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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第5章 中央大陸・自己分析編
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第167話 どんな人なの? <エルシーナ視点>

エルシーナ視点です

 あの子は、リアは、わたしとの約束をあまり守ってくれない。


「ちゃんと待っててね」

「大人しくしてて」

「一人では行かないで」


 わたしが過保護過ぎるのかな。それに、約束というには一方的過ぎるのかも。

 あの子だって冒険者、それもCランクなんだから、一人で出かけるくらいで口うるさくする必要はないのかもしれない。


 でもあの子は初めて会った時からずっと、無茶ばかりしていた。自分のことなんて蔑ろにして、渦中に飛びこんでばかり。

 大切だから、大好きだから、心配でしょうがない。そんな危ないことなんてして欲しくない。


 わたしの見ていない場所で、わたしの手の届かない場所で、リアが死んでしまったらどうしよう。それが一番怖い。


 昇格試験から帰って来た時だって、酷く疲れた表情をしていて、その上何だか辛そうにしているのがわかった。

 ああ、この子はまた何かしたんだと思った。わたしの言葉なんて忘れて、どこか危ない場所に行ったんだって。


 大きな怪我をしていないのは本当に安心した。数日ぶりに会えて嬉しい、リアもわたしがいなかったことが寂しいって言ってくれた。それは本当に嬉しい。

 でもそう思うなら、わたしの言った言葉ももっと真剣に考えて欲しいな。


 その日の夜、泣いている彼女を見て心には大きな傷を負ったんだと知った。

 リアが元々何か大きなことを隠しているのはわかってる。それはきっと人には話せないことで、それがリアの自尊心を大きく壊していることも。


 あの時かけた言葉が、どれだけリアに届いたかはわからない。でも嘘なんて一つもついてない。全部本気で、わたしの心からの想いだから。それが少しでも伝わってくれればいいと思う。


 朝起きればリアの表情は明るくなっていて、わたしの言葉が少しは響いたのかなって思えて嬉しくなる。少しずつでもいいから何か変わってくれるかな。


 でもわたしたちがいない間に何があったのかを聞いた時に思った。

 この子はたぶん、リアが死んでしまった後にわたしがどれほどの悲しみに襲われるかをわかってくれていない。

 リアという存在が消えた後に、周りにいる人たちがどれほど辛い思いをするかを理解できてない。

 このことに関しては、どれだけ言葉にしても伝わらないのかもしれない。だって、前にも言ったんだもの。


 リア自身がもっと自分を愛してあげなければ、きっとこの先も真の意味で変わらないと思う。でも、リアの自尊心が回復することってあるのかな。



「惨めに独り死ぬのは嫌だから」


 小さくそう呟いたのが聞こえて、この子の考えが少し変わったのがわかった。それと同時に、変えたのはリアに嫉妬してリアに殺された例の男性であることにも気が付いた。


 やっぱりわたしの言葉には大した重みがないのかな。


 ああでも、死にゆく人から学んだことに比べたら当たり前か。独りでは死にたくないから一緒にいる。目の前でそうやって死んでいった人のようにはなりたくなくて、そうする。

 ……うん、わたしの言葉なんかよりもずっと……。



 モヤモヤした思いが心の中で燻ったまま、冒険者ギルドでBランクへと昇格したことを聞いた。

 別に念願とも何とも思ったことはないから、特に何も感じなかった。


 それよりもリアのところへと戻った時に、リアと会話している三人の方が気になってしまった。

 何だか不安になってすぐにそこへ向かって、牽制、したのかな、わたしは。いや、八つ当たりの方が近いかもしれない。

 普通に会話をしているだけだって、見ていたらわかること。その人たちが例の冒険者たちだってわかっても、リアと一緒にいるだけで嫌な気分になってしまう。


 この人達がマンイーターと戦っていなければ、リアがそれに気がつかなければ。心に傷を負うことはなかったかもしれない。


 夜に泣いていたリアを見て、朝起きて話を聞いて、他の冒険者たちが悪いんだって思った。

 でも考えが少し変わったらしいリアを見れば、リアにとって必要な出会いだったのかもしれない、とほんの少しだけ思わなくもなかった。


 リアにとって良かったことが何なのか、悪かったことが何なのか、その場におらず、またリアの心の内を知らないわたしには察することができない。

 それがもどかしくて、やるせなくて、辛いなって思っちゃう。

 わたしって、リアにとってどんな人なんだろう。


 考えがどんどん後ろ向きになっていっちゃうな。これ以上この人達の前にいたら何か失言でもしてしまいそう。早く帰った方がいい。

 リアの手を取って、宿へと向かう。リアが困惑しているのがわかったけど、何も言えなかった。


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