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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第6章 中央大陸・ものつくり編
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第195話 振動ナイフ

 随分前に依頼をした、水晶のカット。

 見事に板となった水晶。私の想像通りの出来上がりとなった素晴らしい品。


 そして、それと振動するための魔力回路が刻まれた金属を用意する。

 それらを組み合わせて超音波の振動を生み出し、それをナイフのグリップ部分に仕込む。

 シェイとの共同作製により出来上がったこれこそ、いわゆる超音波カッター、もとい振動ナイフだ。


「まためんどくさそうな仕事を……」とか言われたけど、この水晶の振動部分を仕込めるナイフを作ってくれたシェイには感謝感激である。やっぱり腕がいいね。


 試しに木材やらお肉やらを切ってみたら、簡単に切断できた。どうやら無事に超音波カッターと呼べる代物にはなったようだ。

 ただ、振動しているからか熱が伝わって微かに歪んでしまう、共振してそもそも振動自体が無意味になる、などのせいで金属なんかは切るのが難しい。


 サイズが大きくなれば魔法剣として活躍してくれたかもしれないけど、水晶から振動を伝えて刃を振るわせているので、大きくするのは難しいと思ってこのサイズに収めた。

 解体用のナイフとして活躍してくれることを期待しよう。


 そしてこのナイフのグリップ部分の端には穴があいていて、そこに糸などを通すことができる。

 この前届いた、両親からの贈り物。私の成人を祝うための物。これをここに取り付けようと思ったのだ。



 この世界では成人だからと言って、盛大に祝うようなことはしない。貴族ならあるかもしれないが、平民にはない。

 でもめでたいことではあるので、こうしてお祝いの品を渡すことはあるらしい。

 親から届いたものは、どうやらお守りのようだ。同封されていた手紙には祝いの言葉の他に、これに関しての話も書いてあった。


 見た目は小さな青い石。指一本の半分くらいの大きさだろうか、八面体の綺麗な石だ。

 どこかに取り付けられるように、周りを金属で加工してくれている。


 この石自体はガリナからそう遠くない場所で偶に採れる鉱石で、宝石ではないけれど、それなりの値段で売っている。

 それを綺麗な見た目になるよう削って磨いて、出来上がったものを神殿の神官に依頼をして、女神様の加護が得られるよう一日お祈りをしてもらったものだそうだ。

 神殿ってそんな仕事もしてたのね。



 ここからが驚きなんだけど、なんとこの石には実際に女神様のご加護が宿っているらしい。



 通常は祈りを捧げてもその物に変化など起きない。よくある祈ったことに意味がある、願掛け、みたいな話だね。


 しかし、神官がこの石を台座に乗せて女神様に祈ったところ、なんと石が眩い光を放ったという。

 すぐに光は収まったが、石を見ると明らかに祈る前と後では輝きに違いが出ていたのだ。


 これは受け取った両親にもわかるほどの違いだったらしく、この石は本当に女神様からご加護を頂いたのだと確信した……といった内容が手紙に書かれていた。


 昔からこの女神様からご加護をもらうために祈るという慣習はあったそうで、今までにも極々稀にではあるが、実際に光を放ったことがあったそうだ。


 そんな滅多に起きないイベントが、私に贈るお守りで発生してしまったらしい。手紙を読んでいるだけで両親の興奮が伝わってくるくらいだ。

 一体どんな効果があるのかはわからないみたいだけど。


 うーん、女神様ったら、それ私に贈られるって知ってたのかしら。ありそう。愛されすぎじゃないかな、私。

 神殿に行ってお礼しとかないとね。


 それはまた今度にするとして、このお守りを振動ナイフに付けておこうと思って作業をしていたのだ。


 振動ナイフは振動させずともちゃんとしたナイフとして使用できるので、常に身体のどこかに携帯させておこうと思っている。

 せっかくのお守りを魔道袋に入れておくのは勿体ないというか、両親にも女神様にも悪いからね。このナイフにつければお守りも常に身につけていることになる。


「ん〜……できた」


 ガッチリと外れないように頑丈な紐でナイフにお守りを括り付けて完成。

 掲げたナイフとお守りに光が反射してキラリと光る。結構格好いいんじゃないかな。


「ご両親から届いたお守りか。女神の加護が宿っているらしいな」

「うん」


 作業部屋で作業をしていたので、セレニアが話しかけてくる。どうやら振動ナイフにもお守りにも興味津々らしい。


「女神の加護を受けた物なんて初めて見たな。リアは神に愛されているんだな」

「そうかもね。人間種以外の神様も、同じ女神様なんだよね?」

「そうだな。皆同じ女神を崇拝している」


 人間もエルフもドワーフも、みんなあの女神様を崇めている。邪神を除けば、この世界唯一の神だ。

 そんなすごい神様に、前世で一人爆死したってだけでこんなにも優遇されてるんだよね。女神様って変わってるわ。


「どんな効果があるんだろ」


 ちょっと……結構気になる。前向きにとらえれば、お守りなんだから私の身を守ってくれるような加護が宿っているはずだけど。

 なにせあの女神様の加護だからねぇ。


「悪いものじゃないさ。なにせ女神からの加護だしな」

「……そうだね」


 同じような言葉なのに、こうも受け取り方が違うとはセレニアも思ってないだろうなぁ。

 今度神殿に行ったときにでも聞いてみよう。教えてもらえるかはわかんないけど。


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