝息が聞こえてくる。どうやら寝ちゃったみたいだ。寝苦しくないならいっか。


 ずっと寝顔を眺めていたいけど、もう夜もいい時間。わたしも寝よう。

 横向きに寝ているリアのすぐ近くまで近づいて、起こさないように優しく頭を撫でる。少し身動ぎをしたけれど、起きる気配はない。


 サラサラの銀髪を撫で、髪に指を通す。何度もそうしているうちに、僅かに耳に手が触れてしまい、眠りながらもピクリと反応してしまう彼女が愛おしい。


 だめだよ、こんなに無防備な姿晒しちゃ。


 撫でていた手を止め、わたしの指がリアの耳に触れる。そのまま頬に滑らせ、愛くるしい寝顔を眺めながらフニフニとした頬の感触を楽しむ。


 そして視線はリアの唇へ。撫でていた手を止め、ゆっくりと唇の方へ指を滑らせていき……。


「ん……」

「っ……」


 くすぐったそうに声をあげたリアに、ハッと正気に返る。


 いけない、調子に乗っちゃった。


 見れば見るほど愛おしさが湧いてしまって、日に日に彼女に触れたい欲求が高まっていく。

 まだ我慢しないと。ここで関係が崩れてしまったら立ち直れない。


 わたしはリアが好き、リアもきっと、わたしのことが好きだと思う。

 それは仲間として、友人としてって意味かもしれないけど、少なくとも嫌われてはいないはず。


 でも……まだ、足りないと思う。

 リアが同性愛者とわかって嬉しさでいっぱいだったけど、なんというか、そんなに反応してもらえていない気がする。

 一緒にいる時間やスキンシップを増やしているのに、たまに面倒くさそうだったり、こっちを向いてくれなかったり……嫌、なのかなぁ。

 もしかしてお互い同性愛者だってわかっていながら一緒に寝てくれているのは、全く意識されていないから……?


「ううん、大丈夫、焦らない……」


 小さく丸まってしまったリアの頭を再度撫で、タオルケットをかける。


 意識されていないなら、意識してもらえるまで頑張ればいい。


 この子の中で、わたしの存在がもっともっと大きくなるように。


 気は許してくれているんだから、きっと大丈夫。


 あまり時間をかけ過ぎるのは嫌だけど……焦り過ぎて嫌われてしまったら意味がないもの。


「早くわたしのこと、もっともっと好きになって」


 欲を言うのならば……この子の、生きる意味になれたら。

 そうすれば、もしかしたら、自分を犠牲にすることを止めてくれるかもしれない。

 それくらい、わたしの存在が彼女の中で大きくなってくれればいいな。


「ふぅ……」


 先の遠い妄想を振り払い、静かに息を吐く。

 リアの長い髪を一束手に取り、唇を寄せる。

 いつか彼女が起きている時に、こんなことができる日が来るのを夢見ながら、眠りについた。


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