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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第6章 中央大陸・ものつくり編
179/212

第178話 実力不足

 ガキィン!


 ガキィン!


 ガキィン!


「むぅぅぅううう!!」

「リア、一旦下がれ」


 斬れない! 腹いせに身体強化を使った足で相手を蹴り飛ばす。


 今私たちは街から出てゴーレム狩りに出ている。

 街から少し離れた場所でゴーレムを二体見つけ、討伐にかかったのだけれど……両方アイアンゴーレムだったのだ。

 セレニアが足止めするために魔法を放ち、私とエルシーナで接近。そしてエルシーナが一体を真っ二つにする横で、私が鉄に金属をぶつける音を響かせている。なんかものすごく惨めなんだけど。

 何度も何度も斬ろうと頑張ってはみたが、一向に斬れる気配がない。悲しい。ムカつく!


 見かねたセレニアに一度下がるように言われたので、渋々後方に下がる。


「少し落ち着きましょう」

「いきなりエルシーナのようには無理だろう。落ち着け」


 クラリッサとセレニアに慰められるけど、結構ショック。

 確かに私の剣術の腕は未熟だけれど、いつまでも鉄の一つも斬れないようじゃCランクとして実力不足だと言わざるを得ない。


「リアもそのうち斬れるようになるよ」


 戻ってきたエルシーナに励まされる。でもこの人、私が倒せなかったアイアンゴーレムを真っ二つにしてから戻って来たからね。

 倒さないといけなかったんだから、わかるよ? わかるけどね?

 実力不足だと打ちのめされた気分だ。言わないけど。


「はぁ……やっぱりCランクは早かったのかな……」

「そんなことないって」

「剣術を評価されたわけではないでしょう。これからですよ」

「障壁魔法の使い手として専念する道もあるぞ」


 好き勝手言いおる。

 障壁魔法を使って盾役として専念するのも悪くないだろうけど、やっぱり剣が使えるようになりたい。エルシーナみたいな凄腕の剣士になりたい。

 何年も先に、この時諦めずに剣術を鍛え続けて良かったって思う日が来ることを期待して、これからも剣士として頑張ってみよう。


「あれ、一つ持って帰って庭に置いといちゃダメ?」


 エルシーナが真っ二つにしたアイアンゴーレム。

 斬れていてもバラバラになっていても、鉄であることに変わりはない。あれを、鉄を斬るための練習台として持って帰りたい。

 でも四人で得た収入源でもある。勝手な行動もできない。

 ……ほとんどエルシーナが一人で倒した気もするけど。


「練習用にですか? いいんじゃないですか」

「うん。一人でアイアンゴーレム狩りに出かけられるより全然良いよ」

「好きにするといい」

「ありがとう!」


 優しい三人から承諾を得て、あのアイアンゴーレムを一つ持ち帰ることになった。

 絶対斬れるようになろう。毎朝のトレーニングに組み込んでおかねば。



 一つ持ち帰ることになったので、引き続きゴーレム狩りを続ける。

 金属ゴーレムは鉄以外にも色々いるらしいけど、数は少ないらしい。


「ミスリルゴーレム、シルバーゴーレム、ゴールドゴーレム……他にも宝石でできたゴーレムもいるらしい。もちろん滅多に見かけないがな」

「すごいね」


 全体が宝石などの鉱物でできたゴーレムは発見されているが、ほとんどは一部分だけが鉱物になっていることが多いそうだ。

 アイアンゴーレムだと思っていたら、魔石の周りだけミスリルだったりすることもあるんだって。斬れないよね。


 ここは大金が徘徊しているのと同義。『魔物の沼』はお金が湧いているのと同じだね。

 でもそんな『沼』があるなんて……。


「欲しがる人多いでしょ。よくこの国は無事だね」


 ここの『沼』さえあれば結構何でも思うが儘なんじゃないかな。よくドワーフの国は無事だね。


「昔は戦争が絶えなかったが、今ではどこも平和さ」


 ドワーフの国が資源を独占することはなかった。それを世界中が理解してくれるまで戦争が続いてしまったが、今では関所を素通りできるほど平和になったそうだ。

 もう何百年も前のことらしい。


 このエルフ三人は、その時代を生きていたのだろうか。

 聞きたいけど聞きたくないな。もしも戦争経験者なんて聞かされたら……あまりの人生経験の豊富さに、恐れをなしてしまいそうだ。



「国はともかく、冒険者とかが多く狩りに来ているものだと思ってたけど、そんなに見かけないね」

「硬いゴーレムは高ランク冒険者でも倒すのが難しい。この国が資源の独占をしなかったのはそういうのも含まれている」


 ああ、うん。さっき私狩れなかったもんね。そういう人たぶん多いよね。多いと信じたい。

 アイアンで苦労するのにもっと硬いゴーレムとか無理でしょ。

 夢はあるけど希望はないね、ここ。


 話をしながら歩いていると、またもゴーレムを複数体発見する。

 今度は木でできたゴーレムらしいので、私でもあっさり斬ることができた。セレニアが魔法を使っているのを見て話を続ける。


「ゴーレムって魔法効くの?」

「難しいな。さっきのような木のゴーレムであれば問題はないが、金属となると効きにくい」


 土の槍をドリルのように回転させていくと、鉄でもなんとかなるそうだ。杖にもよるけど、金属並みに硬い土の槍も作れなくないそうなので。たぶん上級の杖じゃないと無理だろうなぁ。

 あとは純粋に打撃で滅多打ちにするとか。時間かかりそう。


「障壁魔法で叩いてみようかな……」


 意外と効果があるかもしれない。

 悲しいことに、障壁魔法の使い手として専念する方が役に立てそうな気がしてきた。


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― 新着の感想 ―
[一言] やはり主人公が鍛錬や工夫を重ねて少しずつ強くなっていく過程を見るのは楽しいですね。飽きることなくずっと楽しめます。
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