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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第6章 中央大陸・ものつくり編
189/212

第188話 不思議な身体の正体は?

 日常生活に支障はないレベルだけど、なんとなく身体が重くて眠い。そんな感覚を味わうだけでキチンと魔力が無くなったのかもわからないままという、何とも中途半端な検証を終えた。

 その日は宿へ帰り、その後ゆっくりと休息をとらしてもらった。

 そして次の日。


「昨日のことだが」

「うん」


 作業部屋でセレニアと二人。

 セレニアは昨日の魔力枯渇の実験についていろいろ考えていてくれたらしい。

 今はもう身体に異変は無く、目の充血も治った。一体何が起きたのか、お互いの考えをすり合わせていこう。


「正直なところ、よくわからん」

「ですよねー」


 うん、知ってた。何が起きたのか全くわからんのだよ。


「『損壊』の前現象かと思ったんだがな」


 よく、木などの脆い素材を使用した杖などの媒体に高度な術式を刻むと壊れるとか、杖に魔力を流しすぎると壊れるとか、そういったことが起きる。

 私もサイラス先生に借りた初級杖を思いっ切り壊した覚えがある。あれだ。

 あれのことを『損壊』と呼んでいる。


 そして腕の爆弾と身体強化を同時使用すると、腕がビキッと痛む。あれが損壊の前現象。

 身体強化でしか味わえない痛みだ。味わいたいなんて思わないけど。


「でも損壊って魔力の流しすぎが主な原因でしょ?」

「そうだな。むしろ魔力が流れなかったから痛みが発生した……のか? そもそも魔力が残っていたのだから関係ないのかもしれん。わからん」

「うーん……」


 魔力は残っている。これは絶対。だから魔力と頭部の痛みとの関係性自体に疑問があるんだよね。どうして魔力を大量に使うと頭痛がおきるんだろう。

 やっぱり危機察知が刻まれているからなのかな。


「頭部の魔法は止められないと言ったな?」

「うん」

「つまり常に魔力を消費していると考えていいわけだ。その魔法は特殊だが、基本的にリアの魔力で稼働しているのだから、リアの魔力が無くなれば稼働をやめるはず」

「そうね」


 頭痛中は危機察知がほとんど使えなかった。つまりあの瞬間は魔力がなくなっていた? いやでも障壁は作れたから違うか。


「うーん、さっぱり。魔力がものすごく多いということは確かかな」

「そうだな。私よりも多い」


 エルフよりも多い。まあ、それはいい。魔力量なんてどうとでも誤魔化せる。

 このままだとよくわかんないまま話が終わってしまうなぁ。

 ……はあ、仕方ない、聞いてくるか。


「ちょっと出かけてくる」

「ん? そうか。このまま考えていても仕方ないしな」


 セレニアに見送られながら部屋を出る。向かう先はもちろん、神殿だ。




「(なんで魔力をたくさん使うと頭痛が起きるんですか?)」


 わからないことはわかる人に聞きましょう。

 ドワーフの国ニカールカ、ここにももちろん神殿がある。我らが愛しき悪魔な女神様のね。


 いつものように女神様を象った像の前に跪いて、女神様に祈るように話しかける。

 久々に話しかけたけど、返事は来るだろうか。


『ああ、あれですね。実はですね、頭部の危機察知は常に魔力を使用しているので、専用に魔力袋があるんですよ』

「(初耳~)」


 無事に返事は来たけれど、話される内容は知らないことばかり。


『魔力袋自体は一つなんですが、その中で専用に魔力を保管しているとでも言いましょうか。通常の魔法に使う魔力とは区別してあります』


 なるほど? うん……それだけだと頭痛の理由はわかんないな。

 その専用魔力が無くなっちゃったから頭痛が起きるってこと?


『そして通常の魔力が無くなった場合、危機察知専用魔力の方から緊急で魔力を譲渡していく流れを組み込んであります。その際一時的に頭部へ流れる魔力が減ってしまい、それを痛みとして感じてしまうんですね』


 ああ~。そういうことね。

 つまり私が杖、身体強化、爆弾などの魔法を使うときに使用している魔力……本魔力とでも言おうか、それは頭痛が起きた瞬間には空っぽになっているわけか。


 そしてそれとは別に危機察知用の魔力が別保管されていて、本魔力が無くなった瞬間から危機察知以外にも使用が可能になると。


 頭痛はその切り替えスイッチがオンになった時に起きる一時的なもので、別に最低限魔力は流れているので使えなくなるわけではない。通常魔法も危機察知も、頭痛中でも使用自体は可能だ。


 ただ、魔力を移し替えている最中なので魔法を使うと「魔力が足りない!」って頭が叫ぶ感じね。

 それで痛みが発生するし、危機察知に使える魔力も少なくなっているから反応が微弱になっちゃってる。


 そう考えると、最初に感じる頭痛は魔力枯渇と言っても正しいね。

 時間が経つと頭痛が治まるのは、危機察知と本魔力にバランスよく魔力が流れるようになるからか。

 面倒くさい身体だなぁ。


「(危機察知の魔力で魔法を使い続けるとどうなりますか? 目の充血とか身体に力が入らないとかあったんですが)」


 あれも魔力枯渇なのかな。もう一つ魔力が入っているタンクがあるって言ってもね、本魔力よりも多いってこともないでしょうし。


『危機察知は使えなくなると困ると思ったので』

「(? はい)」

『危機察知用の魔力は回復速度が速いです』

「(はあ。ありがとうございます)」

『なので危機察知用の魔力が少なくなってくると眠くなります』


 確かに眠かったな。目の充血とかもそれと一緒かな?

 睡眠をとって魔力を回復しろっていう身体からのサインってことだろう。

 戦闘後に度々睡魔が襲ってくるのってこれのせいかも。


『目の充血などの体調不良も魔力を使いすぎているという一種の警報ですね』

「(じゃあもう、魔力枯渇みたいなもんですね)」


 これ以上魔力使うなっていう警報なら魔力枯渇の症状と言ってもいいだろう。

 問題はその症状に自分で気が付くことができていなかったことかな。戦闘中だと尚更気が付かないかも。大丈夫かな。


「(魔力を全部使い切ることってあります?)」

『余程のことがない限り大丈夫だと思いますが、使い切るのはお勧めしませんよ。気絶しますからね』


 さすがに無尽蔵ってわけではないのか。気絶は困るね。戦闘中に気絶なんてしたら死んでしまう。

 一人で戦闘でもしない限り魔力が無くなるなんてことはないと思うけど、魔法を使う時は気を付けておこう。


「(わかりました。お忙しい中答えてくださり、ありがとうございました)」

『ええ、またお会いしましょう』


 女神様に別れの挨拶をして神殿を出る。女神様って話しかけると毎回答えてくれるけど、意外と暇なのかね?


 ずっと女神像の前で祈っていた私は、傍から見たら敬虔な信者に見えるんだろうなぁ。別に間違ってはいないけど。


 女神様のおかげでいろいろわかったけど、これセレニアに話せるかなぁ。

 全部じゃなくて一部分のみ話してみるか。戦闘に関係するものを秘密にするのは仲間に迷惑をかけるかもしれないし。どこを話すか……。


 考えながら家路を辿る最中、なんだか面倒くさくなってきたので、ふと思い出したアレを商業ギルドで受け取ることにした。そろそろ出来上がっているはずだからね。

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