表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第2章 王都学校編
19/212

第19話 王都へ

 準備は万端、今日はついに王都へ向かう日!

 朝から乗合馬車に乗って王都へ向かう。

 護衛依頼でもあればお金がかからなかったんだけど、さすがにGランクでは護衛依頼は受けられなかった。

 私が依頼主だったらGランクの冒険者に頼むのはちょっとなぁってなるから仕方ないね。


「それじゃあ行ってくるね」


 大きいトランクケースのような鞄を一つ持ち、家の前で両親に別れを告げる。

 おそらく一年間会うことはないだろう。

 父が突撃でもしてこない限り。その辺りは母に阻止するように頼んである。頑張ってねお母さん。


「リア、手紙を書くからね。食事は毎日食べるんだよ。会いたくなったら知らせるんだよ、すぐ会いに行くからね。嫌なことがあったらすぐに帰ってくるんだよ。ああ、やっぱりお父さんも一緒に」

「もう、ジェームズ、いい加減にしなさいな。ここはビシッと送り出すところでしょうに。でもリア、辛くなったらいつでも帰っておいで。無理はしちゃダメだからね」


 オロオロと落ち着かない父と、それを呆れたように見る母の姿をこの数日間何度も見たけど、それも今日で見納めだ。


「うん、ありがとうお母さん。お父さんは私のいない生活に慣れてね」

「そんな……リア……」

「そうだね、いい薬になるよ。それじゃあいってらっしゃい」

「うう……リア、いってらっしゃい」

「行ってきます」


 両親にギュウっと抱きしめられた後、家から離れていく。

 さあ、新たな生活の始まりだ。






 初めて王都へ向かった時は貸し馬車に乗ったけど、今回は乗合馬車に乗っていく。

 父は貸し馬車を借りると言っていたけど、それは断った。さすがにこれ以上世話になるのは嫌だったし、乗合馬車の方が安いもの。

 それに、貸し馬車だと御者と二人になる。私に馬車の操作など無理だし。

 そうなると二人じゃ危険だ、冒険者を雇おうってなる。

 見知らぬ冒険者なんて信用できない、僕が王都まで護衛しよう! ってなって、なし崩しに父が付いてくるのが目に見えてる。

 それは困るので、乗合馬車でいいんだ。


 馬車の乗り場まで行き、御者に挨拶をして乗り込む。この馬車は七人分の人と荷物が乗れるようになっているみたいだ。


 ちなみに、私は今フードの付いた服を着ていて、それで顔を隠している。

 なぜかというと、私の顔を見てよからぬことをたくらむ人が現れるかもしれないからだ。

 そんな感じのことを言いながら父がこの服、フード付きのコートのようなものを渡してきた。

 ええ~? って思ったけど、父がしつこかったので諦めて着ることにした。

 それに、私は今世の自分が美少女であることをすぐに忘れてしまうので、素直に聞き入れる方がいいかとも思ったのだ。

 前世は平々凡々なしょうゆ顔だったから、その時の癖というか、そういったものが抜けきらない。


 そんなわけで、軽く顔を隠してはいるが、それも目元くらいなものだ。

 あんまり深く顔を隠すと、普通に視界が悪くなるので却って危険なのである。当たり前だ。




 客が全員集まったようなので、馬車が出発した。

 私の他には男性五人と、女性が一人。女性は男性の一人とご夫婦らしい。

 男三人は冒険者らしく、この馬車の護衛をしてくれるそうだ。残りの一人は中年の男性だ。


 この馬車、乗り心地はあまり良くない。ケツが痛い。

 さすがにかさばるのでクッションの類は持ってこられなかった。諦めてお尻の無事を祈るしかない。



 行程は順調に進んだ。元々王都までの道のりは比較的安全な道でもあるので、襲われることはめったにない。初めて行ったときは魔物に襲われたけれど。

 特に何事もなく一日目を終え、もそもそと携帯食料を食べ、護衛でもないので見張りは冒険者にお任せして就寝。

 父がくれたコートはどうやら保温効果の魔力回路が刻まれた魔道服だということにこの時気が付いた。

 ものすごく便利でありがたいけど、一体いくらしたんだろうか。私にお金をかけ過ぎじゃないかな。


 二日目、今日の夜には王都に着けるだろうということで出発。やはり貸し馬車に比べたら進みは遅い。学校が始まるまではまだまだ余裕があるので問題はないが。

 昼を過ぎた辺りで危機察知が反応をしたので、どこかに魔物でもいるようだ。でも護衛の冒険者がいるんだから、そっちに任せよう。たぶん大丈夫でしょ。




 なんて思ってたんだけど、さすがにゴブリンの群れは無理なのかなぁ。




 ゴブリンは、木の棒を持っている通常のゴブリンの他に、弓を持っていたり剣や杖を持っている個体も存在する。

 大抵そういった武器は、人間から奪ったものらしい。怖いね。


 そんなわけで、護衛の冒険者三人で十匹ちょいくらいの、人が使いそうな武器を装備したゴブリンの群れを相手にしている。

 でも、弓を持ったゴブリンがいるせいで攻めきれていない。

 さすがに魔法を使うゴブリンはいないみたいだけど、このままじゃ危ないかなぁ。

 それに冒険者全員が槍、盾と片手剣、両手剣という前衛スタイルだ。

 ゴブリンの数が多くて少しずつ囲まれて始めてる。ダメそう。


 あの三人がやられたら、次は私があのゴブリンどもと戦うことになる。一人でも問題ないとは思うけど、面倒であることに変わりはない。それに目の前で人が死ぬのもねぇ。

 仕方ない、後衛として参加するか。鞄から風属性の杖を取り出して、馬車から飛び出す。


「何してるの!? 危ないから戻って!」

「嬢ちゃん戻るんだ!」

「サクッと倒してきますから、おとなしくしててください」


 ご夫婦が驚いて戻るよう叫ぶけど、相手をしてたら彼らが死ぬ。早く終わらせよう。

 ゴブリンの方まで走る。すると私の存在に冒険者が気づき、焦るように叫ぶ。


「なにしてんだ! 馬車に戻れ!」

「支援します。目の前の敵を倒すことに集中してください」


 風の杖に魔力を込めて、彼らから一番遠い場所にいたゴブリン――ゴブリンアーチャーの首を刎ねる。

 弓使いがいなくなれば戦いやすくなるだろう。


「……! お前ら! 一気に畳み掛けるぞ!」


 リーダーらしき人が他二人に発破をかける。言葉通り、弓矢による妨害が無くなったおかげか全員の動きが良くなった。

 私も風魔法で数匹ゴブリンを屠ったので、そう時間もかからないうちに討伐は完了した。




「嬢ちゃん、助かったよ。ありがとう」


 リーダーらしき男性が話しかけてくる。そんなに大きなケガはなさそうだ。


「いえ、全員無事で良かったです」

「ああ、嬢ちゃんのおかげだ。そうだ、魔法が使えるんだな。火か土の魔法は使えるか? 良ければゴブリンの処理も手伝ってほしいんだが……」


 この数のゴブリンだ。手作業で処理をしていたら時間がかかり過ぎるのは明らかだ。


「解体はそちらでお願いします。ゴブリンの魔石をいくつか譲っていただけるなら、残り物の処理はしましょう」

「わかった。頼む」


 魔石を取り出す作業をしてもらっている間に、馬車に置いてきた鞄から火属性の杖を取り出す。

 そんなに火力が強いわけではないが、魔法を打ち込み続ければ燃え尽きるだろう。

 ついでに水属性の杖も用意しておこう。血だらけの魔石を渡されるのは困る。


「お嬢さんは魔法使いだったのね」

「ええ、これでも冒険者なんですよ」

「それはすごいな。君のおかげで助かったよ。ありがとう」

「あの冒険者さんたちのおかげですよ。お礼は彼らに言ってください」

「これから魔物の処理をするのかい? 何か手伝えることがあれば言ってくれ」

「ありがとうございます。大丈夫だとは思うので、もう少し待っていてください」


 馬車の中にいたご夫婦と中年男性に話しかけられたので、適当に返す。荷物番でもしていてくれるのが一番助かるよ。

 御者の人は馬の面倒を見ている。ゴブリンの群れが現れても暴れない良い馬だね。


 解体の終わったゴブリンを一か所に集めてもらい、火魔法で燃やす。

 燃やしている間、水魔法を使い血まみれの冒険者たちと魔石を洗い流す。大層感謝された。


「これが嬢ちゃんの取り分だ」

「こんなにいいんですか?」


 ゴブリンの魔石を五個渡された。三匹ほどしか倒していないけど、いいのかな?


「命を救ってもらったんだ。これくらい安い。むしろこの程度で悪いな」

「いえ、ありがとうございます」


 臨時収入ゲットだぜ。




 私は冒険者だ。

 でも護衛依頼を受けたわけじゃない。今回は緊急事態だったから手助けをしただけ。

 でも命の恩人に対して何もお礼をしないというのも依頼主としてはどうなの? ってことで御者の方からお礼として金銭を渡された。

 ギルドへの評価も欲しかったけど、そうなると冒険者の人たちや御者と一緒にギルドに出向いて説明して~っていう面倒なことをしなければいけないので、やめた。

 それに結局は上のランクの人と一緒に活動したことになるから、大した評価はもらえないだろう。


 そしてようやく再出発をした馬車の中で、先ほどの魔物討伐のおかげでみんな興奮しているのか、会話が弾んだ。


「嬢ちゃん俺たちのパーティに入らないか? 嬢ちゃんほどの魔法使いなら大歓迎だ」

「王都には学校に通いに行くので、冒険者として活動する時間は無いですね。ごめんなさい」


 活動はする予定だけど、それも一カ月に何度できることか。

 生計を立てられるほど活動をする時間はさすがにない。

 それにむさくるしい男たちとパーティ組むのもキツイ。


「そうかー、残念だな。でもやっぱ魔法使いが一人でもいると戦闘が楽になるな」

「魔法使い探すかー」

「お嬢ちゃんは三属性の魔法が使えるんだって? すごいんだねえ」

「ええまあ」


 そういえば四属性使えるのは珍しいんだった。

 迂闊だったなぁ。何も考えずに三つ使っちゃった。燃えるようなものはなかったんだし、風じゃなくて火を使えば良かった。

 これからは気をつけた方がいいかな。

 でも森じゃ火は使えないし、そうなると風だし、でも解体で水は使うし処理に土か火は使うだろう。

 うーん、悩むね。この便利さを手放したくない。




 会話をしていればあっという間に時間は過ぎ、辺りは暗くなってきた。

 魔物のせいで進行が遅れたため、今日中に王都にたどり着けなかった。

 王都までもうすぐだけど、ここで一晩休んで到着は明日に持ち越しだ。


 魔法が使えるとわかったためか、野営時に薪に火をつけたり、魔法で水を出したりと色々頼まれた。

 特に断る理由もないので快く承諾した。今の私は臨時収入で気分がいい。

 そうしたらお礼にと温かいスープを作ってくれたので、ありがたくいただいた。

 野営で温かい食事がとれるというのは嬉しい。


 三日目、特に何事も起こることなく、お昼前にようやく王都へとたどり着いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ