表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第6章 中央大陸・ものつくり編
194/212

第193話 進捗どうですか?

リア視点に戻ります

 今日は朝のトレーニングを一通り終えた後、シェイに日本刀の出来具合を聞きにきた。

 この前アイアンゴーレムを一体渡したけれど、もしかしたらもっと材料が欲しいとか要望があるかもしれないし。


 お店でシェイの親父さんにシェイを呼んでもらい、客間まで案内してもらう。鍛冶場で話しこんでしまうと邪魔になってしまうからだ。危なそうだし。


 親父さんは何とも言い難い表情をしていたけれど、特に何も言われなかった。半人前の娘に仕事の依頼をした私に色々言いたかっただろうに。ごめんなさい。


「進捗どうですかー?」

「うるせぇ」


 客間に来たシェイに期待せずに聞いてみる。相変わらず口が悪いねぇ。


「一応作ってみたけどよ」


 そういって、一本の刀を見せられた。

 確かに日本刀に似た形をしている。思っていたよりも全然いい感じじゃない?


「見た目はなかなか、良いと思うけど。何かおかしいの?」

「強度が弱いんだよ。たぶん何か硬い物を斬ろうとしたら折れる」

「ダメじゃん」


 斬れないんじゃ刀じゃないよね。ただの細い剣だ。そりゃあ強度もお察しというもの。

 たぶん鍛治の工程で何かが足らないんだろうな。

 それにしても、アイアンゴーレム一体から一本しか作れなかったのかな。


「二、三本作ったけど、どれも途中で折れた」

「やっぱり難しいんだなぁ」


 この反りも色も日本刀っぽいけどなぁ。やっぱり普通の剣ではやらないような工程が日本刀作りには必要なんだろう。


「これの作り方なんか知らねーのか? このままじゃ出来上がるまで何年かかるか、わかんねーぞ」

「うーん……」


 日本刀ね……そういえば前世の学生時代、日本刀が好きな人がいたなぁ。何かのアニメの影響だったっぽいけど、日本刀のいろんな雑学を披露していたから、もっとよく聞いとけばよかった。

 なんだったかな……。


「刀身は重層構造になってる……って聞いた気がする。あとなんか、折り曲げるとか」

「はあ? 剣を折り曲げるってなんだよ? 漠然としてんなぁ」


 そんなこと言われても。それくらいしかわかんないよ。

 シェイにデカめのため息を吐かれたけど、これ以上有益な情報は得られないと理解したらしく、諦めたように手を振った。


「まあいいや。いろいろ試してみるか。つーことで、またアイアンゴーレム持ってきてくれ」

「はいはい」


 人使いが荒い……のはお互い様か。良い刀を手に入れるためだ。アイアンゴーレムくらい用意してこよう。

 でも原価ヤバくない? それはそれでどうなんだろう。私は別にいいんだけどさ。



 家に着いて玄関で「ただいまー」って言ったけど返事がなかった。


「誰もいない……だと?」


 リビングに入っても姿はなかった。どうやら出かけたみたいだ。

 まだ昼間だし、あの三人も買い物なりなんなり出かける用事くらいあるだろう。別にそれはいいんだ。

 しかし、困ったぞ。


「一人で勝手に行くわけにはいかないよねぇ」


 私は学んだ。これ言うの何度目だろう。

 勝手に一人でアイアンゴーレム狩りになんて行ったら怒られると。いや、心配をかけると。


 そして一人で勝手に行くから怒られるのであって、事前に報告をして許可をもらえば行っても構わないということも学んだ。

 なんで許可制なんだろう。私のせいか。


 前回アイアンゴーレムをシェイに渡すために狩りに行こうとして、ちゃんと仲間たちに行ってくると告げたのだ。


 そしたら「一人で行かせるわけがないでしょう」と言われて、結局全員で街から出て、いつも通りにゴーレムを狩り、そのうちの一体を貰うという形になった。


 正直予想はしてた。行かせてもらえない可能性の方が高いと。

 単独行動は慎むと決めたし、それを違える気はない。でも、私はもう一人でアイアンゴーレムを倒せるようになった。

 鉄は相変わらず斬れないけど、魔法でなら倒せるのだ。


 障壁魔法は込めた魔力の量によって強度が変わる。もちろん上限はあるけど、それなりに魔力を込めれば結構な硬さになる。

 障壁の形をドリルのように尖らせる……のは無理だけど、真四角をひし形に変えるくらいなら可能だ。


 尖った部分をアイアンゴーレムの魔石を目掛けて何度も叩きつけることで、なんとか魔石を破壊することができるようになった。魔力消費がとんでもないから何度もできないけど。


 時間もめちゃくちゃかかるし、傷が多いから価値も低くなる。

 でもアイアンゴーレムの動きは遅いから攻撃をくらうようなこともないし、攻撃をされたとしても私なら避けられる。討伐自体は難しいことじゃなくなった。


 だから、一人でも大丈夫かなって思ってたんだけどね。そんなことは許されなかった。

 やっぱりもう少しスムーズに倒せるようにならないと話にもならないのかしら。



 しかし今、家には誰もいない。絶好のチャンス……なんてね。

 大丈夫。ここで黙って行って万が一にでもケガでもして帰ってきたら、今度こそ信用が無くなるのはもう目に見えている。

 私には今日はもう、大人しく家で魔道具作りでもするしかやれることはない。潔く諦めよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ